「なぜ立ってる」

 気がつくと暗い目をした灰色の子ネコが前に立っていました。子ネコ

なのにずいぶん体つきの大きな子です。

 シニファンは答えられず、ただじっと見つめかえしていました。

「なんとかいえ」

 灰色の子ネコはずいっと近づいてきて、肩をどんっとつこうとしまし

た。

 シニファンはつっとうしろにさがって、灰色ネコの腕をよけます。

 工場で遊んでいたころはずいぶんやんちゃだったので、それくらいは

なんでもないことでした。

 腕をよけられて、灰色ネコはきゅっと顔をくもらせました。

「おい、こいつなまいき」

 灰色ネコがうしろをふりかえると、ミケやトラやぶちもようの子ネコ

たちが六匹ばかりかけよってきてシニファンをとりかこみます。

 シニファンは何がおこったのかよくわからないままに、灰色ネコをみ

つめかえしています。子ネコたちはじりじりと近より輪をちぢめ

てぴったりと体をあわせ、シニファンをまわりから見えなくしました。

「やっちゃえ」

 灰色ネコが小声でいうと子ネコたちはいっせいに、シニファンをけっ

たりたたいたりしはじめました。