colony

「作品について」(1990/5) テクスト/作間敏宏


 混沌としたカオスの状態のなかから初めての生命が発生したドラマ、その生命から僕らまで脈々と受け継がれている生命の記憶といったものを、僕自身の夢や無意識や狂気の海から引き上げてみたいというのが、僕が作品を生む作業の中核になっている。特に、最初の生命が初めて動いた、ほんのわずかな動きとその瞬間に、不思議なほど強い感情移入を覚える。それらの動きを伴ったイメージが、僕に動く作品を作らせているようだ。僕の作品の動きは、その初めての生命活動を記念するモニュメントだと言ってもいい。
 ますますミクロなイメージが拡がるなかで、僕が作る暗い閉じられた空間は、しだいにひとつの原細胞としての意味合いを強めている。僕がどこに回帰しようとしているのかはわからない。ただ、細胞という小さな(だけど大きな)海には、僕らの理性的な判断がとどかない、ものごとのありのままのカオスがあると思えるのだ。