拝啓、サンタクロース様
〜 miracle on the 34th street 〜
キャスト
クリス
スーザン
ドリー
フレッド
酔っぱらい
裁判官・男
ニュースキャスター・事務員
婦人1・デパートA社長
婦人2・デパートB社長
婦人3
こども1
こども2
こども3
(1-1)
優しいクリスマスソングで幕が開く。
背景には、星が輝く澄み渡った夜空。
その前にキレイに積み上げられた段ボールが都会の町並みのシルエットを形づくる。
舞台奥の一段高い所で夜空を見上げるサンタクロースの後ろ姿。
音楽が崩れる。
振り返ったサンタクロースがよたよたしながら、舞台前に転げ落ちる。
サンタクロースは酒によっている。
酔っぱらい 真っ赤なお鼻のー、トナカイさんはー、ひっく。
懐から取り出した酒を飲む
酔っぱらい おーい、よい子のみんなー、うぃーす!
あ?声が小さーい、もう一度ー、うぃーす!
ああ、よしよし、プレゼントを、あげるよー
(客席にプレゼントを投げるフリ)なーんちゃって、へへへ。
おおきな袋の中に手をつっこみ、プレゼントを出そうとする。
が、気持ち悪くなり、そのまま袋の中に吐く。
酔っぱらい げー。
あー、気持ちわりー。
ドリーが上手から登場
ドリー いたいた、もう、何やってんの!
早く準備して。もうパレードが始まるわよ。
酔っぱらい あ、これはこれは、ドリーさん。
あいかわらず美し・・
ドリー また酔ってるの。
酔っぱらい へへへ。
ドリー 今度、仕事前にお酒を飲んだら辞めてもらうって言ったわよね。
酔っぱらい まあ、そうカリカリしないの。
ドリー 私は本気よ。
酔っぱらい ああ、そうかい。(サンタの帽子を投げ捨てる)じゃ、辞めた。
ドリー
酔っぱらい 今からパレードだろ?どうすんだ?
今、俺に辞められても困るだろ?へへへ。
ドリー ・・・・・
探すわよ、代わりくらい・・・・
酔っぱらい そんなに簡単に見つかりますかー?
自分で言うのもなんだけど、俺、結構サンタの格好似合ってると
思うぜ。大体、そんな都合よく、サンタクロースになれるやつがいる訳な・・・
セリフの間に上手から、クリスが登場。
その見た目はまさにサンタクロース。
落ちている、サンタクロースの帽子を拾い、酔っぱらいの肩をたたく。
酔っぱらい (振り返って)へ?
クリス 落とし物(酔っぱらいに帽子を差し出す)
しばし、クリスの姿をみて、唖然とする。
ドリー、酔っぱらいを突き飛ばして、クリスの前に立つ。
ドリー 素敵!
あなた、今お時間大丈夫?
サンタクロースになってみない?
クリス 私は、サンタクロースです。
ドリー まあ、早速その気になってるの。
すばらしいわ。
はい、これかぶってちょうだい。
それから
ドリー、酔っぱらいの衣装をはぎ取る。
ドリー これ着て。
もう、ばっちりじゃない。
酔っぱらい ちょ、ちょっとまって
ドリー 約束どおり、あんたは首よ。
酔っぱらい そんなー、待ってくれよ
ドリー はい、これ今までのお給料。
これもって、とっとと私の前から消えてちょうだい。
酔っぱらい く、この冷血女ー。
ドリー 消えて。
酔っぱらい 派遣切りだー!!
さけんで退場する酔っぱらい。
ドリー さあ、パレードのはじまりよ!
華やかな音楽。積み上げた段ボールの後ろから、こども達が登場。
壇上でまわりに手を振るクリス。
箱を押しながらパレードのを形作る人々。
(1-2)
上手に置かれた箱のフタがあいて、中からスーザンがあらわれる。
音楽中断。人々ストップモーション。
スーザンにスポット。
スーザン 私はクリスマスが嫌いです。
町中に溢れる陽気な音楽。パレードに浮かれる人々。
はあ(ため息)
(箱の中からでてくる)
お肉もケーキもワインも(そういって箱を3つ積み上げる)
ぜーんぶ買いあさって食べ尽くす。
もう、おなかいーっぱい。
食べ物だけじゃない。どこもかしこも、イルミネーションが光って、
エネルギーの消費量もいーっぱい。(一番上の箱をなげすてる)
で、その結果、CO2の排出量もいーっぱい。(2番目の箱も)
(くずれた段ボールを指して)
もう、地球は泣いてるわ。
(崩れた段ボールのひとつに座って作文を書く仕草)
みんなそんなこと、お構いなし。
こどもはサンタさんに何をお願いしよーかなって事ばかり考えて、
男の人は、どうやったら女の人をデートに誘えるか、ってことで頭がいっぱーーい。
呼び出しのチャイムが鳴る。
スーザン ほら、きたわよ。
(袖に向かって)どーぞー。
(1-3)
下手から、フレッドがはいってくる。
フレッド やあ、スーザン。
ドリーは?
スーザン お母さんはまだ仕事よ。
今日はパレードの日だから遅くなるって
フレッド パレード・・・ああ、そう言えばさっき公園で。
スーザンはひとりでお勉強?
スーザン 宿題。クリスマスについての作文
フレッド へえ、サンタさんへのお願いとか?
スーザン クリスマスにうかれる馬鹿な男について
フレッド 言うよねー!
あ、そうだ。スーザンにも本を買ってきてあげたよ。
スーザン ほんと!
持ってる本全部読んじゃって、新しいのがほしかったの
フレッド じゃーん、「小学5年生」。
スーザン え、何それ・・・
フレッド だめ?君の年齢にはちょうどいいと思って。
スーザン もっと面白くって、ためになるのがいいの
フレッド 「真剣ゼミ」の方がよかった?
スーザン あんなのこどもダマシ
フレッド しー!岡山でそんなこと言っちゃ駄目!
じゃあどんなのがいいの?
スーザン うーん、今読みたいのは、「いかにして女性は権利を勝ち得たか」
フレッド はあ、まったく、お母さんにそっくりだ。
スーザン え、それって、言い意味?悪い意味?
フレッド え、いや、そりゃもちろん言い意味だよ。
決まってるじゃないか。
スーザン そうよね、私も大人になったらお母さんみたいにバリバリ働いて
じゃんじゃんお金を稼いでやるの。
フレッド スーザン、せっかくのクリスマスなんだしもっと夢のある話をしようよ。
スーザン 夢?
フレッド そう、僕なんてもうこの時期は毎日るんるん気分だよ。
今年はサンタクロースさんに何お願いしよーかなー♪
新しいネクタイがいいかなー、あ、ラジコン飛行機もいいなー、
でも、イチローのサイン入りバットもほしーよーーー。
スーザン (さめた目でみている)
フレッド そんなさめた目で見るなよー。いいだろー大人だって夢見たって。
スーザン 夢なんて馬鹿げてる。
夢や希望なんて持ってても最後には裏切られるだけ。
最後に頼りになるのはやっぱりお金よ!
フレッド スーザン・・・・
スーザン ・・・ってお母さんが言ってた。
ま、お母さんはちょっと極端だけどね。
ほんと、分かりやすいわよ、売上げが少ない日はカリカリしてるし、
たくさん売れた日は機嫌がいいの。
だからフレッドも気をつけて
フレッド え?
スーザン お母さんに告白するなら、売上げが多い日にしないと。
(段ボールをならべる)
フレッド 何だい、それ?
スーザン はい、そっち持って
フレッド え?(言われるままに段ボールを積み上げる)
スーザン ほら、売上げ右肩あがりー。(ポーズを決めて)デートに誘うならこんな夜!
