シニファンは窓わくにひじをつくとカーテンを開けて、くっきりとの

ぼっている三日月をながめました。

 なぜでしょう。今ごろになって涙がはらはらと流れ落ちます。

 悲しいわけではないのです。それどころかうれしいような胸のときめ

くような、とても楽しい気持ちなのです。

 シニファンの涙はぽたぽたとしずくして、窓わくの上に小さな水たま

りをつくりました。その涙のたまりには、しずかな光をはなつ三日月が

くっきりとうつっています。

(もしかしたら、ぼくのヒゲも鳴ったりして)

 シニファンはほかの子ネコたちのするように、ヒゲをつまみあげて

人差し指のつめでそおっとこすってみました。

 

 るーるるるるるるるるっ

 

 何匹かの子ネコたちが「うーん」と声をあげて寝返りをうちました。

 シニファンは驚いて窓わくからはなれます。

 そのとき。

 

 からんからんからん、るぁんるぁんるぁんぁん……

 

 窓わくから銀色の月の形をしたものが、すずしい音をたてて寝室の床

に転がり落ちました。