可燃物な日々

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9月14日(水)

 昨日、映画を観にいったときに、「HEROもLOVERSも超えた」とかいう宣伝文句のポスターが貼ってあり、「ああ、また、チャン・イーモウが?」と思ったのだが、ツイ・ハーク監督らしいが、彼の映画は観たことないのでよくわかんないんだけど、でもHEROやLOVERSを出してくるところから「有名スターが出てくる武侠スペクタクルもの」ということは想像ついたので「また、あたしの好きな人が出てたら困るな」と思っていた。

 そしたら、予告編でもやっていたので、じっと眺めていたのだが、「セブンソード」って題名で「七剣」を意味するらしく、七人も出てくるので、誰が誰だかよくわからない。予告編では、役者だか役名の名前は漢字で出てたし。
 ドニー・イエンだけ、なんとか識別できたが、他に知ってる人はいなさそうな気がしたんだけど、でも、なんかひっかかったので、後でちゃんとポスターで確認してみたら、わーん、レオン・ライが出てるよー。
 時代ものコスプレしたレオン・ライをちゃんと識別できませんでした。わーん。
 しかも、予告編観ても、ちっとも面白そうに思えない映画を「しゃーねーな」とまた観にいくことになるかもしれない、自分の近未来を心に思い浮かべて、悲しい気持ちになっていたのである。

 さらに、私を悲しい気分にさせたのは、妻夫木なんとかと竹内結子の「大正時代悲恋モノ」であった。
 行定監督で、予告編的には完全に「世界の中心で愛を叫ぶ」で悲恋モノに味をしめた人向け。
 しかし、このストーリー展開って、もしや?と思っていたら、やっぱし「原作 三島由紀夫」で「豊穣の海」でござんした。ミッチーが宮様役なのは、ちょっとラブリーであったが・・・・
 うーん、三島作品を月9なキャスティングで映画化とは。

 とは言え、実は「豊穣の海」は、最初のこの話しか読んだことがない。4部作からなる輪廻転生の物語らしいとわかって、「なんか、タルいな〜」と思って投げ出したのである。
 私が映画化を希望していたのは、「禁色」である。
 この小説に関しては、読んだ理由がすでにヨコシマで、「戦場のメリークリスマス」の主題歌を坂本龍一がデヴィッド・シルビアンに歌わせてシングルカットしたときのタイトルが「禁じられた色彩」で、インテリパンク小僧だったらシルビアン君は、その題名を「ミシマの小説からとった」というので、シルビアン信者の私も追っかけてみました。

 そしたらもー、お耽美路線まっしぐらで、大喜びしたのだが、頭の中をゴージャスな映像がグルグルしたので「これは是非、映画化してほしい」と思ったのだ。
 監督はもちろん、ヴィスコンティであろう。で、主演はヘルムート・バーガーでいいや。きっと、シルヴァーナ・マンガーノも出てくれるであろう。
 すげええ、みてえええ、と小説を読みながら、一人で勝手に悶えていたのであった。
 しかし、残念ながら、私がその企画を思いついたときに、ヴィスコンティ監督はとっくに故人でした。

 最近になって、三島がお遊びで「映画化するなら、こんなキャストがいいな」って書いた文書が発見されたというニュースがありましたが、ほとんど知らない役者ばっかでした。

 さて、今日もバリバリ仕事してましたが(自分比)、夕方、ハイジが私のそばにやってきてボソリと「結局、席替えってどうすんすか?」って言ってきたので「げ、部長が、なんか言ってた?」

 部長には、そう言われていたのだが、しばらく様子を見ることにして、ハイジにもその事情をバラしておいたのである。味方につけておきたかったので。
 「この間、言われました。『で、席はこのまんまなの?』って」
 「ひーーーーーーー」(机に突っ伏して、悲しみを大袈裟に表現)
 「で、雰囲気としては『このままなわけがないよね?』ってかんじだった」
 「あーーー、もーいやーーーーーー!」

 しかし、やはり部長の決意は固いようだ。
 今日も、自分のところに来た郵便物をみて「これ、なんだろう?ちょっと開けてみて?」ってSさんに渡して、Sさんが「○○という会社の移転の案内でした」と言ったら、「じゃあ、これをM部長と・・・・K部長にコピーして渡して、原本は経理で保管しておいて」
 だってさ。

 「秘書付き役員ごっこ」がしたいらしい。
 郵便くらい自分であけようよー。その後で、ああしろ、こうしろっていうのはいいけどさあ。
 社長だって、自分で開けてるんだよ。

 それはいいとして(まだ、そのことに関してはSさんは疑問を抱いてないらしい)、座席配置の問題だ。
 Sさんを部長のそばに置くと、どうしても後ろを人が通る配置になり、Sさんは、口でも「嫌だ」と言っていたが、私の観察によると、自分に用の無い人が自分に近寄ってくるのが気になってしょうがない性質らしい。ましてや、背後から来られると、本当に嫌みたい。
 仕事なんだから、我慢しろ、という言い方もできるが、でも、それがどうしても必要なことならしょうがないけど、部長の個人的な趣味(セクハラではないんだけど)だと、わかっているだけに、私もできるだけそうしたくない。

 それにしても、中学生じゃあるまいし、なんで毎回、席替えで悩まないといけないのか、理解しがたい。
 スペースが限られたオフィスなのに、けっこう頻繁に部署移動があるので、私もずいぶんいろいろ席を移動した。まあ、家の引越しと同じように、引越しすると荷物の整理にもなるので、いいこともあるのだが、あまりにも頻繁だと、ほんとに億劫になる。

