ミルドラ校長先生は御者をふたり乗せた馬車で夜中かけてかけて、子
ネコたちが朝ごはんを終えるころ、やっと孤児院につきました。
院の庭に子ネコたちが元気よくとびだしてくる中を、校長先生はつと
めてゆっくりと歩いていきます。そうでないとわくわくする心をおさえ
きれず、子ネコたちのように走っていきそうだったからです。
孤児院の玄関では、孤児院の先生とボストンバッグを持ったシニファ
ンが待っていました。
「はじめまして。音楽学校の校長をしております、ミルドラともうしま
す」
孤児院の先生とシニファンが、それにこたえてぺこりとおじぎをしま
した。
顔を上げたシニファンにミルドラ校長先生ははっとします。思ってい
たよりずっと小さな子ネコだったからです。
「あなたがシニファンね。どう、わたしといっしょに音楽学校へ来てく
れるかしら?」
シニファンはこくりとうなずきました。
「いっしょにがんばりましょうね」
校長先生はふかふかの毛なみの両手で、シニファンの顔をやさしくつ
つみました。