気がついたときシニファンは、ひものを広げて売っている屋台のかど

に、したたか体をぶつけていました。

「いったぁ」

 起き上がると頭がクラクラします。

「いたいよぉ、おかあさん」

 でもふりかえると、そこにおかあさんの姿はありませんでした。

 かわりに広場のわきの教会にぶつかり、板切れの山になった馬車と、

それをびっしりととりかこむ見知らぬネコたちがいるばかりです。

 ふらふらする足をふみしめながら、シニファンはこわれた馬車へと向

かっていきました。

「とうとうおきちまったな。このへんは坂道が長すぎて、よく馬車が止

まらなくなるから」

「馬車に当たってから壁にぶつかったんだろ。それじゃあなあ」

 シニファンはおそろしさに、背中の骨がつららのように冷たくなりな

りました。

 それでもゆうきをだして、集まったネコたちの足の間をすりぬけてい

きました。すると小さな四角い石をびっしりと敷き詰めた道の上に、大

きな栗毛の馬とぼうしをかぶった見知らぬ茶色のネコ、それにおかあさ

んが倒れているのが見えました。