 普通の会社だと、座席レイアウトはだいたい固定で、人事異動で人が移動していくんだろうけど、うちの場合は部署ごとフロアを移動したり、フロア内でもいろいろ移動したりで、ほんと落ち着かないのだ。狭いからしょうがないんだけどさ。

 でも、レイアウトを決めようとしても、そう簡単にできないので、気持ちに余裕がないと無理。
 今は、経理の戦力が減ったばかりで、新人に仕事を教えながらやっているので、私もハイジも、目一杯なのだ。先日の送別会でも、ハイジに「私とA君の最大の目標は、ちゃんと休みを消化することだ!」と宣言したくらい。

 まあ、逃げててもしょうがないので、ハイジとウダウダ相談していたのだが、ハイジも「替えるっていっても、どうします?」って言うし、私も全くのノープランなので「じゃあ、いっそのこと、総務部4人でレイアウト案を出し合ってプレゼンでもするか?」と言ったら、冗談が通じたらしく、ハイジは私を哀れみの目で見つつ、「いいんじゃないっすか?」

 今まで、異動の希望を出したことはないが、今日ほど他部署に異動したいと思ったことはない。
 つーか、網走営業所とかに行きたくなった。(そんなの無いけど)
9月13日(火)

 昨日は会社でまた鬱々としていたのだが、「このままじゃ、アカン」と思って、今日は自分なりに精一杯攻撃した。猫ぱんちを2発くらいカマしたら、相手も犬カキ程度に反撃してきたけど、不機嫌そうで、それで終わり・・・・・かと、思って「ああ、もう朝から疲れてしまった」と、やっぱし忍耐で行こうと思った瞬間、壊れた時計がユリ・ゲラーさんの超能力で目覚めたように、急に相手が活性化!

 ううう、いくら優しく言いきかせても、全然やってくれなかったのに・・・・・私があのくらいテンション上げないとダメなのね・・・・・やっぱし「つべこべ言わずに、さっさと宿題しろーー」と怒鳴るべきなのね・・・・・

 そんなわけで、よかったんだか悪かったんだか、釈然としない気分でいっぱいだったので、気分転換に帰りに映画を観ることにした。でも、そんなに観たい映画もやってなくて、ついうっかり、アレを観てしまったのだが、8時50分開始で、予告編も長いので実際には9時5分くらいから上映してたんだと思うけど、「うあ、なんか思ったよりツマんねーぞ」と思って、時計を観たら、まだ9時半。「げげ、あと1時間半もあるの?でも、中盤になったら話が動くのかも」と我慢していたのだが、「ふー、辛いなあ」と思って時計を見たら、やっと10時だった。

 その後は「まだ、話が動かんのか」と、10分おきに時計を見てしまい、つまらん講義を我慢して聴いている学生のような気分であった。
 あんなに「ああ、家でDVDで観てたら、早送りして30分で駆け抜けたな」って映画も久々に観たような気がする。
 そんなに期待していたわけでもないが、「まあまあの2時間ドラマくらいの暇つぶしにはなるだろう」程度には期待していたので、まさかあんな拷問を受けることになるとは思わなかった。しかも「せめて、最後のオチだけでも・・・」と我慢していたのに、「え?そんなことのために、主人公はこんなオオゴトに巻き込まれたのか?」というオチだったんだけど、ワタクシ的には「え?こんなオチを観るために、最後まで観てたの?」と、主人公の脱力感がリアルに体験できたので、ある意味、すごい映画だったのかもしれない。

 あまりにもダメだったので、逆に何がどうダメだったのかもよくわからなくなっていたが、トリビアでお馴染みの八嶋君の弁護士役がちょっと観てみたかったのと、佐野史郎の検事役もちょっと観てみたかっただけだったんす。

 でも、あのシリーズをちゃんと観てないので、各キャラの設定がよくわかってないので、いったい影で何やったのか全然わかんなかったし、そもそも、なんで八嶋君が出てきて、なんで最後には負けたのかも、さっぱりわからなかったんですが、それは私の理解力が低いせいだったのか、さっぱりわからんかった。
 それとも、ノベライズを売るために(あるのかどうか知らんが)、わざとわかりにくくしてるのかな?

 「コーカク機動隊のコーカクってどんな漢字だったっけ?」というピュアな状態で観にいって、「ショーサって誰?」と思いながら観た「イノセンス」のほうが、まだ理解できたんだけどなあ。

 やっぱ、SW3も観ないほうがいいのかもしれない。4しか観たことないのに、いきなり3を観るとどうなるんだろう?という実験をしてみたかったんだが。
9月12日(月)

 また日記さぼってしまったが、土曜日は、目が覚めたら立派な二日酔いで、暑いしダルいしで、午後までゴロゴロしてから、夕方は下北でS君と「とぶさかな」飲んだ。
 ヤツはまた20分も遅刻してきやがった。

 そんで、けっこう日本酒を飲んでから、店を替えてビールを1パイントと、あとなんか飲んで、すっかり酔っ払ったので、ついうっかりカフェのテラス席なんかに座ってお茶してしまったことよ。彼もかなり酔っ払っていたようで、来たばかりの飲み物を倒してしまったのだが、二人して「ま、いっか」と笑っていたのであった。
 店員も全然気がつかないでやんの。ダメな客であったが、店もダメでしたね(笑)。

 家に帰ったら、ちょうど11時前だったので、「オールイン」に間に合ったが、もうかなりラストに迫っているというのに、なんでちっとも盛り上がらないの?
 映画館で「ビョン様のビョン様によるビョン様のためのビョン様映画」を観てしまった後では、このドラマのビョン様の使い方が、もったいなくて情けなくなる。
 資源のムダ使いは嫌いだ。
 ビョン様を立たせておけば、なんとかなると思っているのかも。違うのよ、ちゃんと動かさないとダメなんです。キアヌみたいに、ボーっとたたせておけば、なんとなく絵になる資源じゃないんですよ。