フレッドとスーザン、ストップモーション
(1-4)
舞台下の通路にドリー登場。
右肩あがりにならべられた箱を棒グラフにみたて、指示棒をつかって
ドリー では最後に、こちらのグラフをご覧下さい。
これが今週の売上げ、右肩上がりで順調に伸びています。
先週のパレードはご覧になっていただきました?
クリスをサンタクロースにしてからパレードは大盛況!
お店の売上げも20%アップです。
クリスにはこのままうちで働いてもらおうと思います。
以上で私からの報告を終わります。何かご質問は?
では、失礼します。
ドリー、お辞儀をして、舞台上にあがる。
(1-5)
舞台上ではフレッドがひとり下手のソファに座っている
ドリー あら?
フレッド (ちょっとあわてて)やあ、ご苦労様
ドリー ここは関係者以外立ち入り禁止ですけど?
一体何のよう?
フレッド (スーザンと同じポーズを決めて)デートに誘うならこんな夜!
ドリー はあ?
フレッド あ、いや、独り言。
今日は、売上げ報告の日だろ。
ドリー ま、なんで知ってるの?
フレッド スーザンに教えてもらった。
ドリー あの子に?
あ、そういえばこの間もうちに来てくれたっていってたわね。
フレッド ああ。
ドリー 言ってたわよ、大人のくせにいっぱいサンタクロースにお願いをしてたって。
ねえフレッド、あんまりあの子の前でそういうこというのやめてくれない?
フレッド どうして!?サンタを信じるって子どもの自然な姿じゃないか。
そういう君だって、ずいぶんとサンタのお世話になってるんだろ。
ドリー え?
フレッド 新しいサンタをつれてきてからデパートの売り上げは絶好調。
ドリー ああ、クリスのこと。そうね、確かに彼は不思議だわ。
他のデパートにいる付け髭のサンタとはちがう何かを感じるのよねえ・・・。
フレッド まるで、本物のサンタのような?
ドリー ふふふ、その素質はばっちりあるわ。
フレッド ま、おかげで君のボーナスもアップして、
君にとっちゃまさに本物のサンタクロースってわけだ。
さあ、じゃあその話のつづきは食事をしながら
ゆっくり聞かせてもらうよ。
ドリー へ?
フレッド携帯電話を取り出し、
フレッド 噴水の前のレストラン、予約しておいたから。たまにはいいだろ?
ドリー ・・・ごめんなさい。今夜は早く帰って、スーザンの宿題をみてあげる約束してるの。
フレッド スーザンなら大丈夫さ、ひとりでもちゃんと宿題やってたし。
ドリー そう・・・でも、ごめんなさい、やっぱり、今日は帰るわ。
フレッド ドリー・・・・・。
クリスが仕事を終えて部屋にはいってくる。
ドリー あら、クリス、お疲れ様。
悪いけど先にあがるわね。
そう言って、コートを着て部屋を出ていこうとするドリー
ドリー (去り際にフレッドに)
そうだ、代わりにクリスをさそってあげたら?
そういって、部屋をでていくドリー。
残されたフレッドとクリス。
フレッド (クリスの顔をみて)・・・・やあ
クリスも手をあげて微笑む。
フレッド (じっくりとクリスの顔をみて)
うーん、確かにサンタにそっくりといえばそっくり・・・
まあ、本物のサンタの顔を知ってるわけじゃないけど。
クリスは不思議そうにフレッドを見つめる
フレッド ふん、悪いが、おじさんと二人で高級ディナーを食べる
趣味はないんでね。
そういって、部屋をでていくフレッド。
その姿を見送って、ソファにすわるクリス。
しばらくすると、またフレッドがはいってくる。
フレッド レストランはキャンセルしてきた。
ほれ、ホットドック。
(持っているホットドックの紙包みをひとつ差し出す)
男同士はこれでいいだろ?
クリス、よろこんでうけとる。
一口食べたあと、ドリーが出ていったほうを指さす。
フレッド え?
クリス 旦那さん?
フレッド 旦那?僕が、ドリーの?
ははは、そう見えた?
そりゃうれしいなあ。
クリス ちがうの?
フレッド まあ、仲良くしてはいるが・・・・
クリス いい人だ
フレッド ああ、とっても、きれいでやさしくて。
でも、だめだ、彼女は俺を必要としてない。
俺の願いは永遠にかなわないままさ・・・。
クリス 大丈夫。
フレッド そう簡単にいうなよ・・・。
クリス 君は君のできることをすればいい。
フレッド できること?
クリス クリスマスは、みんなの願いが叶う日さ。
フレッド ふん、クリスマスねえ・・・・。
知ってるか?彼女クリスマスが大嫌いなんだぜ。
クリス
フレッド 5年前のクリスマスに、彼女の旦那がさあ・・・
いや、やめよう。ともかく・・
クリス ・・・・
フレッド クリスマスは単なる金儲けの手段。
そう割り切ることが今の彼女にとっちゃ、幸せなのかもしれない。
クリス 幸せ?それが?
フレッド いや、僕にだって彼女の本当の気持ちはわからないさ。
あの時から、今も、ずっと心を閉ざしてる。ずっと・・・。
下手側(クリスとフレッド)の照明フェードアウト。
(1-6)
上手側の照明フェードイン
スーザンが上手の椅子に座ってノートパソコンを開いてキーボードをたたいている。
そこにシャワーを終えたドリーが鼻歌まじりにはいってくる。
スーザン (不思議そうに)お母さん、ご機嫌ね。
ドリー そう?
スーザン フレッドにプロポーズでもされた?
ドリー フレッド!?あはは、やめてよ、そうじゃないわよ。
ちょっと仕事でね、新しく雇ったサンタクロースがなかなか好評で、
スーザン まあ、確かにあのサンタはいけてるかも。
ドリー クリスの事知ってるの!?
スーザン あ、いや、ちょっとパレードで・・・
ドリー まあ、この前のパレードを見たの?珍しいわね、スーザンが。
スーザン 違うわよ。同級生の子がパレードパレードってさわいでるもんだから、
どんなものかちょっと見てみただけ。ホント子どもだまし、あんなもの。
ドリー 分かってますよ、そんなこと。
スーザン まったくみんなクリスマスだって、はしゃいじゃって、バカみたい。
だっておかしいよね。
お願いするだけで世界中の子どもがプレゼントをもらえるなんて、
そんな都合のいい話があるわけないじゃない。
そうでしょ?
ドリー ええ、そうね。
スーザン ほんとに、みんな夢と現実の区別もついてないの。
ドリー スーザンはいい子ね、ちゃんと現実がわかってるわ。
スーザンはクリスマスに何が欲しいの?
スーザン え?
ドリー サンタクロースはいないけど、ちゃんとお母さんがほしいものを
買ってあげるわ。
スーザン やったー!
ドリー ぬいぐるみ?それとも洋服?
スーザン うーん・・・お母さんは私に何をあげたい?
ドリー 何?その質問。
そうね・・・・お母さんはスーザンがほしいものなら何でも。
スーザンが喜ぶ顔が見たいもの。
スーザン 私も!
お母さんがくれるものなら何でも。
お母さんが、喜んでる顔が見たいの。
ドリー それじゃ、決まらないじゃない。
変な子ねえ・・・
まあいいわ。さあ、パソコンは終わり。もう寝ましょう。
スーザン うん・・・・
ねえ、お母さん。
ドリー 何?
