シニファンはかんけりをしているのもわすれて、池にうつる太陽をじ

っと見ていました。そしてふいに何も聞こえなくなりました。

(ぼくは、あれをつかまえなくっちゃ)

 かくれていた木からふらふらとはなれると、シニファンはざぶざぶと

池の中へ入っていきました。水にうつるきらめきを目指してすすむうち

胸までも池につかります。

「おいっ、おまえなにやってる!」

 院庭から灰色ネコが走ってきました。

 灰色ネコは池の中へかけこんで、シニファンの体をぎゅうっとつかま

えると、胴のあたりをかかえて引きずるように池からあがりました。

「どうして、こんなことするんだ」

 池からあがった灰色ネコは、はあはあと大きく息をしながら、地面の

上にすわりこんでいいました。

(ほんとうだ。ぼくはいったいどうするつもりだったんだろう)

 シニファンはすわりこんだ灰色ネコの頭を、そっとなでました。

 とたんに灰色ネコは火のついたように泣きだしました。シニファンは

どうしていいかわからず、灰色ネコの顔をただのぞきこんでいるばかり

です。

 そうしているうちに大あわての先生がふたり、バスタオルを広げてか

けよってきました。

 ふたりはびしょぬれの毛なみを、よくかわいたひなたのにおいのする

タオルで、すっぽりと包んでもらったのです。