 さて、そんなわけで、日曜日も目が覚めたら二日酔いであった。
 それでもお昼ごろには起きたのだが、天気が悪そうで「洗濯どうしよう?」&「選挙どうしよう?」と思いながらウダウダしているうちに、ドーーーーーっと夕立。派手に落雷している。

 ああ、投票率が・・・・・と、心配になる。
 しかし、雨は1時間くらいでやんだので、やっと3時ごろ外出することができた。
 前回のなんかの選挙のときに、一日中立ち仕事だったのに、帰りにちゃんと投票しようと思ったら、投票所が変わっていて、地図もわかり難く、いったいどの辺なのかよくわからなかったし、うろうろと探す気力もなかったので「これは、公○党の陰謀かも」と思ったのだが、今回はちゃんとたどり着くことができた。

 でも、やっぱし、普段は絶対に通らないところにポツネンとあり、「たぶん、この道だろう」と思って歩いていても、全く案内もなかったので、だんだん不安になってきたのだが、やっと発見した。
 しかし、ほんとに、なんでこんなにわかり難いところに投票所をつくるんだろう?
 選挙区内に均等に置かないといけないとか、そういう問題なんだろうか?
 だって、距離的には近いのかもしれないけど、精神的な距離としては駅前にしてくれたほうが、どうせ日曜だし、買い物に出かけるだから、そっちのほうが「ついで」としてはいいと思うんだけどなあ。

 駅前に適当な場所が無いのならしょうがないけど、市役所の支所とか、区民センターとかあるんですよ。
 多少、手狭で、たとえ少し並んだって構わないじゃん。それに、行列ができてるほうが、みんな行きたくなると思うんですよ。
 投票に行くと、いつも思うんだが、係員が皆、待ち構えるように対応してくれて、さっさと投票権を受け取り、さっさと投票箱に入れて、次は比例区、次は裁判官のやつ、って感じに、あまりにもスムーズに行くので、逆に「たらい回しにされてる」ような気分になるのだ。

 スーパーでも、誰もレジに並んでないと、なんか寂しいじゃん。前の人が、ちゅうどレジ中くらいが、お財布出したりする時間も丁度いいのだ。誰もいないと、ポイントカードを出すのに慌てたりするし。

 しかも、投票所はいつも、客よりも監視員(っていうのか?)のほうが人数が多いので、それも異様だ。
 客よりも店員の数が多い店なんて流行らないよ。
 なので、本当に投票率を伸ばしたいのだったが、「流行る店」の手法をもっと取り入れたほうがいいと思うんだけどな。だから、やっぱし、「住宅街の奥にある個人保育園」とか、「公園管理事務所」なんかを投票所にしてるってことは、「なるべく皆に来てほしくない」という意思表示をヒシヒシと感じるのである。

 今回、初めて出口調査がいました。前に一度だけ、期日前投票に行ったときに捕まったことがあるが、選挙日に会ったのは初めて。朝日新聞でした。口頭じゃなくて、簡単なアンケート方式だった。

 さて、昨日の日曜日は、ロクに速報も観ずにいたので、朝起きてから結果を知った。
 あまり、これと言った感想もないが、でも、高校の授業で「選挙制度とは?」ってやるときには、いい教材になるんじゃないかな?参議院の意味って何よ?とか考えるのによさそう。
 あと、自民党が関東で比例のリストが足りなかったとか・・・・・
 へえ、そんなこともあるのか、と思ったが、違う政党の人が繰り上げになる法律だったなんて、初めて知った。それでいいのか?つーか、保坂展人って、前はうちの選挙区から出ていたので、なんか複雑な気分である。

 そういえば、今日はハイジが誰かと選挙の話をしていたのだが、「いきなり、裁判官がどうのっていうのが出てきたけど、あれって何?」とか話していたので、横から「あんた、そりゃいかんよ」と口を挟んでしまいました。
 よくそれで、国立大学の試験に受かったなあ。
 「つーか、あんた、初めての選挙だったの?」って言ったら、口よどんでいたけど、「でも、裁判官の名前なんて、誰が誰だかわからないじゃん?」とか言うので、「その気になれば、ちゃんと新聞に載ってるよーーーー」「あ?そうなんだ?」

 ハイジは一般常識もある頭のいい青年だと思っていたが・・・・・とほほ。思わず「そういう話を人前でするとみっともないからやめなさい」って言ってしまったわ。
 私が単に「頭のいい友人」に恵まれていただけなんだろうか?けっこう、あれは酒飲み話でも出てきたんだけどなあ。「なーんか、意味もなく、印つけたくなるんだよね」って。

 ハイジと話していた女の子も、その程度の「常識」はもっていたようで「いつも、一番右側の人が、点が高くなるらしいよ」と話していた。
 前に、友人が「たまにはアレをちゃんと真剣にやりたい」と思って、新聞に載っていた裁判官たちの紹介を読んでみたのだが「代表的な判決で、あんましピンと来るものがなくて」と言っていたけど、なぜか「愛読書」も載っていたらしく「それが、3人くらい同じ本を選んでるの」
 塩野七生の「ローマ人の物語」だったらしい。
 私も友人も、塩野七生にあまり興味がなかったのだが、友人は「なんだろう?法曹界で話題の本なんだろうか?ちょっと読んでみようか」と興味を示していた。私も一巻だけ読んでみたのだが、あんましノレなくて、半分くらいで挫折した。

 私が記憶にあるのは、久米宏がニュースステーションでアレを持ち上げていたときで、番組内でも各裁判官の紹介をしていた。そんときに、代表的な判決が「メープルソープ写真集わいせつ裁判」だった人がいたので、私はその人の欄に「花丸」を書きたくなる衝動を押さえるのが大変だった。だって、○しちゃうと「こいつを罷免しろ」ってことになっちゃうんでしょ?

