[血]




血を見ると落ち着く、最大の理由。
2001.05.01.tue

あたしは血を見ると落ち着く。
だからリスカをする。
何度も、血に悩まされた、あたしの過去。
その中に、あたしの犯した、最大のタブーがある。

あたしは、ヒトを殺した。
正確に言うと、まだ、それは、ヒトの形をしていなかったかもしれない。
あたしは、その姿を、一度も見たコトはない。
コレから、ヒトになるはずだったモノ。
あたしのお腹で育ち、生まれてくるはずだったモノ。
それを、殺した。

理由は、よくありがちなモノ。
若かった故に、育てられないとか
お互いに生活能力がないとか
あたしが学生だったとか
親に、そんなコトが言えるはずもなかったとか
たくさんの未熟な理由で
コレから生まれるだろう、ソレには、ホントにクダラナイ理由で
無責任にも作り、殺した。

決めたのはあたし。
ヤツは[産んで欲しい]と言った。
あたしはそれに応えるコトができなかった。
あたしの小さなわがままで、ソレは育つコトが許されなかった。
あたしが、あたしの意志で、殺した。
あたしの醜い未熟なココロで、殺した。

わかった時は、呆気無いモノだった。
まずは市販の妊娠判定薬を使った。
この時は、もう既に、あたしの中に、小さな確信があった。
結果は[陽性]。
無惨にも、ブルーのラインが浮かび上がる。
泣きはしなかった。
泣くコトができなかった。
ただ、その時は、呆然とし、[あいつに話さなきゃ]とそればかり考えていた。

翌々日、意を決して、口を開いた。
ヤツは、泣かなかったあたしの目の前で、泣きやがった。
うらやましかった。
あたしも、こういう風に泣ければいいのにと。
悔しくて、やっと、少し泣けた。
泣き方は間違ってるけど。
そして、あたしの意志を伝える。
[どうしても、産めない]と。
あたしのコトバに、ヤツは、それ以上、何も言わなかった。

それから病院での正確な診察を受けた。
[正常な妊娠デス。4週間目に入ってますね。]
ショックとか、アタマが真っ白になるとか、そういうコトはなかった。
こんな時にまで冷静な自分を、嫌悪する程だった。
[どうしますか?]という、医師の問いに
[堕ろそうと、思ってます]と応えた。
こんなあたしでも、さすがに、声は震えていた。

現実的な話をした。
お金。
中絶手術にはお金がかかる。
約85000円。
あたしもヤツも、そんな経済力も貯えも、ない。
あたしは、あたしの親にはどうしても言えなかった。
事情により、そういうコトには理解があるらしい、ヤツの親に、相談するコトになった。
ヤツの母親が、あたしのカラダを、気づかってくれて、急いでお金を用意してくれた。
本当に申し訳ないコトをした。
あたしは、何も返せないのに・・・。

数日後、手術の日が来た。
まずは、手術前の診察を受け、手術が受けれるかどうかを調べる。
そして、手術服に着替え、手術室に入り、手術台に座り、股を広げ、左右の台に足をかける。
それぞれのベルトが閉められ、全身麻酔の注射を打たれた。
眠りにつくまでに数えられた数は3秒。
それからは、もう、夢の中だった。

夢の中。
カラダはちぎれそうな程ねじれ、脳は破裂しそうになり、両手両足を何モノかに引っ張られ
この世のモノとは思えない苦痛と吐き気。
やめて。痛い。引っ張らないで。死にたくない。お願い助けて。
絶叫しながらも、無情にも、引っ張られるカラダ。
死を垣間見た気がした。

落ちるような感覚と共に、目が覚め
あたしは、畳の上に敷いてある布団の上で、うなされていたらしい。
隣で横になっているお姉さんが
吐くために置かれていたらしい洗面器を、あたしの顔の横に起き、カラダをさすってくれていた。
麻酔の切れかけていないあたしは、お礼を言うコトすらできなかった。
ただ、胃液を、ひっきりなしに吐き続けた。

その後、一度だけ、後診を受けなければいけなかった。
ヒトリで行くのは不安だと言ったあたしに
ヤツは[オトコが産婦人科に行くのは恥ずかしい]と言ってのけた。
それから、その後の最初のセックスをする時に
ヤツは[コンドームをするくらいならセックスなんかしない]と言ってのけた。
それが、どういう意図なのかなのかは、わからない。
ただ、あたしは、ヤツに対する信頼心を失った。

術後は順調に回復し、40日後、予定取りに生理は来た。
この間、思い出したくもない様々なコトがあり
ヤツに対する信頼心なんてモノは、どんどん薄れていった。
自殺も考えた。ヒトを殺してまで生きていたくなかった。
自分の、コドモを、殺してまで。

血だけが、あたしの頼りだった。
血だけが、あたしを生かした。
血だけが、あたしを、安心させた。
いまでも。

こんなになってまでも、なくならない性欲が憎い。
できるなら、こんな血を、こんなカラダを、こんなあたしを、入れ替えたいよ、全部。



なぜ、こんな文章を書いたのかは、文章にするのが一番、ちゃんと自分のキモチを表すコトができるから。
昨日、杉ママと話をしていて、誰かに聞いて欲しい自分に気がついた。
でも話すのが怖い。
だけど、きっと、自分を許したいんだと思う。
誰かに許してもらいたいんだと思う。
自分は弱い。
だから、誰かに聞いて欲しい。
ヒトリで抱え込むのは、ツラいデス。