ハーシェル関連史料
W. ハーシェルの7フィート望遠鏡リスト


 スイスのアマチュア天文研究家A. モーラ氏がハーシェル望遠鏡の総合的なカタログを完成しました。古望遠鏡協会のジャーナル14号に発表した概要によると、49台の望遠鏡は次の3つに分類してあります。

  1. W. ハーシェルが自らまたはカロラインが観測するために製作した望遠鏡(8台)
  2. ハーシェルが製作し、関心のある人に売却した望遠鏡(33台)
  3. 始めにハーシェルが光学部分など重要部分のみ提供、またはハーシェルの指導で別に製作された望遠鏡(8台)

 以下、天王星を発見したのと同じ7フィート鏡だけを抜き出し、簡単に紹介します(下記の表を参照)。全部で26台あり、上記のAに属すのは2台 (A5-A6)、Bが21台 (B7-B33)、Cは3台 (C3-C7)。このうち現存しているのは21台、近年まで存在していたのが2台、残り3台は不明です。この表の右端に補足した“斉”は斉田博さんの「天文学の夜明け」(誠文堂新光社・1982年)、“木”は木村精二さんの「イギリスにハーシェルを訪ねて」(星の手帖・1981年秋号)にそれぞれ載っているハーシェル望遠鏡の表から、対応する7フィート鏡の番号を記しました。

No. 分類 口径 (mm) 所在地または参考
1 A-5

157

ジョン・ハーシェル=ショーランド氏所有(英国ノーフォーク州ディス)

5

2

2

A-6

157

ロンドン科学博物館

6

3

3

B-7

157

フィレンツェ科学史博物館

13

4

4

B-8

157

※ブレラ天文台(ミラノ)、1943年まで

14

5

5

B-9

159

スコットランド王立博物館(エディンバラ)

15

6

6

B-10

157

スコットランド王立博物館(エディンバラ)

16

7

7

B-11

158

ロンドン科学博物館

17

1

8

B-12

165

オックスフォード科学史博物館

18

8

9

B-13

159

パレルモ天文台

19

9

10

B-14

159

テイラース博物館フュシス・カビネット(オランダ・ハールレム)

20

10

11

B-15

140

パリ国立工芸学校国立技術博物館

-

11

12

B-16

159

アドラー・プラネタリウム(シカゴ)

21

12

13

B-17

161

グリニッチ国立海事博物館

22

13

14

B-18

159

タルトゥ古天文台(エストニア・タルトゥ)

23

14

15

B-19

157

国立数学物理学サロン(ドレスデン)

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16

B-26

200

※ドイツ・ギュストロー近郊のレンプリンに住んでいたハーン男爵に157.10ポンドで売却。恐らくB-27に類似したデザイン。

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17

B-27

200

※1796年にスペイン国王カルロス4世から157.10ポンドで発注され、1802年に納品。B-26に類似したデザイン。

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18

B-28

178

マドリード国立天文台

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19

B-29

158

マドリード国立天文台

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20

B-30

?

※1800年頃、ジョン・アクトン卿 (1736-1811) 私設のサン・カルロ・アッレ・モルテッレ天文台(ナポリ)で使用されていた。

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21

B-31

160

ヘルシンキ大学ヘルシンキ天文台

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22

B-32

163

ローマ天文台

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23

B-33

221

ペーター J. K. ローヴマン氏所有(オランダ・ワッセナー)

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24

C-3

155

ヘッセン州立博物館(ダルムシュタット)

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25

C-4

160

ストックホルム天文台(ストックホルム郊外ザルツヨーバーデン)

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26

C-7

165

※1815年までシュレーターの天文台(リリエンタール)にあり、その後数年間ゲッティンゲン大学天文台にあった。

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古望遠鏡協会会報第14号(1998年冬季号)掲載の A. モーラ氏による「W. ハーシェル望遠鏡カタログ」から抜粋

 モーラ氏からは「私の望遠鏡リストの内容をいつでも公開・引用していただいてかまいません。私たちが一緒にこうした特定の話題を楽しめるということが分かって、非常にうれしく思います」との手紙を頂きました。

日本ハーシェル協会ニューズレター第92号より転載


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