 でも、あの判決のおかげで、メープルソープの日本での知名度が一気に上昇したので、「よくやった」と思っていたんですよ。「頭の堅いオヤジ」って必要でしょう。そうじゃないと、深夜テレビのお色気合戦みたく、どんどんエスカレートしちゃって、「いくらなんでも、テレビでここまで・・・・」と観てるほうも思うし、作っているほうも限界が見えてきて困ると思うので、たまに「けしからんっ」とリセットしてもらって、そんで、しばらくするとまた「このくらいいいかも?」とチラリとやると人気が出て、またエスカレートして・・・・の繰り返しってわけだ。

 そういえば、朝のワイドショーは「ゆりこちゃん」のインタビューで始まったけど、ホリエモンも出てたな。
 馬は勝ったそうで。
 そんで、笑ってしまったのは、「とくダネ」では公示前にもホリエモンの生中継インタビューしてたんだけど、みんなして寄ってたかってイジめて、ホリエモンがムキになったら「時間ですので」と勝手にフェイドアウトするという「フジテレビの恨みか?」って内容だったのに、負けたとなったら、みんな急に優しいの。
 まあ、たしかに、オズラ氏も言っていたが「前よりも、今日のほうが肩の力が抜けて、いい顔してる」というのは、私もそう思った。
 今朝の雰囲気を自在にコントロールできるようになれば(キメの会見で出せれば)・・・・・なんと言っていいのかわからないが、なんか今後もいいことあるかも。

 人を味方にするオーラってなんかあるよな。「がんばったな」って声かけたくなるような。
 逆にあのホリエモンが瞬間的にせよ、それができたというのに、岡田代表はまだまだのようです。しばらく演劇学校にでも通ったほうがいいのでは?
 政治家としてはどうなのか知らんけど「テレビに出てくる人」としては、圧倒的に行間がない。
 あれでは、行間だけで勝負している小泉さんに負けるに決まっている。

 もちろん、今回の選挙は役者としての格の違いでこうなったわけでもないけど、でも、次に繋げるためには、せっかくの見せ場であった「敗北宣言」をもっと上手くやってほしかったなあ。
 あれが手本というわけでもないけど「加藤の乱」みたく派手にやっておいたほうがいいと思うぞ。あんときは失笑モノだったけど「なんか、すごいものを見せてもらったな」感は、けっこう残るもん。
 オジサンたちが、オジサン雑誌の「戦国武将に学ぶ経営術」をマジで読んでいるらしいという衝撃の事実もわかったし。(女性ファッション誌の「スーパーモデルに学ぶカジュアル術」程度のもんかと思ってました。OLさんは、オフィスラブでゲットしたエリート男性を後輩に略奪されて、ロッカーで「もう会社やめる」と泣いていても、同僚が「だめよ、だってあなたは、うちの部のヤスミンじゃない!」って言わないですよね)

 さて、今日も会社でちょっとムシャクシャしたのだが、明日も負けずにがんばろー
9月9日(金)

●ラベルの違い

 友達にこう言われてしまいまいした。

 「あなたは私のレベルまで上がってこられない。私はあなたのレベルまで降りられない」

 シビれた。
 押井守作品のキャラになったみたい。

 じーーーーーん。(シビれを堪能中)

 で、午前2時にかかってきた電話は、向こうが3時にガチャンと切ってしまったのである。じーーーーん。

 なんだかよくわかんないが、とりあえず私は感動してます。
 「のんちゃん。もっと人とちゃんと付き合いなさい」
 って言われちゃったよ。

 鋭いね。
 じーーーーん。
 その通りですよ。

 としか、いいようがない。

 つーか、送別会の二次会でカラオケしてタクシーで帰ってきた後に、そんなこと言われてもさ。
9月8日(木)

 昨日は、ビョン様光線を一日中浴びて、リフレッシュしたつもりだったし、朝起きたときも、けっこうすっきりしてたんだけど、会社に着いたら、またドヨーンとなってしまった。
 うーん、これって、私が「環境の変化に慣れない」ってせいで、ここんとこ調子を崩してるだけじゃなくて、会社の空気自体が妙なのかもしれんなあ。

 あまりそういうのに敏感じゃないはずなんだけど、なんなんだろう?
 でも、私のそういう勘はあんまし当てにならないんだけど。

 そんなことをぼんやり考えながら、休み明けだから机の上に溜まった書類を整理していたら、部長宛てに「至急連絡がほしい」という派遣会社からの電話をSさんがとって「どうしましょう?」と言うが、部長は接待ゴルフだし、ほんとに至急だったら携帯で連絡することもできるが、でも「派遣会社から至急の電話」っていうのは、だいたい想像がつくので、私が替わりに応対したら、やっぱし派遣社員が辞めるという話しであった。 

 他部署の派遣社員だから、私には直接関係がないのだが、「妙な雰囲気」に慣れようと、自分をチューニングしていた最中だったから、ボキっと折れてしまった。
 どのくらいボキっと折れたかというと「ああ、ビョン様が全員射殺してくれないかなあ」と10分くらい空想にふけった程度。
 目の前に拳銃があったら、3人くらい頭をブチ抜いていたかも。

