colony

「制作について」(1994/8) テクスト/作間敏宏


 このところの僕が自分の家系図を調べ、家族や親戚の写真を集めているのは、作り手としてできるだけ日常生活から遠い場所で仕事をしようとしていた僕にとっての、障害であり不純物であったはずのそれらのものを、一度ていねいに見なおしたいと思うようになったからだ。まったく個人的なことがらでありながら同時にまぎれもなく普遍的であるもの、僕個人の物語でありながらあらゆる個人の感情の源泉でもあるものとして、それらは解釈しうると思えるし、遠くにいかずに仕事をする契機を僕にもたらしうるのだと思える。
 生活という、凡庸で退屈なくりかえしと変化の回路、しかし同時にまたよろこびや失意や痛みがわきあがり続いて恢復し癒えてゆくしくみの回路、そこを流れる電流の磁力が、僕の内側のあらゆるリズムをフォーマッティングしているのなら、その回路から発せられる静かな信号をすくいとるようなものとして、僕の仕事は結ばれてゆくはずだ。この回路にとどまってしばらく仕事をしたいと僕が考えてはじめているのは、そういうやり方が、作り手としての僕の独自性であるのかもしれないと思えるからだ。