[ テーブル ]の背景


 近年の都会的な住空間の多くは、そこで生活しておられる人の個性で100%満たされているといった感じです。無色透明のものを求めて、それに自身の色を見事につけておられる方が多い。素敵なことだと思います。
 さて、そんなところに作り手の匂いがプンプンするものを持ち込むのもなんだから・・・と、いっそのことみずき工房の家具は「ゼロ個性の道具」主義でいこうと決めたのは十数年前の開房のときでした。今でも、そのスタンスは変えていませんが、特に大型家具になればなるほど、「こんなデケーもの、ゴテゴテさせてどうすんだ」とブツブツ言いながら省けるものはとことん省いています。もうそれが癖になりました。一般的に作り手の匂いのするのが「工房の家具」だとすると、みずき工房は、最初から道外しちゃった、というところでしょうか・・・。

 ところで、みずき工房の家具の中で、そんな家具作り癖が一番色濃く出てるのがテーブルです。たぶん、単純に家具の中で一番占有面積が大きいから、だと思います。このばかデカイものの中に「使いやすさ」「当り前の機能と強度」「腹八分目の存在感」、そういったものを一緒くたに納めるにはどうしたらよいのか、いつも考えてきました。その結果、後からついてきた形が今あるテーブルたちです。どれもオーソドックスで、特に目新しいものではありません。が、どれもみずき工房の考えがいっぱい詰まったものばかりです。強いていえば、2m以上の大型テーブルの制作が多かったせいか、構造的・強度的な面を考えて部材にボリュームをつけたデザインに偏っています。次は、このボリュームを省くことも今後の課題のひとつです。

 ちょっとお話が変わりますが、開房以来、作り手や木の個性というものを省いた白紙の家具を作ることばかり考えていました。が、特に木そのものについていえば、省けば省くほど「木」が出てくるということをだんだん知るようになりました。ああ、自分のやってることはコレからは逃げられないんだな、と感じ出したのは最近のことです。でも、それでもまだ省こうとしている自分がいます。願わくば、省いて省いて出てきた「木」が自然体のものでありますように・・・使い手の個性を邪魔するものでありませんように・・・。


* みずき工房のオリジナルテーブルには、この他に組立式のものが二つほどありますが、次回の EXHIBITION ON THE WEB #06 [みずき工房的タタミズム](03/10/26-11/25) で紹介させていただきます。

みずき工房/西 文和