 そんなわけで、心の体勢を整えるのに、2時間くらいかかってしまった。
 そういうときに限って、隣でSさんがチラチラと私に目線を送り、それが「暇なんですけど、今日はなんかないんでしょうか?」っていうモールス信号に思えて、うざかった。まあ、それは多分、妄想や考えすぎではなく「現実」なんだろうけど、自分がへたっているときに、他人の面倒まで見れないというか、自分を立て直さないとどうしようもない。

 お昼にお弁当を食べながら、ネットで「甘い人生」の映画評を検索してみた。
 にゃるほど、ああいうのは「フィルム・ノワールみたい」って言うのね。アラン・ドロンの映画と似てると語っている人が多かった。
 ふーん?
 そういや、アラン・ドロンのそういう映画ってほとんど観たことがないなあ。

 私の幼少のころは「海外で一番有名な俳優」っていったらアラン・ドロンだった。
 「女性をとりこにする美男俳優」の代名詞であった。
 銀座あたりの映画館がリニューアルして話題になったとき、パウダールームが拡張されたとかで、「女性は、アラン・ドロンの映画を観る前には、化粧直しをするから」っていう理由が述べられていたような記憶がある。

 でも、私が映画館に行くような年になったころは、アラン・ドロンの映画なんて上映してなかった。アメリカの超大作が主流で、欧州映画は「ゲージツ作品」になっていた。
 中学校のときだったか、テレビで「黒いチューリップ」をやってて、それがちゃんとまともに観たアラン・ドロンの映画だったかもしれない。でも、あんまし面白くなかったし、アラン・ドロンはたしかに二枚目であったが、ちょっと暗めの印象で、大スターってかんじもしなかったし、そもそも映画の出来もイマイチだったんだと思う。

 私が「これが、アラン・ドロンか!」と初めてわかったのは、大学のときに授業をサボって観にいった名画座でのビスコンティ特集である。「山猫」のアラン・ドロンは、たしかに輝いていたし、「若者たちのすべて」のドロンも信じられないほど美しかった。

 そんなことをぼんやり考えていたら、午後にはかなり気分がよくなった。
 なので、午後にはSさんにも仕事を渡すことができて、テキパキ指示することができたと思う。

 無理やり頑張ったので、夕方、久々に目の痛みがきてしまった。仕事が変に忙しいと、目がストライキを起こすのである。なので、あまり残業しないで、さっさと引き上げたのだが、会社を出ると、目の痛みはすっきり消えたので、やはり心理的なものなんだろう。

 うーむ、しかし、来週からクララはいないし、あっちの派遣社員も替わるのか・・・・
 その他モロモロ、微小になにか水面下でうごめいているモノがあるようで、それらが、全体的にもニョもニョ動いたあと、ビシっとまた枠に収まるものなのか、それともしばらく蠢いているのか、もしくは、さらにバランスを崩してしまうのか・・・・・まあ、崩壊まではいかないと思うけど、いつになったら落ち着いた気分で仕事できるのだろうか?

 鼻の頭にできたニキビが気になるけど、まだ表面に吹き出してこないから、なんともできないもどかしさと似たような気配に、飼い犬のように怯えてるオフィス・ライフもちょっとシンドい。

 さらに、微妙にダウナーなもんだから、今日発売のヤングユーのハチクロで、先月も登場した森田・父がステキすぎで、かなり癒されてしまう自分もなんだが、でも森田・兄のカオル君の幼少時代もいいなあ、なんて思いつつ、また自分を持ち上げていたのに、「ハチクロ映画化」のニュースにまたズゴっと落ちてしまった。
9月7日(水)

●ビョン様漬けの一日

 頑張ってる自分にご褒美。ちゅーか、グズってるガキに飴玉を・・・・っていうほうが近いか。

 しかし、朝起きて、ゴロゴロしていたのだが、風の音がうるさくて二度寝できず、「そういや、台風はどうなった?」と思ってテレビをつけたら、天気予報は探せなかったが、代わりに朝っぱらからビョン様ドラマをやっていることに気がついた。

 あ、そーいえば、今日は休みだったから、昨日もテレビつけっぱでうたた寝していたら、目が覚めたら2時過ぎで、なんかアニメやってたんだけど、ろくに画面を観てなかったのだが、「ショーサ」と呼ばれているのが女性だったので「こ、これはもしや」と思って起き上がって観たので、やっとクサナギモトコというのがどんな顔だったのかわかりました。

 話は戻るが、「美しい彼女」というのをやっていたのだが、ビョン様が期待されてるボクサーだけど下町育ちの孤児で、相手役は院長の娘のたぶん女医さんで、若くして夫を亡くした2児の母。
 彼女の父親は、そんなチンピラと付き合うのは当然反対してて、他の男と婚約させようとするが、今日のラストでは「私たち結婚します」という展開になっていた。
 うーむ、面白いのかどうなのか、一回観ただけじゃわからんのだが、こんな時間に放送していたのでは(11時前後だった)普通は観れないから、ま、いっか。

 そんなわけで、外は風が強かったし、昼過ぎには雨も激しく降っていたので「外出面倒だな」と思ったのだが、朝からビョン様を見せられて、「これは背中を押されているのかも」と思ったのだが、「じゃあ、そろそろ出かけるか」と支度しながら「ごきげんよう」を観ていたら、美川憲一がビョン様とパーティーで会ったことがあり、それを知った、うつみみどりに「私も誘え」と熱烈ラブコールされたという話に、同じくゲストだった「かしまし娘」の長女の師匠も「私も行く!」と大騒ぎ、っていうのをやっていて、「ああ、やっぱし、今日はなんとしてでも、映画を観にいかなくちゃ」と思ったのであった。