スーザン お話しして・・・私が、小さいときのお話
ドリー ええ、いいわよ・・・
やさしいバラード。
照明、フェードアウト
2場
(2-1)
華やかな音楽。デパートの売り場。
下手から、クリスとドリーが商品の箱をかかえて登場。センター奥に積み上げる。
上手からお客さんが順番にやってくる。
クリスはお客さんに愛想しながら、箱をひとつづつ渡していく。
横でドリーがお辞儀をしていく。
お客さんは箱をかかえて下手へ退場。
次々にやってくるお客さん。
ドリーはその様子に満足しながら、退場。
前方の下手から、箱をたくさんかかえた婦人1が登場。
上手からも婦人2登場
婦人2 あーら、奥さん、どうしたのそんなにいっぱい抱えて
婦人1 あら、奥様。おほほほ。
あそこの34丁目のデパート、今日クリスマスフェアを
やってますのよ。
婦人2 まあ、そうなんですの。
それにしても、いっぱい・・・
婦人1 せっかくのクリスマスですもの。
いろんな人にプレゼントあげたいじゃない。
愛情をこめて。
婦人2 さすが、奥様、愛情深い。
婦人1 これは、こども達の分でしょ。
で、これが、旦那に。
(旦那の箱の中から、一回り小さい箱)
これが、遊びでつきあってる淳ちゃんの分でしょ。
婦人2 えー!
婦人1 (以下マトリョーシカのように)
これが、その奥さん。
これが、その奥さんの不倫相手。
婦人2 愛情が段々小さくなっていくわね。
婦人1 で、これが、そのペットのワンチャンで。
で、はい、奥様にも。(一番小さい箱を差し出す)
婦人2 えー!
婦人1 ほほほ、遠慮なさらないで。
さあさあ、奥様も早く行かないと、もう閉店の時間よ。
婦人2 まあ、(時計を見て)ほんとだわ、大変、すっかり話し込んじゃって。
それじゃ、奥様また。
婦人2下手に退場
婦人1 あ、まって、奥様わすれもの
婦人1も追って下手に退場
(2-2)
続いてフレッドにひっぱられてスーザン登場
スーザン いい、やっぱりいかない。
フレッド なんで、いこうよ。
スーザン 別にサンタに何て会いたくないもん。
フレッド そんなこと言わずにさあ
無理矢理スーザンの手を引っ張るフレッド
スーザン わー、助けてー、変な人に連れて行かれるー
フレッド ちょっと、誤解されるだろ。
スーザン 誤解されるようなことしてるんでしょ。
フレッド そうじゃなくてさ。君もサンタにあってみたら、
ちょっとはクリスマスを楽しく思ってくれるかなって
スーザン 偽者でしょ?
フレッド そうだけど・・・。いいんだよ!騙されてみるの、わざと。
あ、ほら、こんなところにプレゼントが落ちている。
こっちにも・・・・。
これはきっとサンタ様のお導きにちがいない。
スーザン ちょ、ちょっと本気で言ってるの?
フレッド、そのまま袖に退場
スーザン ちょっと待ってよフレッドー。
フレッドを追ってスーザンも一度退場。
そのまま一つ奥の袖からフレッドが登場して、クリスの後ろに隠れる。
それを追ってスーザンが駆け込んでくる。
スーザンとクリスの目があって立ち止まる。
スーザン あ・・・
クリス やあ、こんにちは。
スーザン こ、こんにちは。
クリス 君は、クリスマスに何がほしいんだい?
スーザン え・・・私は、別に・・・。
クリス ん?
スーザン 私はクリスマスなんてきらい。サンタクロースだって信じてないの。
他の子とはちがうんだから。
クリス (うなずく)
スーザン あんただって、偽者のサンタでしょ。
クリス 僕は本物さ。
スーザン え?
クリス 本物のサンタクロースだよ。
スーザン は・・・ははは・・・、もう、なんでそんなこと言うわけ?
いいわ。じゃあ、私がほしいのはお家。おもちゃじゃない、本物のよ。
土地付きで3000万円。どう、本物のサンタなら、お願いをかなえてよ。
クリス (ゆっくりとうなずく)
ドリーがはいってくる。
ドリー ねえ、クリス。
あら、フレッド・・・スーザン!
どうしてここに!?
フレッド あ、いや、僕がちょっと連れてきてね。
ドリー もう、なんで勝手にそんなことをするの!
さあ、スーザン、早く帰って、お勉強してなさい。
スーザン ・・・はい、お母さん。
スーザン退場。
フレッド あ・・・その・・・ごめん・・・別にそんな
ドリー ・・・・早く、スーザンについていってあげて。
フレッド あ、ああ。
フレッド、スーザンのあとを追って退場。
ドリーもその方向に数歩進んで、先を見つめる。
その間に、親子連れがクリスに近づく。
婦人3 あのー、天体望遠鏡があるかしら。
子ども3 僕ねえ、望遠鏡を買ってもらって新しい星を
発見するの。
クリス すごいなあ。
子ども3 そしたら星に名前を付けれるでしょ。
だから「ウメ星」って名前を付けるんだ。
クリス ここに売ってあるのはおもちゃだから
星をさがすなら、となりの通りのデパートにある
大きな望遠鏡のほうがいい。
婦人3 まあ、そちらのデパートにあるんですね。
ありがとう。さあ、行きましょう
子ども3 うめぼし、うめぼしー
お辞儀をして去る婦人。
そんな様子をみてクリスにつめよるドリー。
ドリー ちょっと、どういうつもり!
クリス (手話)お客さんが喜んでくれてよかったですね。
ドリー ちがうわよ。なんで、他の店の商品を勧めたりするのよ!
うちの商品を売ってくれなきゃ困るわよ。
クリス (手話)だけど、お客さんが・・・
ドリー あのねえ、これはボランティアじゃないの、
商売なのよ、わかる?商売!
お客さんの喜ぶ顔を見たって一銭の得にも
なりゃしないの。まったくあきれたわ。
もう今日はいいわ、帰ってちょうだい!!
クリス言い訳をしようとするが、ドリーの剣幕におされ、
後ずさり。
ドリーに後ろから先ほどの婦人が近づく。
婦人3 あのー。
ドリー え?
婦人3 ここのお店の方かしら?
ドリー え、ええ
婦人3 お客さんのためなら、他の店の商品も紹介するなんて。
気に入ったわ、このお店。
これからは必要なものは全部この店で買わせていただくわ。
ドリー あ、ありがとうございます。
婦人3 じゃあ、さっきのサンタさんにもよろしく。
去っていく婦人。
ドリー、クリスのいたほうを振り返るが、もうクリスはいない
ドリー クリス・・・・
照明フェードアウト
(2-3)
ニュース番組の音楽。
ニュースキャスターにスポット
キャスター こんばんは。手話ニュースの時間です。
今日は、今街で話題沸騰中、34丁目デパートがはじめた新しいサービスについて
お伝えします。
最近始めたこの斬新なサービスがお客さんに大変好評となっています。
早速、お客さんの声を聞いてみましょう。
婦人1 助かるんですよ。
ここのデパートに置いてない商品は、ちゃんと別のデパートを紹介してくれて。
しかも一番安い店を教えてくれるの。
こんなサービスは今まできいたことないわ。
婦人2 ここのサンタさんは、何でも知ってるの。
どこのお店にどんなおもちゃが置いてるのかって。
ほんと、おどろいちゃった。
婦人3 サンタさん、言ったの。
自分とこの売上げよりもお客さんの笑顔が大事だって。
すばらしいわ。これこそが本当のクリスマス精神よね。
照明カットオフ
(2-4)
デパートのスタッフルーム
携帯電話をかけているドリー。
ドリー ええ・・・そうですか。わかりました。
いえ、他をあたってみます。
そこへフレッドが駆け込んでくる。
フレッド いた?
ドリー ああ、フレッド。
ごめんなさい急に呼び出したりして。
フレッド いいよ、それよりクリスは?
