超ひも理論と私 6

 
物語1
 
 ある晴れた日、ミヤノさんが川沿いの遊歩道を散歩していると、足元に小さな丸いものが転がっていました。
 
 ミヤノさんはそれを思わず蹴飛ばそうかと思いましたが、どうやらそれがなにやらこれから生まれるもののようでしたので、蹴飛ばすのはやめて、それを拾いあげて「このまま転がっていたら川に落ちてしまうかもしれない」と思い、傍らの茂みにそっとのせました。

 丸いものは、急に金色に光りはじめ、見る見るうちに大きくなって、やがて宇宙になって飛んでいきました。

 ミヤノさんはそれを見送ってから、また散歩に戻りました。

 実はミヤノさんは「悪い女」でした。ミヤノさんに怨みを持つ人がたくさんいました。

 それからしばらくして、ミヤノさんは悪行がたたって、恨みを持つ人の一人に殺されてしまいました。

 悪の限りを尽くしたミヤノさんの行く先は当然地獄でした。

 地獄では常に小室哲哉の楽曲が流され、ミヤノさんはそれに合わせて唄わなくてはなりません。

 ねーばえん ねえーば えん わーたしたちの みーらあい〜

 しぶしぶ沖縄サミットテーマ曲を唄っているミヤノさんの目の前に、するすると「ひも」が降りてきました。

 なんじゃこりゃ

 とミヤノさんが不審に思っていると、天から声が聞えました。

私はあのとき、あなたに助けていただいた宇宙です。おかげさまで、大きくなりました。あなた様がこちらで非業の日々を送っていると知り、助けに参りました。どうぞこの「宇宙のひも」につかまって脱出してください。

 ミヤノさんが、その「ひも」を引っ張ると、「ひも」がぴーんと張って共鳴を起こし、そこからまた宇宙が生まれました。
 
 ミヤノさんはそのまま地獄に留まり、たまに「ひも」を引っ張って遊んでいます。気が向くと生まれた宇宙に水をやったりしています。