Juin 2001

 

Les vendredi 29 juin 2001

 私の幸せはゆっくりとやってくる。緩やかなスピードで、幸せひとつ、またひとつ。今日の幸せ、今のこの幸せ。それはとても確かな物。


Les dimanche 24 juin 2001

 今日で仕事が終わりである。明日も職場には顔を出すつもりにしている。仮眠時間、目を閉じても一睡もできなかった。あのマザー・テレサはどんなふうにターミナルケアをしていたのだろうか。


Les vendredi 22 juin 2001

 明日の夜勤が最後である。いよいよ最後となった。死後の処置を経験することはできなかったが、死に向かう人とその家族と正面から向き合うことができた事はこれから先の私の仕事を考えると、とてもよい勉強になったと思っている。


Les jeudi 21 juin 2001

 酸素飽和度を測っていた。数値が上昇したり下がったりする。特に顔色は悪くない。上司に報告する。再度計り直す。機械が悪いのだろうかと言いながら、看護婦さんが計り直す。私は気付いた。SPO2の値と脈の値を見間違えていた。新人でもないにどうかしていた。


Les mercredi 20 juin 2001

 今日が介護支援専門員の実務研修の最終日だった。やっと、やっと終わった。今日は早く眠ろうと思う。「お疲れさまでした」と部屋を出た後、一緒にグループワークをした人に記念に修了書を胸にした写真を撮ってもらった。今日は何か美味しい物を食べようと思ってジェラードを食べた。空腹感を覚えていた私はデパートの地下で奮発してしまおうと思った物の、冷蔵庫の中を消費しなければならないと思い、帰り道を急ぐことにした。

 


Les mardi 19 juin 2001

 梅雨本番の雨である。今晩は一晩中降り続けるかも知れない。裏の崖が崩れるのだろうか。今日婦長さんにお祈りの本を頂く。メッセージカードに「心の清い人は幸いである」とあった。


Les samedi 16 juin 2001

 今日こそは、夜のうちにお風呂に入ろうと思っている。ここのところ勤務がハードでぐったり疲れてしまって、ベッドにバタンキューと眠ってしまっていた。真夜中2〜3時頃目を覚まして化粧を落として、それから2時間ぐらい眠って朝早くにシャワーを浴びていた。この睡眠パターンをここ数日続けていたが、それではどうも疲れがとれない。

 でも、今日は気分がいい。昨日のことを思い出しているからである。

 


Les vendredi 15 juin 2001

 1週間ぶりの休日だった。ここのところ勤務がハードだったので、楽しい1日だった。よく笑い、じゃれた。今は1日、1日が大切である。帰りのバスで私はバス代の小銭を握りしめているつもりだった。バスの揺れは心地よく眠りを誘って、降りるはずのバス停で目が覚めたものの、代金投入口に握りしめていた小銭を入れると120円しかない。代金の230円を持っていたつもりだったのに落としてしまったのかと思い、座っていた一番後ろの席の床を覗き込むがわからない。眠くて、本当に床に落としてしまったのかも怪しい。私は残金を払ってバスを降りた。

 バス停からトコトコ歩いて家路についた。橋の真ん中で河を覗き込む人がいる。その河には蛍が出ると聞いていた。しかし、去年は熊出没騒動があって、結局蛍を見ることが出来なかった。しかし、今夜は蛍が草むらの影をふわりふわりと富んでいた。お尻のライトをか細く光らせて自己の存在を人間の私達に知らせているようだった。


Les samedi 9 juin 2001

 「明日また来るから、それまでここで待ってて」つい本当の言葉を口にしてしまった。そしてそれは、介護、看護する側の我が儘ではないかと思えてきた。聖歌のCDはとても美しい歌声でその人を包んでくれていて、手を握りながらあともう1曲終わったら帰ろうと思う。帰ろうと立ち上がって、口の中を覗き込んで痰を見つけるとそれを取らずに入られない。そして、それを何度も繰り返す。


Les 8 vendredi juin 2001

 とても久しぶりに修道院の朝ミサに出た。その足で職場に立ち寄った。朝方に命が絶えることがよくあるそうで、その手の先はまだ暖かみを感じることができたが、呼吸はとても静かで瞼を閉じるとそのまま開かなくなるのではないかと思えた。蒸しタオルで顔を拭き、そのタオルを水道水で冷やして、点滴が血管に入らなくなってしまったために腫れた右手の甲にあてる。今、その人は神様からいっぱいいっぱい愛されているのだと思った。婦長はその人の名を呼び「マリア様と一緒にいるのね。良かったねぇ。」と言う。2日前に神父さんは呼んである。天国に行くことは喜びと分かっていても、あと1日、もうあと少しと思う気持ちを取り去ることができない。

 今日から引越の準備をする。引越は何度も経験しているものの、段ボール箱を見て、何から詰めようか迷った。これで机の上に物がなくなってきれいに片づくと思ったが、夕方になって、机の上は一段と散らかっている。

 私がこの地に引っ越した事を知った周りの人達はホッとしていた。あれから1年2ヶ月。都会の喧噪の中に10年以上住んでいた私は、引っ越したばかりの頃、素直に周りの人達の安心感に共感できなかった。静かな夜景、星空、夜に輝く十字架、鐘の音、修道院に通じる道の紫陽花、・・・・書き残しておきたい物が沢山ある。