ドリー ダメ、色々とあたってみてるんだけど
どこにも来てないって。
フレッド 彼、住所は?
ドリー それが、わからないのよ。
フレッド 仕事が嫌になって逃げ出したんじゃないのか?
ドリー やっぱり、私が怒ったからかしら・・・・
でも、突然辞めるなんて、クリスに限ってそんなことはないわ。
フレッド どうして
ドリー ・・・わからない・・・だけど・・・・
フレッド ともかく、さがそう。
そうだ、君が最初に彼と出会った公園っていうのは?
ドリー 3丁目の中央公園。
フレッド よし、そこへ言ってみよう。
うなずき、走り出す二人。上手へ退場。
(2-5)
公園を散歩する人達が、上手、下手より。
土木のおじさん2人組が、中央奥に段ボールでクリスマスツリーを形づくる作業。
上手より、ドリーとフレッドがかけこんでくる。
その中の一人の婦人をつかまえて
フレッド すみません。人を捜してるんです。
初老で、髭をたくわえてて、赤いスーツをきてて・・
ドリー サンタクロース
フレッド そう、サンタクロース!
婦人3 は?サンタクロースを探していらっしゃるの?
フレッド いや、そうじゃなくて、
サンタクロースにそっくりの・・・・
話しているフレッドと婦人をおいて、
ドリーは別のこども達のほうにかけより声をかける。
ドリー ねえ君たち、サンタクロース見なかった?
こども1 えーサンタクロース?
こども2 おばさん、サンタクロースなんて信じてるの?
こども1 サンタさんはね、24日の夜にならないと来ないんだよ。
そんなことも知らないの?
こども2 何言ってんだ。サンタクロースなんて
いるはずないじゃないか。
こども1 いるよ。ママがそう言ってたもん。
こども2 うそだ、あんなのただのデパートの戦略だよ。
こども1 えー、ちがうよ。絶対にいるもん。
(ドリーに)いるよね?
ドリー え・・・ええ、そうね、いると思うわ。サンタ。
きっと。いい子にしてたら来てくれるはずよ。
ありがとう。
ドリー、また別の人にかけより話しかける。
ドリー すみません・・・
フレッド、別の男性に声をかける。
フレッド あの、サンタクロースをさがしてるんですけど。
男性 サンタクロース?
フレッド ちょっと太ってて、髭がはえて、赤い服をきて、
男性 そんなことより、ウォーリーを探してるんだけど、
フレッド ウォーリー?
男性 痩せてて、眼鏡かけて、シマシマの服をきた。
(絵を見せて)こんな人、見ませんでした?
フレッド ・・・さあ・・・
男性 そう、ありがとう。
立ち去る男性。
客席の前列に座っているウォーリーが立ち上がる。
フレッド あ、いた!
ドリー え?どこ
フレッド いや、そうじゃなくて、ウォーリー・・・
ドリー は?
ウォーリーはそのまま客席通路を通って退場。
フレッド (袖に向かって)おーい、いたよー、あ・・・
ドリー もう、何言ってんの。そんなことよりクリスは?
フレッド (首を横に振る)
ドリー こっちも。・・・いいわ、もう諦めましょ。
フレッド、仕事は大丈夫だったの?
フレッド ああ、君から電話をもらって、
なんとか別の人に代わってもらったから。
ドリー ごめんなさい、変なことに巻き込んじゃって
フレッド いいさ、仕事のかわりはいるけど、
君を助けてあげられるのは・・・・
ドリー かわり。そうね、またクリスの代わりの人をさがさないと。
ああ、今年もとんだクリスマスだわ。
やっぱりクリスマスなんて大嫌い。
フレッド ねえ、ドリー・・・・
こんな時に言うのも、あれだけどさあ・・・
ドリー なに?
フレッド 僕じゃダメかな、君に、いや君たちに幸せなクリスマスをプレゼントするの
ドリー え・・・どういう、こと
フレッド だからさあ、もうスーザンも年頃だし、
やっぱり、父親がいて、家族3人で食卓を囲んで
クリスマスソングを歌って、
そんな素敵なクリスマスをさあ、
ドリー それが・・・あなたの幸せの形?
フレッド いや・・・それだけじゃ・・ないけど・・・・
ドリー 私もスーザンも、もうそんな夢はもう見てないわ。
フレッド だけど・・・
ドリー ありがとう、フレッド。でも・・・
大丈夫!
心配してくれなくても、私もスーザンも強くなるから。
スーザンも随分しっかりしてきたと思わない?
フレッド ああ、スーザンは、とってもいい子に育って・・・
ドリーの携帯電話がなる
ドリー (携帯を見て)あら、噂をしてたら、スーザンだわ。
もしもし。
え!?クリスがそこにいるの!?
なんで!
(2-6)
舞台上手の奥から電話を手にしたスーザンとクリス登場
ここから、舞台はスーザン・クリス(★)とドリー・フレッド(▲)の2カ所が同時展開
(★)
スーザン ごめんなさい。
私が街で出会ったクリスを無理矢理連れ回してたの。
うん、とっても面白い人。
あ、そうだ、フレッドにかわってちょうだい。
(▲)
ドリー え、どうしてフレッドと一緒だってわかったの?え、はいはい。
(フレッドに電話を渡す)スーザンが代わってって
(★)
スーザン はーい、フレッド。元気?
あ、知ってる?3丁目の公園のクリスマスツリー。
毎晩7時になるとライトアップされてすてきな音楽がかかるんですって。
恋人たちのデートスポットよ。
二人でその明かりをみると、永遠に結ばれるんですって。
え、今、その公園にいるの?まあ、なんて偶然。
それじゃあ、お母さんをよろしくねー。
電話をきるスーザン。
スーザン側の照明OFF
(▲)
電話をみるフレッド。
フレッド (ドリーに)クリスマスツリー
ドリー
フレッド ライトアップだって
突然照明が消えると、うしろに積み上げられた段ボールのツリーにイルミネーションがともる。
クリスマスバラードが流れる。
何組かのカップルがでてきて、クリスマスツリーを見上げる。
ゆっくりとうしろを振り返るフレッドとドリー。
フレッドがドリーの肩にそっと手をかける。
フレッド側の照明薄暗く。
(★)
スーザン側の照明ON
スーザン (クリスに)これで良かったかしら?
うれしそうにうなずくクリス
スーザン まったく、街で出会うなり、どこでもいいから遊びに
連れて行けだなんて。
まさか誘拐のお願いをされるなんて、びっくり。
ほんと、大の大人がそろいもそろって世話がやける。
クリス、両手をあげて、なだめるポーズ
スーザン 私はねえ、別にお母さんとフレッドがどうなろうと、
どうだっていいの。
え、フレッドの願いをかなえたって?
まだサンタクロースの気分でいるわけ!?
半分は私の手柄じゃない。
クリス じゃあ君もサンタクロースだ
スーザン 私も?あはははは、じゃあこの世はサンタクロースだらけね。
クリス 信じてる人は誰でもサンタになれる。
スーザン だから、何度もいうけど、私はサンタクロースなんて
信じてないの。
クリス 信じる者は救われる
スーザン 信じてなくても救われるわ。
クリス 信じられるものがないんだね。
スーザン そんなもの要らない。
クリス 目を閉じて
スーザン え?何?(目を閉じる)
クリス そうして、今頭にパッと浮かんだものを言ってごらん。
スーザン 何でもいいの?うーんとね、じゃあ、サボテン。黄色いお花がさいているの。
目をあけると、クリスがサボテンを持っている。
スーザン わあ、すごい!
クリス 少しは信じたかい?
スーザン ねえ、一体どういう仕掛け?
