[ 白紙の家具 ]の背景


 かつて、自分が求める側だったころ、少しいい家具がほしいな、と思って探しに出かけてもどうも素直に気に入るものがなかなか見つけられませんでした。そういう風潮だったのかもしれませんが、何だかどれも奇抜さだけを競っているような、あるいは、作り手の自己満足のためにだけ作られたような、本当に使う側のために作られたものなんてないような気がしました。

 その後、縁あって自分が作る側の立場になったとき、真っ先に掲げたテーマがそれに対する「白紙の家具」でした。[作り手の個性の排除]と[木という素材につきまとう感情論の排除]、そして、[売るためのインパクトの排除]を三つの柱としました。自分が使う側の素人の立場から抜けきれなかっただけかもしれませんが、作り手の個性云々や過美過飾の木、客騙しの売るためのインパクト、そんなものを徹底的に嫌ってきました。

 そんな中で「白紙の家具」が具体的な形になってきたわけですが、その頃は、どうも空回りしていたような気がします。求める側自体が、むしろ、自分が嫌ったものを求めていた感がありました。よく、つまらない単なる家具といわれ、しょっちゅうめげておりました。ちょうどバブルの頂点を過ぎて数年くらいの間のことです。

 さて、最近、世間の目もかなり変わってきたようです。みずき工房の「白紙の家具」のテーマも、これにあやかってほんの少しでも日の目をみれれば嬉しいんですが・・・


*関連記事が当サイトのコラムページ「No.6 木という素材」にあります。


みずき工房/西 文和