バイオリンの演奏会があった夜は、どの子ネコも胸がどきどきしてお

そくまで眠ることができませんでした。

 先生方がかわるがわる見回って「しずかにしなさい」と注意しにきま

す。子ネコたちはそのときだけはおとなしくなるのですが、ドアが閉ま

って足音が遠ざかれば、すぐに二段ベッドの上から下から身を乗り出し

て、またぺちゃくちゃとおしゃべりをはじめます。

 どの子ネコもがバイオリン弾きをまねて、ひげをつめでひっかきまし

た。もちろん音はでませんが、そうせずにはいられないのです

 そんななかシニファンはひとり、ベッドの中で目を閉じていました。

やはり他の子ネコと同じように眠ることはできなかったのですが、お

しゃべりもできないのでおとなしくしていました。

 ベッドの中で目を閉じていると、バイオリン弾きの奏でていたあの曲

がくっきりとよみがえります。

 奏でられる曲の一音一音がまぶたのうらの、うす青の空をほつれなが

ら進む雲の一すじ一すじと結びついて、思い出すたびにたしかなものに

なっていきます。

 やがて夜もふけるころ、まわりの子ネコたちのおしゃべりは、洗濯お

けの中のシャボンのあわがひとつひとつ消えていくように、ほつほつと

しずかになっていきました。

 それにかわってかすかな寝息が、あちこちで夢をふくらませます。

 シニファンはベッドからそおっとおりると、暗い寝室をてさぐりで窓

のそばへよっていきました。