クリス、とぼけたポーズ。
クリスとスーザンの照明フェードアウト。
(▲)
背景を見つめているフレッドとドリー。
フレッドがドリーに話しかけ、プレゼントを差し出す。
しばし見つめ合った後、首を横に振り、ひとり立ち去るドリー。
ひとり取り残されるフレッドのシルエット。
照明溶暗
クリスマスバラード高らかに。
3場
(3-1)
ニュースの音楽。
ニュースキャスターにスポット。
キャスター 手話ニュースをお伝えします。
先日放送した34丁目デパートのサービスが町中で大きな反響を呼んでいます。
このサービスに影響された、まわりのデパートも次々に同じサービスを始め
町中に思いやりの精神が広がっています。
デパートA社長 お客さんを思いやる気持ちならうちのデパートだって負けていません。
うちにない商品のことでもなんでも聞いてください。
他のお店まできちんとご案内さしあげます。
デパートB社長 うちなんてほら、町中のデパートが一目でわかる便利マップを
無料でさしあげますよ。
デパートA社長 そうだ、今度そちらのお勧め商品を教えてください、うちの方でも宣伝しときますよ。
デパートB社長 そりゃいい、じゃあうちもそうすることにしよう。
二人握手して、高らかに笑う。
キャスター では、このサービスの火付け役でもある34丁目デパートのサンタクロースさんにも
お話をうかがってみましょう。
仕事をしているクリスにスポット
クリス顔をあげて、とまどい、愛想笑い。
ドリー ちょっとクリスーこっちきて。
(テレビカメラに気づいて)あら、ちょっといそがしいの。ごめんなさい。
さあ、クリスお客さんがまってるわよ。
ドリー、クリスを引っ張っていく。
クリスマスの音楽がながれる。
ドリーとクリスは、次々にお客さんに商品の箱をわたしていく。
ダンサー達登場。みんなで一緒にクリスマスソングを歌う。
ーーー歌&ダンスーーーー
袖に退場しようとするドリーの前に酔っぱらい登場
ドリー あ!
酔っぱらい よ、ひさしぶりだなあ、ドリーさん
ドリー ちょっと、一体何の用?
酔っぱらい 相変わらず冷たいねえ。実はよう、あの時もらった給料なんだけど、
ちょっとばかし足りねえんじゃなえかと思ってな。
ドリー そんなわけないでしょ。
たいして働いてもないくせに。
酔っぱらい はあ?俺のサンタは最高だったじゃねえか。
ともかくさあ、もうちっともらわなきゃ、計算があわねえの。
ドリー いい加減にして。もう私の前に現れないでちょうだい。
ドリー、反対方向に立ち去ろうとする。
酔っぱらい、まわりこんで
酔っぱらい おっと、まてよ。
ドリー どきなさい。
不信に思ったクリスがちかずく。
酔っぱらい (クリスをみて)おお、おめえ、なんだかうまいことやってるみてえじゃねえか。
(ドリーに)わかったよ、こっちにはこっちのやり方ってもんがあるんだ。
(大きな声で)みなさーん。
ここにいるサンタクロース、私から無理矢理サンタの役を奪ったんですよ!
ドリー ちょっと!
酔っぱらい おかげで貧乏な私は職をうしなって、毎日寒空の下、こごえる思いです。
クリス 奪ったもなにも、私はサンタクロースです。
酔っぱらい ははは、何寝ぼけたこと言ってんだ。
ちょうどたくさん子どももいることだし、良い機会だ。
いいか、お前ら、サンタクロースなんて本当はいないんだぞ。
もちろんこいつも偽者。ぜーんぶデパートが儲けるための陰謀だ。
ドリー ちょっと、やめて!
酔っぱらい (ドリーの腕をおもいきりつかんで)
ドリーさん、大の大人がよってたかって、こどもに嘘を教えていいと思ってるのか?
ええ?
あわてて酔っぱらいを止めるクリス
酔っぱらい 何だ?やるのか?
おもわず手を振りかざすクリス。
照明カットオフ。
(3-2)
スーザンの部屋。
食卓に座り、パソコンを開いているスーザンとコーヒーを飲むフレッド。
フレッド はあ・・・
スーザン もう何?ため息なんかついて。
恋煩い?
フレッド 何でわかるの!?
スーザン 顔に書いてるわ。
フレッド やっぱり僕の願いはかなわないままか・・・
スーザン 大丈夫!
フレッド
スーザン もうすぐクリスマスでしょ。
クリスマスはどんな人の上にも幸せがおとずれる日なんだって。
クリスが教えてくれたわ。
戦場の兵隊さんも、クリスマスの時だけは争うのをやめて
心やすらかに幸せを祈るんだって
フレッド クリスがそんなことを?
スーザン あと、こんなのも。
クリスマスの朝に積もった雪はなんであんなにキラキラしてるか?
わかる?
フレッド さあ・・
スーザン もう。少しは考えてよ!
雪の結晶ってどれもみんな六角形のかたちをしているの。
知ってる?六角形っていうのは、この世で一番きれいな形よ。
蜂の巣も、亀の甲羅も、トンボの目玉も、みーんな六角形。
自然の中には六角形があふれてるんだって!
で、クリスマスの朝の光が差し込む角度が、ちょうど六角形の角度と
同じ120度で、
フレッド あの・・・ちょっと・・・なんか難しそうだからパス
スーザン ええ!?もう、ここからが面白いのに!
(ため息)駄目ね、やっぱりクリスじゃないと。
フレッド なんだか・・・楽しそうだね。
スーザン え・・・
あ、いやだ、クリスって、ひとりではしゃいでこんな話しばっかりするのよ。
ホント、いい大人がバカみたい。
フレッド ねえ、スーザン・・・
スーザン (パソコンを見て)あ!!ちょっと大変!
フレッド え?どうしたの?
ドリーが駆け込んでくる
ドリー 大変なの!
フレッド ドリー・・・。一体何?二人とも?
ドリー・スーザン クリスが・・・警察につかまっちゃった・・・
え?(二人顔を見合わせる)
ドリー (スーザンに)何で知ってるの?
スーザン だって、ここ、ニュースにでてるもん
ドリー うそ!(いそいで画面をみる)なんで!
フレッド ねえ、何なの?一体どういうこと?
ドリー クリスが暴力を・・・
フレッド 暴力?まさか、クリスが!?
ドリー ちがうの。私のせいなの。
クリスは私を守るために・・・
舞台奥の壇上、酔っぱらいにスポット
酔っぱらい こう、いきなりつかみかかってきて、殴りやがったんだ。
サンタクロースがきいてあきれる。
とんだ暴力おやじじゃねえか。
いいですか、みなさん、あの34丁目のデパートにいるサンタには
気をつけてください。サンタの名をかたった、悪魔です。
酔っぱらいスポットOFF
ドリー ああ(頭を抑える)
フレッド (ドリーに近寄り)その、何て言っていいか・・・
これで、お店の評判も・・・
ドリー お店なんてどうでもいいの。
フレッド
ドリー 私のせいだわ。私のせいでクリスは・・・
ねえ、私どうしたらいい?
このままじゃクリスが犯罪者になってしまうわ。
フレッド どうしたらって・・・・
ドリー ああ(顔を押さえ泣き崩れる)
もういやなの、これ以上、クリスマスに大事な人を
失うのは・・・・
フレッド ドリー
舞台奥の壇上にクリス
クリス  簡単さ、君は君のできることをすればいい
フレッド クリス・・・
僕が、僕がなんとかする!
ドリー
フレッド 僕がクリスの弁護につくよ。
クリスを救ってみせる!
