人面犬




飲食店でバイトしていたときのこと。夜、そろそろ店じまいの片付けでゴミ出しに裏口を開けた。すると、ゴミ箱を倒して懸命に残飯をあさっている野良犬がいる。またかよ・・と思い、追い払おうと声をかけた。

「おい、散らかすな!」

すると、その犬はこっちを振り向いた。

それは犬の体に、中年男の顔をした人面犬だった。

そいつは疲れた顔で「放っといてくれよ・・」とぼそりとつぶやくと、繁華街の闇に立ち去っていった。

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これもまた非常に有名な都市伝説の一つ。昔ブームになり、関連して人面魚やら人面グモやら取り上げられたのを覚えています。気味の悪さはもちろんですが、定番のセリフがなんだか悲壮な雰囲気をかもしだしていて強く印象に残っています。犬と一緒に死んだ人間の霊やら、遺伝子研究所から逃げ出した合成生物やら、正体は諸説あるようですが、リストラされてのたれ死んだ中年男の霊が犬に乗り移ったという説が作者のイメージにはピッタリきます。