Les marronniers faisaient de l' ombre.

 

   きりんとすずめ

 

きみのことをまちくたびれた

ぼくはきりんになった。

ぼくはきりん

きみはすずめ

ぼくのせなかであそぶきみ

ぼくのあしもとであそぶきみ

ぼくはくびをのばしてみる。

ぼくはきりんだから

 

あいらしいきみはすずめ

きみはすずめになった

きみのほんとうのすがたは

すずめじゃなくて

ほんとうはね

○○○なんだよ。

すずめはきみのおもいこみのすがた

うつくしい○○○がきみのほんとう

 

ぼくはきりんだから

きみをまっているんだよ。

このいけのほとりで

そよかぜがふくのをまつきみとおなじように

きみをまっているんだよ。

 

 

 

   森の朝の誘い

 

鶯のソプラノが伸びやかにはじまって

わたしの足音は静かにメランコリーを

サックスブルーの空が

未完了の過去の坂道を下る私をさらっていく。

 

左の掌を上にしてご聖体をいただく

その前に思い起こすたったひとつの過去

修道院の扉を閉めて

過去から足を踏み出す

力強い色した紫陽花の葉が

未完了の過去の坂道を下る私をさらっていく。

 

薄桃色の山躑躅、深い紫の菫、

両手ポケットの手が風に触れたくなる。

麓の家並みが霧のベールをはずしていく。

そして、

未完了の過去の坂道を下る私をさらっていく。

 

 

 

   ぼくはぼくの羽で

 

ぼくはぼくの羽で翔ぶよ。

羽を何度も羽ばたかせて

思いっきり翔ぶよ。

右と左の両方の羽

今までにやった事がないくらいに

バタバタさせるんだ。

ぼくはぼくの羽で

翔ぶ。

ぼくの右足が地面を蹴ったら

ぼくの身体は

今までとは違う世界

宙に浮かぶんだ。

ぼくは

今までにやった事がないくらいに

羽をはばたかせて

今ここを飛び立つんだ。

今ならできるんだ。。

ぼくはこれまでではない力を振り絞って

飛び立つよ。

 

ぼくの羽

右と左のぼくの羽

思いっきりはばたかせて

飛び立つんだ。

ぼくが右足で地面を蹴るまでに

嵐がやってきても

太陽が壊れても

ぼくはぼくの羽で

飛び立つよ。

 

 

 

 

   雨だれ

 

水色の傘をさしたくなくて

ハンカチを頭にのせて走り出します。

今日の雨はとても素直で

真っ直ぐに降ってくれるから

都合の良い言い訳が出来ました。

「影法師を追いかけていたら雨が降ってきたの」と

 

紅茶はいつもミルクティ

そしてノンシュガー

真似っ子は雨降る山へ捨てにいきましょう。

隙間だらけになったアルバムは

その場しのぎの修正液

さぁ 窓を開けて

真似っ子に雨だれ

雨だれ子守歌

シトシト シトシト

シトシト シトシト

 

 

 

   隣人

 

だから、私はあなたの隣にいたい。

笑っているあなたの隣で笑っていたい。

あなたの笑い声を耳元で聞いていたい。

あなたは縦糸で

私は横糸

綾織りだからいつも私は隣

 

だからあなたの隣にいる

叫んでいるあなたの横顔を見る。

涙はサファイア

心の傷は木綿を絹に染め上げます。

 

鳥になったあなたの隣に

私は風になる。

 

桜草になったあなたの隣に

私は露になる。

 

だから、私はあなたの隣にいたい。

吹雪の山の中でも

クマノミのいない海の中でも

 

 

 

 

   蝸牛の夜

 

朝からの雨は未だ降り止まず

私はじっとこらえている。

こんな夜にはカンテラを持った天使に降りてきて欲しい。

遙か遠くのダイヤモンドダストのような街明かりが揺れるばかり

 

1年分の髪を切った。

短くなった髪を指ですいて

1年分の思い出を確かめた。

私は囚われの身ではなく自由のはず

それを象徴する物は何もなく

私はやっぱり蝸牛

跪いてお祈りを捧げる

 

ふいに開いてしまったメールを引き出しにしまっても

私はやっぱり蝸牛

 

 

 

 

 

   振り子時計

 

わたしは傷つかなかったの?

Tシャツの裾を引っ張って

声を出して泣いたのは夏休み最後の夜

「僕だって苦しいんだ」

すまなさそうに撫でられた髪は腰まであったけど

夏が終わって肩までで揃えたの。

 

わたしは優しくなかったの?

いつもいつもずっとずっと心配だった。

「大丈夫?」そうあなたの顔を覗き込むと

決まって微笑んでいた。

オレンジ色の水着のストラップの紐

小麦色に焼けた背中

デジカメの写真はいつまでも色褪せなくて

 

2人の想い出は振り子の中

時を刻む振り子の中

真鍮の振り子の中