ドリー フレッド
照明カットアウト
4場
(4-1)
場つなぎの音楽。(これから始まる法廷を盛り上げるような感じの)
暗転の中を段ボールで、法廷を形作る。
ニュースキャスターにスポット
ニュースキャスター 前代未聞、サンタクロースが訴えられるというサンタクロース裁判。
法廷には、この裁判の行方を見守ろうという大勢の人が押し掛けています。
婦人1・2、走ってきてニュースキャスターとぶつかる
婦人1 あら、ごめんなさい。ねえ、裁判所ってこちらかしら?
ニュースキャスター ええ、もう始まってますよ、裁判。
婦人1 大変!遅刻だわ。
婦人2 (テレビカメラに気づいて)あら?これテレビ?(ピースサインとかする)
婦人1 (顔を押さえて)いやだわ!こんな顔お茶の間に・・・(とかいいつつポーズ)
婦人2 奥さんこんなことしてる場合じゃ
婦人1 そうね、それじゃごめんあそばせ。
婦人達去っていく。キャスターのスポットOFF。
法廷。
人々のざわめく声。
中央に裁判官にスポット。木槌でデスクをたたく。
裁判官 それでは、被告人はあくまで無罪だと
そうおっしゃるわけですね。
下手のフレッドにスポット
フレッド そうです。
デパートにいたのは、クリスマスを楽しみにしている、こども達。
そこにいきなり酔っぱらいが現れて、サンタクロースはいないなんて大騒ぎ。
こども達の夢を台無しにし始めた。
クリスはそれを止めただけ。どちらに罪があるのか?簡単なことです。
上手の酔っぱらいにスポット
酔っぱらい 何言ってやがんだ。
適当なことをペラペラと。
お前、その現場を見たのか?ええ?
何処にそんな証拠があるんだよ。
フレッド 裁判長、証人を。
裁判官 では弁護人が用意した証人の方々、前へ。
誰もでない
フレッド あれ?
裁判官 証人を。
フレッド あ・・・ちょっと・・・まって
婦人1,2あわててはいってくる
婦人1 (法廷の様子をみて)まあ、すごいわ奥様。ほら、なんか
テレビでみたことある、本物の裁判みたい。
婦人2 当たり前じゃない、本物の裁判なんですから。
(裁判官に近づき)きゃー、これ、例のあれでしょ。
(木槌をとって)判決を言い渡す・・・・みたいな
裁判官 (咳払い)おっほん!
何なんだ、あなた達。
フレッド しょ、証人です。
(婦人達に)ちょっと!ちょっと、奥様!
婦人1 へ?
フレッド 出番です。はやく、(自分の前をさして)こっちで証言して!
婦人1、2立ち止まり、お互い顔を見合わせ、法定内の様子をうかがって
婦人1.2 あら、やだわ
あわててフレッドの近くにもどってくる。
婦人1 あの時はほんと、怖かったわ。いきなり、わーきゃー訳のわからないことを叫んで、
入ってくるんだもの。
(酔っぱらいを指して)そう、この人この人、お酒のニオイをプンプンさせて。
だから酔っぱらいってきらいなのよ。
うちの旦那もそう。毎晩酔って帰ってきて、飯だ風呂だって偉そうに。
私はあんたの召使いじゃないっていうの!
婦人2 こども達もとても喜んでいましたわ。
サンタクロースが悪者をやっつけてくれたって。
正義の味方だって。
それから酔っぱらいをやっつけるサンタクロースごっこが
流行っちゃって。
旦那が酔って帰ってきた日にゃ、こども達のいいターゲットになってるわ。
ホント、いい気味。
婦人1・婦人2 お互い酔っぱらいの旦那を持つと大変ですわねー。
フレッド 以上です。
酔っぱらい お前らの旦那の愚痴は全然関係ねーじゃねえか。
大体今の話を聞くと、俺は叫んだだけ、それをサンタが
やっつけたって、結局手を出してるのはこいつだっていう
何よりの証拠じゃねえか。
婦人1・婦人2 私たちは、断固サンタクロースさんを支持します。
みなさん、そうでしょ?
沸き上がる拍手。
酔っぱらい まてよ!全くお前らには論理性ってものがねえのか。
いいか、じゃあ俺の話をよーく聞けよ。
そもそも俺がこどもたちの夢を壊したっていうが、何故だ?
フレッド そりゃ、サンタクロースがいないだなんて
酔っぱらい じゃあ、あんたはサンタクロースが本当にいると思っているのか?
フレッド そりゃ・・・・い、いるさ、もちろん。
酔っぱらい ははは、無理すんなって。
いいか、そもそもサンタクロースなんて信じちゃってるから、
夢が壊れるんだろ?
じゃあそんな嘘を子どもに吹き込んだのは誰だ?
フレッド それは・・・・
酔っぱらい ほら見ろ。元はと言えばサンタがいるなんて嘘を言ってるお前らが、
悪いんじゃねえか!
フレッド ちがう!嘘・・・じゃない・・・
酔っぱらい はあ?よく聞こえねえ。
フレッド 嘘なんかじゃない!ここにいるクリスこそ本物のサンタクロースさ!
この裁判で僕はそれを証明してみせる!
酔っぱらい ははは!こいつが、サンタだって!?
本気で言ってんの?こりゃいいや。
(まわりをみて)・・・って笑ってるの俺だけ?
上等だ!証明してみやがれってんだ。
婦人1 弁護士さん、がんばって!
フレッド ああ、やってみるよ。こども達の夢を守るためにも。
酔っぱらい ったく、正義面しやがって。俺は、それが気にくわねえんだよ。
いいか。俺は、小さい頃親に捨てられた。それ以来ずっと一人で生きてきた。
食うものも寝るところもない。
そんな俺にサンタクロースが現れることなんて一度もなかったさ。
この時期になると周りの子どもはみんなクリスマスだ、サンタだって
はしゃいでな・・・道ばたで凍えている俺の前を楽しそうに横切っていくんだ。
その時俺は思った。この世に本物のサンタなんていやしない。
こんな嘘がまかり通ってるから俺はこんなに惨めな気持ちになるんだって。
だから俺はサンタクロースがいるなんていって
子どもを騙して平気な顔をしてる大人が許せねえ。
ましてや自分が本物のサンタだなんていってるヤツはな!
(クリスを指さす)
こいつは完全な詐欺だ。被害者は世界中のこども。俺がその代表だ。
これで俺の主張は終わり。何か?
徐々に大きくなる拍手。
婦人1・婦人2 (立ち上がって)私たちは断固彼を支持します。
フレッド ええ!?
婦人1 世の中の不幸から目をそらしてはいけません。
そうですわね、裁判長さん。
裁判官 え・・・ええ・・その通り。
酔っぱらい あ、裁判長が認めた。
フレッド ちょ、ちょっと待ってくれ!
こっちにはまだ証人がいるんだ。
裁判官 で、では、次の証人、前へ。
ウォーリーがフレッドに促されて前に。
ウォーリーが話はじめようとしたとき、全体ストップモーション。
裁判官だけにスポット。
裁判官 (独白)ああ・・・なんだか思ったより長くなりそうだな。
今日は帰りに子どもたちのクリスマスプレゼントも買わないといけないのに。
そういえば、34丁目のデパートがクリスマスフェアをやってたな。
そこのサンタにきけば、一緒にプレゼントを選んでくれるっていうし。
ん、ここにいるクリスが、そのサンタ・・・?ちょっと駄目じゃん、
こんなとこに居ちゃ。
照明全体を照らす。
フレッド 以上です。
裁判官 クリス無罪!
酔っぱらい ええ!!
