C. ハーシェル晩年の様子、医師の手紙から
去る(1992年)7月初め、ハーシェルの直系子孫ジョン・ハーシェル=ショーランド夫妻(英国ノーフォーク州ディス在住)から、わが協会の事務局宛に「英国の夏を楽しんでいます。薔薇がとりわけ美しく、また庭の苺摘みを楽しんでいます」という近況と併せ、1843年つまり今からちょうど150年前、93歳の誕生日にカロラインを訪ねたハノーバーのミューリ医師が、彼女の様子をスラウのジョン・ハーシェル夫妻に知らせた手紙などのコピーを同封して送ってくださいました。よろしければどうぞニューズレターにお使いくださいとのこと、早速一部を紹介します。
今日誕生日のお祝いがあったハーシェル嬢のところからちょうど帰ってきました。今日は彼女と全ての友人たちにとって輝かしい日でした。老嬢は花やその他の贈り物に囲まれて、とても上機嫌で具合も大変良さそうでした。あなたやあなたのお子さんたちからの手紙が彼女の前に並べられていて、彼女は楽しげに私に見せてくれました。その頃までにすでに多くの来客がありました。私が到着する少し前に、皇太子殿下の馬車が帰っていかれました。若い妃殿下と共にハーシェル嬢の93歳の誕生日のお祝いにお見えになったのです。両殿下は1時間以上滞在され、ヘルンハウゼン宮殿からお持ちになった芳しい最高の花束をお贈りになり、ハーシェル嬢の来客簿に署名なさいました。こうしたことは新聞各紙にも掲載されました。私はすでに数年に渡ってハーシェル嬢が病気になった場合に介護する約束をしており、医師として彼女の健康状態に非常な関心を払い、その全てを把握しております。今までに彼女が本当に薬を必要としたことはありませんでした。
老齢故の体力低下を除けば彼女は何の病気もなく、寝込んだこともありません。彼女の力強い精神、常に物事に取り組んでいること(以前ほどではないにせよ)、科学的な活動への生き生きとした興味、幸福とあなたの家族からの愛情に感じる喜び、大勢の友人たちの親切な心配り、大変簡素な暮らしぶりといったものが彼女を支えているのです。そのため私たちは彼女がもう数年は長く生きられるだろうと思っています。彼女が家を離れないので、私は非常に頻繁に彼女を訪ねます。ハーシェル嬢の友人のなかで最も高齢なベックドルフ夫人は87歳と半年になりますが、年齢のためにやや弱っています。ハーシェル嬢はドーバーでの爆発の記事が掲載されている新聞を私に見せ、私はそれを大きな関心を持って読みました。
原文(英文)は日本ハーシェル協会ニューズレター第58号に掲載
日本語訳:木村達郎