 昼食を食べてから、3時からの回に入ったのだが、丁度、前の回が終ったところで、オバサマがゾロゾロと出てきたし、トイレも行列していた。
 「ああ、やっぱし、さすがビョン様。平日のこんなショボい映画館に、こんなにオバサマを集めるとは」と嘆いたが、でも、さすがオバサマ方。午前中から観ていたらしく、3時の回からは空いていた。(二本立てで、11時、1時、3時、5時・・・・だったのだ)

●「甘い人生」

 一度、劇場まで足を運んだが、混雑していたので、「やっぱやめた」と踵を返した、恨みのある作品である。
 テレビでもかなり宣伝していたが、アクション・バイオレンスもので、ビョン様はヤクザの子分ってくらいの前情報しかなかった。

 さすがに、来日してプロモしていたビョン様も(「ビョン様」連発してますが、「イ・ビョンホン」って打つよりもラクなのですいません)「自信作」と語っていたけど、ほんとになかなかよいではないか。
 スタイリッシュに背広でキメたビョン様が、ゴージャスな一流ホテルの中を右往左往するだけでも、絵になるのである。展開もスピーディだし、急にガガガと暴力的になるあたりの撮り方が効いていて、だんだん追い詰められていくかんじがノレる。

 しかし、「おしゃれなヤクザもの」だったのは前半までで、後半はもー、なんかタランティーノ風全開でございました。
 2つ席を空けた横に座っていた60歳くらいのオバサンが、ときおり「ふーーーー」と溜息をついていたので、心配になってきた。「冬ソナ」から入って、ヨン様を経てビョン様にたどり着いたオバサンたちに、こんな映画みせてもいいんだろうか?たぶん、彼女らは、香港マフィア映画も、タランティーノ映画も観たことないと思うぞ。「ゴッド・ファーザー」が限界だろう。

 かくいう私も、あんまし「男受けする映画」は観たことがなくて、「バイオレンスな映画」っていうと、ゴダール作品だったりする「おシャレ系」なんである。「キル・ビル」で思いっきり引いちゃったし(笑)
 香港映画も銃でドンパチやるのは、ほとんど観たことがない。だって「おシャレ系」だから、香港映画ってゆったら、やっぱしウォン・カーウェイよね(笑)
 「無間道」だって、「トニー出るから、しゃーねーな」ってだけだったし。

 なので、後半はずっと「ビョン様血みどろ状態」にゼーゼー言いながら観てました。
 でも、やっぱり、後から考えてみると、やっぱりタランティーノだったな。だいたい、ストーリー自体は大したことなくて、そもそも、なんでこんなオオゴトになったかというと、けっこうクダらないことで、そのあたりも「キル・ビル」っぽかったんだけど、ボスのちょっとした嫉妬心がってあたりと、あと、「生き埋め」も登場したし。

 まあ、ドカスカと人を殴ったあとに、またビシっとスーツで決めてクールに立ち去るビョン様はよかったよ。
 そんで、「無間道」でもハイライト・シーンだったけど、銃口を相手の頭に向ける姿は、「甘い人生」でもやっていた。あれって、西洋人より東洋人のほうが似合うのね。腕が適度に短いほうが、絵としてバランスがいいみたい。

 そんで、チョイ役でも、若手はけっこうイケメンを揃えていたので、「韓国、まだまだ層が厚そう」と期待させた。

 韓国映画っていうのも、ほとんど観てないのだが、やっと「これは日本は余裕で負けてるわ」というのに出会った。セリフじゃなくて絵で見せてるし、緩急のつけかたもバツグンだったし、伏線の張り方も西洋的だったし、で、ある意味、「痛快復讐もの」なんだけど、ハッピーエンドにしないあたりもいいし、主人公が不死身ってあたりの「ありえねー」のは、問題にならないわけで、で、なんだかわかんないけど「で、次はどうなるの?」とドキドキしてしまいました。極上のフィクションだったし、ところどころに、「あ、きっと、あの映画の影響受けたんだな」っていう、「いい映画の、いいシーンをちゃんとわかっている人」が作ったような知的なかんじ・・・・あ、そうか、だからゴダールのことを思い出したんだ。B級映画のポイントをあの人は変にパクたんだし、おサレな私は、ゴダール経由で、ドンパチ映画を知っているわけで、「甘い人生」は、それをさらに発展させたような香りがしたのである。

 ビョン様がリンチを受けて、血みどろで意識を取り戻したら、掃除のオバサンが、血だまりをモップで平然と拭いていたのですが、あれって、ゴダールの「カルメンという名の女」で私が一番、印象に残ったシーンの真似なのか、それとも、さらに元ネタがあるのか・・・・・
 結局、ある意味、よくできた「サンプリング」だったのかもしれない。ビョン様が、バシっとケータイで電話するシーンとか、「CMかよ!」って笑いそうになっちゃったし。

●「バンジージャンプをする」

 日本で公開されたときには、主演女優が自殺したニュースで盛り上がってましたが、この映画の評価自体は「けっこうビミョー」というのをちらほら見かけたくらいで、私も予告編は観たが「学生時代に知り合った二人が・・・・」ってだけしかわからなくて、どうやらチンタラした悲恋モノらしいとは想像していたのだが、前半は80年代の学生時代の恋愛劇で、たぶん、日本の70年代とか60年代と似た雰囲気なのかなあ。

 問題は後半で、「たしかに、これはビミョー」としか言いようがない。
 なんか、この展開って、前にも三茶の二本立て落ちしたときに観た「純愛中毒」と似てないか?

 ひょっとして、あれと同じで、変なサイコサスペンスになったりするオチなんだろうか?
 と身構えていたのだが、でも、なんか、そういう展開にもならず、なんかこれって、日本の少女漫画でもよくある設定なのでは?