婦人1・婦人2 (立ち上がって)私たちはサンタクロースを信じます。
酔っぱらい まてお前ら!ころころ意見をかえやがって。
いいか、よく聞け、大体サンタなんてのはな、
再び裁判官だけにスポット
裁判官 (独白)あ、そういえばこの裁判、ネットやニュースで
世界中の注目あつめてるんだった。
ここで変な判決だしたら世界中の笑いものだ。
さすがに、でサンタクロースを認めるなんて判決出したらまずいよなあ。
クリスには悪いが、ここは情に流されず、真実は真実として・・・
照明全体を照らす
酔っぱらい 以上だ。なんか文句あるか。
裁判官 クリス有罪!
フレッド ちょっと!
婦人1・婦人2 やっぱり、彼が正しいかしら・・・もうわかんなーい。
フレッド 裁判長、この裁判は世界中のこども達が見ている。
これはもうクリスだけの問題じゃない、
世界中のこども達の夢と希望がかかってるんだ。
酔っぱらい そうだ、裁判長。
とっとと結論を出しちまいな。
まさか、世界の誰もが知っている嘘を、ここで認めてしまうわけにはいかないよな。
フレッド 裁判長!
裁判官 んん・・・・
皆が裁判官に注目。
裁判官、意を決して、木槌で机をたたく
裁判官 来週につづく!
フレッド ええ!?
裁判官 判決は24日。
今日と同じ時間にこの場所で言い渡します。
最後に被告人のクリス。何か言いたいことは?
クリスにスポット
クリスゆっくりと首を横に振る。
裁判官 では、本日はこれにて閉廷!
みなそれぞれ退場する。
裁判官 フレッド、
私だってこどもたちの夢は壊したくない。
だが、ここは法廷。ここに立っている時、
私は、真実の忠実なるしもべでなくてはならないのです。
フレッド・・・夢で真実をかき消すことはできない・・・察してくれ・・・
裁判官も退場。
ドリーは立ったまま、クリスを見つめ、何と話しかけようか迷っている。
クリスゆっくりと立ち上がり去ろうとする。
思わずかけよるドリー。
ドリー クリス!
振り返るクリス
ドリー その・・・・ごめん・・・なさい。
クリス
ドリー まさか、こんなことになるなんて。
クリス ・・・・君のせいじゃない。
ドリー だけど・・・
クリス それに・・・僕は大丈夫。
平気だよ。
ドリー なんで!?だ、だって私のせいでクリスが犯罪者になるなんて・・・そんな・・
優しいクリスが・・・そんなわけないのに。
クリス だからだよ。
ドリー え?
クリス ドリーがそう思ってくれているように、
僕には、信じられる人がたくさんいる。
だから、僕は怖くない。
ドリー クリス・・・
クリス ドリー、君も同じだよ。
ドリー え・・・
クリス 君のまわりにだって、信じられる人がいるはずだ。
だから、君はもう、何も、怖がらなくたっていいんだよ。
ドリー 信じられる・・・ひと・・・
クリス じゃあ。次に会うのはクリスマスイブだ。
クリス、退場。
立ちつくすドリー。
照明フェードアウト
5場
(5-1)
一人ソファにすわり書類を眺める裁判官。
鼻歌でクリスマスソングを歌っている。
そんな自分に気がつき、急いで口をふさぎ辺りをうかがう。
こども達登場。
こども1 お父さーん、一緒に寝よー
裁判官 ちょっと待ってもう少しで仕事が終わるから。
こども2 (こども1の手を引っ張って)駄目だよ、お父さんと話したら。
こども1 え?なんで?
こども2 お父さんはサンタさんにひどいことしてるんだよ。
裁判官 おい、なにを言っているん・・
こども2 (裁判官に)僕知ってるよ。お父さん、サンタさんを悪者にして、
つかまようとしてるんでしょ。
こども1 え、サンタさん、つかまっちゃったらどうなるの。 ,
こども2 そりゃ、もうクリスマスになっても僕たちのところへは来てくれないよ。
こども1 えーそんなのいやだ・・・
お父さん、なんでそんなひどいことするの?
裁判官 え・・・いや
こども2 仕方ないよ、これがお父さんのお仕事なんだって。行こ。
こども1 お仕事?(裁判官の顔をみる)
こども2 はやく!
こども1 うん
こども達退場。その後ろ姿をみつめる裁判官。
照明フェードアウト。
(5-2)
夜。スーザンの部屋。
スーザン机にうつぶせて眠っている。
ぼんやり目を覚ますとカーテンの向こうに男性のシルエットが見える。
スーザン あれ?何しているのそんなところで
ずっと待ってたんだよ。早く入ってきて本をよんで!
え?なんで?お仕事?
結婚式の準備!?・・・ああ、そうかもうすぐお母さんと結婚するんだもんね。
じゃあ、今度からお父さんって呼ばないと。
ねえ、お父さん、明日は早く帰ってきてくれる?
ほんと?お父さんまでいなくなったりしないよね。
約束よ。まって、返事してよ、ねえ、ねえってばー!
男性のシルエットが徐々に消えていく。
部屋のあかりがつく
スーザン (あたりをみまわして)夢・・・・
カーテンの後ろから、フレッドがあらわれる
スーザン あ・・・・お・・・フレッド・・・・
来てたの・・・・
フレッド ああ、ずっとドリーと話を。
どうやったらクリスを無罪にできるのかって。
スーザン 何か良いアイデアがでた!?
フレッド、首を横に振る。
フレッド (ため息)ほんと、とんだクリスマスになっちゃったな。
スーザン ・・・・そう?
フレッド え?
スーザン 私はこんなに楽しいクリスマスは初めてよ。
ワクワクしてドキドキしてハラハラして
フレッド スーザン
スーザン 私はサンタクロースは信じてない、だけどクリスは信じてるわ。
クリス言ってたもん、信じる者は救われるって。
だから大丈夫だよね。
フレッド (ゆっくりとうなずく)そうだね。判決の日はクリスマスイブ・・・奇跡が起こる日だ・・・。
さあ、もう今日はお休み。
フレッド退場
スーザンも立ち上がるが、ふと机の上のサボテンに目を落とす。
サボテンの花を触れて、しばしクリスに思いをはせる。
思い立って、ペンと便せんを取り出し、手紙を書き始める。
スーザン んー、拝啓・・・・・サ、ン、タ、ク、ロース、様・・・・
静かな音楽。
スーザンをうっすら残して照明フェードアウト。
別のスポットでソファで頭をかかえるドリーにぼんやりと明かり。
また別のスポットで立ったまま悩むフレッド。
最後に、舞台奥で背中を見せ夜空をみあげるクリス。
それぞれの夜がふけていく。照明フェードアウト。
6場
ふたたび法廷。
中央に裁判官。
その前にクリスが立っている。
下手にフレッド、その横にドリーとスーザン
上手に酔っぱらい。その周りに街の人達数人。
裁判官 では、これより、被告人クリスに判決を言い渡します。
最後に弁護人、何か言いたいことはありますか?
フレッド あ、いや・・・・
裁判官 よろしいですか?
フレッド ま、まって。
裁判官 なんです?
フレッド その・・・・僕にはもう、出すべき証拠も話してもらう証人もいない。
酔っぱらい へ、へ、へ
フレッド だけど!・・・最後に聞いてほしい話があるんだ。
裁判官 ん?
フレッド それは、ある親子の話です。
その親子には父親がいない、母と娘の二人暮らし。
彼女たちはクリスマスもサンタクロースも信じちゃいない。
あんなものマヤカシだと思っている。
酔っぱらい その親子、正しい!
