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フラマリオンの創作予言


 日本ではあまりメジャーとはいえないが、ノストラダムスが世界の終わりを予言したとされる四行詩が存在する。この四行詩のアウトラインは、「聖金曜日(復活祭の前の金曜日)が4月23日(聖ジョージの祝日)に、復活祭(イースター)が4月25日(聖マルコの祝日)になり、聖体祝日(復活祭後の第 7日曜日である聖霊降臨祭の次の日曜日である三位一体の主日の後の木曜日)が6月24日(聖ヨハネの祝日)になる時、世界の終わりがやってくる」というものである。話がややこやしいので結論だけいうと、このような暦になるのは1666年、1734年、1886年、1943年、2038年であるという。少なくともノストラダムスが使っていたユリウス暦では起こりえず、グレゴリオ暦に替わって初めて生じうるらしい。つまり、世界が終わるという次の候補となる日付は2038年となる。

 この予言を最初に紹介したのは、フランスの著名な天文学者カミイユ・フラマリオンで『此世は如何にして終わるか』改造社出版、1923年、高瀬毅訳(原題"La fin du monde",1910) のなかに見出すことができる。四行詩のテクストは確かにフランス語ではあるが、ノストラダムスの四行詩の特徴を兼ね備えていないし、もちろん本来の予言集にも載っていない。フラマリオンの著作以前にこの四行詩が知られていないことから彼の創作としか考えられない。本の題名の上には科学小説とあり、今日でいうところのSFなのだからフラマリオンがノストラダムスの名前を使った演出をしたとしても許されるだろう。ところが、天文学者のケネス・ハウエルの『世界の終わり-科学的一論議』の25頁にノストラダムスのサンチュリ(百詩篇)としてこの詩が紹介された。しかも、この本の推薦文はかのアルベルト・アインシュタイン博士が書いていたのだ。

 こういう権威付けとともに孫引きされて、ノストラダムスの本物の作品と見なし決定的な終末予言として引用する本も少なくない。例えば、『ワルチン版大予言者』二見書房、1982年、大出健訳 の203頁には、ノストラダムスが2038年4月25日に世界の終末が訪れると予言したと紹介している。そしてこの記述は『アズ』創刊2号、新人物往来社、1987年 の志水一夫編 「世界大予言年表」にそのまま引用された。それから7年後に発表された、志水一夫編 増補改訂「世界大予言年表」『予言されたハルマゲドン』265頁)ではきちんとした調査に基づいてフラマリオンの創作でないかと改められている。フラマリオンの引用したノストラダムスの予言については、志水一夫『トンデモノストラダムス解剖学』データハウス、1998年 に詳細な解説がされているので参照されたい。

  Centurie
Quatrain créé par Flamarion
百詩篇
創作予言
1 Quand Georges Dieu crucifiera,
Que Marc le ressuscitera,
Et que St. Jean le portera,
La fin du monde arrivera.
聖ジョージの祝日に聖金曜日が重なり、
聖マルコの祝日に復活祭が当たり、
かつ聖ヨハネの祝日に聖体祝日が重なる頃、
世の終わり来たらん。
(志水一夫訳『トンデモノストラダムス解剖学』123頁)

このページの最終更新日は2005/02/26 です。

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