 でも、「少女漫画だと、ありそー」な話であったが、日本はけっこう保守的なので、映画やテレビでは、ここまでやんないだろう。ヤバすぎる。
 でも、私はずっと声高に言ってきたが、「現代の日本を舞台にしたら、悲恋モノなんて作れない」わけで、韓流が流行る理由は、「親の反対」とか「身分違い」という古典的な障害がまだ有効だからだ。

 なので「日本のドラマで、悲恋モノやりたかったら、このくらいやらなきゃ」と私が一人呟いていた設定を「バンジージャンプをする」は楽々とクリアしてしまったのである。やられたぜ。日本も頑張んないとな。

 でも、「純愛中毒」とのときにも思ったのだが、こういうのは、ラブコメ路線をベースにやったほうが効果的だと思うのだが、韓国人ったら、そういう逃げ道を考えないようで、マジメにド・シリアスでやるので、観てて疲れるんざますが、でも、結局、この映画の核は、「かなわぬ恋に悩むビョン様の切ない目つき」であって、たぶん、そこを中心に企画されてると思うので、スタッフが膝を寄せながら「彼の切ない表情を引き出す設定」を考え抜いたときに、私みたいなヤツがいて「それは、やっぱし、このくらいやらないと!」っていうのは、日本だと完璧に無視されたが(テレビ番組制作会社にいた当時、酒飲み話でよくこういう企画を披露したのだが、誰も相手にしてくれなかった)韓国だと通ったのね。

 でも、そこまで発案した人は、ぜったいに「それで、ラブシーンとか、できればベッドシーンもあると、その後の悲劇が引き立ちます」くらい言ったはずだが、さすがの韓国もそれはダメだったらしい。ちぇっ
 あそこまでやったんだから、いーじゃん、いーじゃん。

 かなりネタばれしてますが、さらにネタばれなので、DVDなどで観る予定の人は、この先はご遠慮いただきたいのですが、




 いくら、初恋の人の生まれ変わりでも、やっぱし、いざとなったら「男だとダメだ」っていう、苦悩するビョン様の演技がないと、ラストの悲劇に繋がらないじゃないですか。
 そこまでやってくれたら、前半の「なんじゃこりゃ?」な、退屈な「80年代の青春」も我慢できたと思うのですが・・・・・

 だって、あたし、てっきり「年の差もあるモーホのカップルが生活できる場」を求めて、外国に行ったのかと思っていたのに。(号泣)
 サンフランシスコあたりで、仲良く暮らせばよかったじゃん。くすん。

 ま、そんなわけで、ビョン様漬けの一日は終りました。
9月6日(火)

 昨日は無事に(12時前にって意味)「航路」を読み終えたのだが、コニー先生の呪いなのか、今日は昨日よりさらにドタバタしてしまい、久々に自分を見失いそうになった。
 会社ビルのとある部分に故障が出たので、午前中に修理依頼を施工した建築会社に出したのだが、午後になっても連絡がないまま「修理業者が来たらよろしくね」と言って、桜木町まで外出。用事は2時間で済んだので、夕方5時前には戻ったのだが、「まだ壊れてる〜〜〜」と思って、留守だったクララに「修理の人来なかったの?」と聞いたら「ああ、そういえば来ませんでした」

 ぎゃーーーーー、それだったら、業者の連絡先をクララに残して「午後になっても来なかったら、ここに連絡するように」って言っておけばよかった。
 あれが直らないと、ビルを施錠して無人にできないのよーーーーーー。
 要するに、最後に帰る人が「帰れない」ってことだ。
 最悪、セキュリティかけないまま無人にすることになる。

 思いっきり不機嫌になり、慌てて業者に電話したら「修理業者にまだ連絡がつかなくて」

 きぃぃぃぃぃぃぃっとなったが、でも、朝の電話で「大至急」とガナらなかった私も悪かったのか?
 でも、状況は伝えたし、普通の業者さんだったら、それがどういう事態かわかるはずだし、なるべく早く手配してくれるはずだ。だから、こっちも「1時間以内に来い!」とは言わなかったけど、午後には来てくれると思ったのだ。
 「あの・・・・ですから、あれが直らないと、私、今日は帰れないんですけどっ」と、言ったら「わかりました。再度連絡してみます」

 その直後、「今日はもしかしたら、最後まで残るかも」という社員が「あそこがあのまんまだと、帰りはどうしたらいいんだろう」と心配してやってきた。「すいません、手配中なんで、でも、なんとかしますから〜〜〜。直るまで私もいますから〜〜〜」と言った。

 修理業者というか、それのメーカーに直に連絡とればよかったのだが、2年くらい前に一度壊れたきりだったので、そのまま「もし調子が悪かったら、施工業者を通して連絡」というマニュアルになっていたのだ。
 他部署に移った前任者にも愚痴ってみたのだが、「うーん、今後は直でできるようにしたほうがいいかもね。私もたしか、あのとき名刺は貰ったんだけど・・・・」と探してくれたが、見つけられなかった。

 そしたら、20分くらいして、メーカーから電話があって「修理担当者から直接電話させますので、そのときに詳しい状況を話してください」と言うので「ほーら、だからすぐに連絡来るじゃない。あの業者、私が朝連絡したときに、ちゃんと修理依頼してないんじゃないの?」と思って、さらにイライラした。
 そんで、さらに10分後に、修理担当者から電話が入り「近所にいますので、15分後くらいに着きます」