フレッド 最後まできいて。
その親子は二人ともがんばり屋で、しっかりしていて、頭も良くって、
本当に何もいうところのない親子。
だけど、僕は、彼女たちをみていたら、時々つらくなることがある。
こう胸のあたりがしめつけられるような。
ドリー フレッド・・・
フレッド でも、今年のクリスマスはちがう。
ずっと忘れていた笑顔や、夢や、ドキドキやワクワクが
彼女たちに戻ってきた。クリスのおかげでね。
だから少なくとも彼女たちにとってクリスはサンタクロースさ。
もちろんそんな彼女たちを見て幸せな気分になれた僕にとっても。
ゆっくりとクリスの前に進む
フレッド ありがとうクリス
クリス (フレッドの顔をみて、笑顔でゆっくりとうなずく)
フレッド ごめん・・・・・・力不足で。
クリス (ゆっくりと首を横に振る)
フレッド (裁判長に)そんなわけで・・・・・僕は・・・・・クリスマスを、サンタクロースを、
そして幸せをとどけてくれたクリスを、信じます。
以上で・・・・僕の最後の弁論を終わります。
ゆっくりと自分の定位置にもどるフレッド
裁判官 では、これより・・・ん?
上手から事務員が現れ
フレッドに耳打ち、フレッドが何かを伝えて退場。
裁判官 よろしいですか?ではこれより・・・
フレッド まってくれ!
裁判官 何です?
フレッド あ・・・、えっと、実はまだ、証拠がありました。
裁判官 どういうことです?
フレッド 裁判長、もう少し時間を。
裁判官 ・・・・わかりました、続けて。
フレッド、ゆっくりと前へでる。
フレッド えー、みなさん、郵便っていうのは、知ってますよね。
手紙のオモテに送りたい人の宛名を書けば、ちゃんとその人に届く。大変便利だ。
酔っぱらい 何を言ってやがんだ、突然。
フレッド この国の郵便制度ってのは、大したもので、送り間違えっていうのは
年に数えるほどしかないらしいですよ。
まあつまり、それくらい信用できるってことですな。
裁判官 フレッド、言いたいことは簡潔に。
フレッド まあまあ、そう焦らないで(上手の袖をうかがう)、ここが重要なところです。
裁判長、今述べたように郵便ってのは充分信頼がおける機関であることに
異論はないですね。
裁判官 え・・・ああ、まあ・・・それは、そうですな。
フレッド ありがとうございます。
事務員が手紙を持って登場、フレッドに手渡す
フレッド (手紙を掲げて)実は、この法廷に手紙がとどいています。
宛先はサンタクロース様。
今の話しでいけば、この手紙が間違って届いた可能性は極めて低い。
先ほど裁判長自らが認めました。
つまり、これこそ、この法廷に本物のサンタクロースがいるという
何よりの証拠になるのです。
酔っぱらい な、何をいってやがんだ。そんな手紙の1通で。
フレッド 数は関係ないでしょう。が、1通では不満というならもっとありますよ。
酔っぱらい 上等だ、全部もってきやがれってんだ。
裁判官 フレッド、1通では偶然という可能性もある。
他にも証拠があるなら全部ここへ持ってきてください。
フレッド もうあります。
そういってフレッド、裁判官のところにかけより、裁判官の法廷台をつくっているダンボールを
勢いよくもちあげると、なかから大量の手紙があふれ出る
裁判官 わー!!
酔っぱらい (手紙を次々にとりあげて)なんだ、こりゃ、
ニューヨーク、パリ、ロンドン・・・
世界中から届いてるじゃねえか・・・
フレッド 裁判長!
裁判官、手紙の山から身体を出して
裁判官 本法廷は、サンタクロース宛のこれらの手紙を、
重要な物的証拠とみとめ、
ここにクリスが本物のサンタクロースであることを認めます!
よって、クリス、無罪!!
歓声と拍手
フレッド やったー!!
ドリー、スーザンと抱き合う。
フレッド、スーザンの手をとり、喜びを分かち合う。
ドリー、手紙の束の前に進み、足下に落ちている一通を拾い上げる。
ドリー (うれしそうに宛名を読む)サンタクロース様へ
手紙を裏返し、送り主をみる
ドリー (おどろいてスーザンのほうを向き)スーザン
いそいで手紙を取り出し広げる
ドリー 拝啓、サンタクロース様・・・・
スーザン、前に進み、続きを読み上げる
スーザン 拝啓、サンタクロース様。
私はクリスマスが嫌いです。
私のお母さんはクリスマスになるといつも悲しい顔をしています。
だから、私もクリスマスを好きになるのはやめよう、そう思ってきました。
だって私までそんな顔をしたら、一体誰がお母さんの気持ちをわかってあげるの?
私は、私はだけは、いつでもお母さんの味方です。
だけど、今年は失敗しました。クリスに出会って、いろんな話をきいて
私はついついお母さんにも楽しそうにクリスマスの話をしてしまいました。
でも、それを聞いたお母さんは、今までに見たことがないような
幸せそうな顔をしていたんです。
私は一緒に悲しい顔をすることがお母さんのためだと思ってきたけど、
そうじゃないのかも知れないって、思ってきました。
私はクリスマスが嫌いです。
だけど、これから、すこしずつ好きになっていこうと思います。
追伸
クリスマスを少し好きになった記念に、私ははじめて、
サンタさんにお願いをしようと思います。
サンタさん、クリスマスにおうちをください。あとは、新しいお父さんも。
お母さんと私が、今よりももっと幸せになるようなそんな素敵な未来を
プレゼントしてください。 
スーザン・ウォーカー
ドリー (スーザンを見つめて)スーザン
スーザンにかけより、抱きしめる
ドリー ごめんね。ごめんね。
フレッド、ドリー達にちかづく。気がついて顔をあげるドリー。
ドリー あの、フレッド・・・・
フレッド ・・・・?
ドリー その・・・
フレッド え?
ドリー ・・・・かなえてあげてほしいの・・・・・
スーザンの・・・クリスマスのお願いを・・・・・
フレッド お願い?
ドリー、フレッドに手紙を差し出す。
フレッド、不思議そうに手紙をうけとり、目を通す。
フレッド (驚いて顔をあげ)ドリー・・・
恥ずかしそうにうなずくドリー。
スーザン、フレッドに小さくガッツポーズをしてみせる。
フレッド、それをみて状況を理解して、ガッツポーズ。
フレッド (スーザンの横に立って)早速やってきたよ。
スーザン え?
フレッド (自分を指さし)新しい、お父さん!
スーザン ・・・・家は?(ちょうだいポーズ)
フレッド え・・・・(困って)が、がんばるよ
スーザンとドリー、顔を見あわせて笑う。
一人、手紙の中に座り込む酔っぱらい。
酔っぱらい 結局・・・誰も俺の気持ちなんて・・・・
裁判官が小さな箱を持って近づく。
顔をあげる酔っぱらい。
裁判官が差し出す箱を怪訝そうに受け取り、中を見る。
中には手紙がはいっている。
裁判官 君のだ。
酔っぱらい え?
裁判官 世界中から届いた君を応援する手紙だ。
驚いて手紙をみつめる酔っぱらい。
裁判官 君にもたくさんの味方がいるみたいだ。
酔っぱらい はは・・・ははははは・・・・
そのまま手紙の中に仰向けにたおれる。
ドリー あれ、ねえ、クリスは?
フレッド え?
ドリーとフレッド、辺りを見回すが、クリスはいない。
スーザン (前に出てきて)今日は、クリスマスイブよ。
クリスはこれから忙しくなるんだから。
ほら。
そういって、空を指さす。
スクリーンには夜空にトナカイのそりに乗ったサンタクロースのシルエット。
フレッド (空を見上げ)え、まさか、ほんとかよ?
ドリー 奇跡ね・・・・
ドリー、フレッドの腕をとり、腕を組んで寄り添う。
皆で夜空を見上げる。
クリスマスの音楽、高らかに。
照明、ゆっくりとフェードアウト。
終劇