 ああよかった。これで今日中に家に帰れる。

 修理の人が、ほんとに15分後にやってきた。ああ、もう、最初っからこういうふうに話が進めば、なんのストレスもなかったのに。
 彼は前にも来てくれた人らしく、「今日は応急処置しますけど、たぶん、部品交換が必要です」とかなんとか。とにかく、なんでもいいから、やってくれ、とお任せするしかない。

 「終ったら、知らせてください」と、自分の机に戻った。
 ああ、なんだか疲れた。そういえば、今日は外出があったし、ハイジも休みだったので、「Sさんに、なんか仕事させなきゃ」と、午前中は丁寧に説明したのだが、午後に外出する前に「これは、単純に先月と同じじゃないものなんですけど、数ヶ月遡って確認すれば、だいたいわかると思うから。それでわかるものだけ入力してください。わからなかったら、何がわからなかったのかメモしておいてください。後でまとめて説明するから」と宿題を残しておいた。
 さすがのSさんも、私が戻ってきた直後「なに〜〜〜まだ修理に来てないのか、くっそ〜〜〜」と騒いでいるのに、「これがわかりませんでした」なんて質問してきませんでした。よしよし。
 でも、前にも確認されたんだけど、彼女に「じゃあ、これが今日の宿題」と言って渡したら「今後も私の仕事ってこんなかんじなんでしょうか?」って言われて、言葉に詰まった。

 気持ちはわかる。派遣の人同士の引継ぎではないので、ちゃんとしたマニュアルもなく、自分の仕事の範囲がわからなくて戸惑っているようだ。
 でも、正社員の経験もあるらしいんだけどな?
 まあ、きっと性格なんだろう。私にはよくわからないことを気にするのは。

 自分では、「自分の仕事はこれとこれとこれ」っていう認識をしようと思ったことがなかった。
 たいてい、新入りの頃は、たいした仕事を任されない。なぜかっていうと、みんな説明するのが面倒だからだ。
 そんで、人並みの知恵のある人たちは、まず簡単そうな仕事を教えてくれて「ざっとしか説明しなくて申し訳ないけど、わかんないことはその都度確認してね」と言って、たぶん、それでその人のスキルをざっと判断する。
 何度も同じようなことを確認してきたり、「その都度聞いてね」を言葉どおりに受け取って、ほんとに一々聞いてきたりすると、最初の簡単な仕事ができるまで、そこでお預けだ。だって、違う仕事を説明したら、混乱しそうだし、だったら自分でやってしまったほうが早い。

 前に、ハイジが来る前に、私が非常に助けてもらった派遣の人は、そのあたりが完璧で、簡単に説明すると「うーん。わかったような、わからないような」って表情をしたが「まあ、とりあえずやってみます」と言って、前のを見ながらなんとか真似してやってくれて、全部やってから「こことここがわからなかったので、そこは色分けしてマークしておきました」って返された。
 で、私が時間のあるときにそれをチェックして、その説明をすると、次回は完璧であった。そんで、「ここが違ってた」と説明すると、「あ、そうですか。直しておきます」と、冷静に対応してくれたので、こっちも全然ストレスを感じなかったのだ。

 あのまま、ハイジが来なくても、彼女がずっといてくれればよかったんだけど・・・・・諸般の事情で彼女はいなくなってしまった。いまだに私は恨んでいる。あの人、私より仕事できたのに。

 Sさんにも「あんたの仕事が今後どうなるかは、あんたの能力次第」と言ってあげたいところだが、とりあえず、いてもらわんと困るので、こっちが顔色うかがっているのである。向こうは、その倍くらい私の顔色うかがってるが(笑)

 まあ、私もそこは堪えて、「えーと、まだAさん(ハイジ)からはほとんど仕事引き継いでないでしょ?彼も忙しいみたいで、なかなか説明する時間がないらしくて・・・・・」と言ったら(前にもそう言ったはずなんだが)、納得したようであるが、念のため励ましておこうと「でも、そのソフトの使い方はだんだんわかってきたでしょ?」と言ったら「おかげさまで」とニッコリ笑顔だったのでよかった。

 つーか、私がすぐ横で「ああ、修理の人はいつ来るの〜〜〜今日は帰れない〜〜〜」と騒いでいるんだから、もし社員になったら、それも君の仕事の一つになるんだってことを想像してくれたまえ。何度も言っているのだが、「うちの会社の総務は少人数で経理も総務もやっているので、仕事の境目が曖昧です。はっきり言ってなんでもやらされます」

 トイレが壊れたとか、水が出ないとか、電球が切れたとか、どんなに本業の経理の仕事が忙しくても対応しないといけない。まさに「お母さんのような部署」なんである。「私は何をするんでしょう?」っていうお母さんがいるか?

 さて、6時頃きた修理の人が、30分たっても連絡がなかったので、様子を観にいったら、なんか一生懸命やってくれている。
 なかなか仕事熱心というか、けっこうオタク系とみた。
 しかも、「今日のいいこと探し」としては、その人がけっこう「好みのタイプ」だったこと。

 修理業者には珍しく、なんとなくお医者さんっぽかったのだ。
 まず、説明が丁寧で、語り口が淡々としていた。でも、彼の説明の半分もわかんなかったんだけど・・・・
 でも、クビをかける・・・じゃなくて、首をかしげる私の前で、できるだけわかりやすい言葉で状況を説明してくれた。
 でも、なんとなく、エヴァな人に、エヴァの説明を淡々とされたような心地でしたが・・・・・

 そんで、なによりもルックスが「こういうお医者さんだったらいいな」って感じだったのだ。えーと、佐藤雅彦とマルセル・デュシャンを足してに2で割ってから眼鏡だけは残し、洗濯乾燥機(ドラム式ってやつ?)で5回くらい連続して洗ってから、3日間くらい海水で晒し、さらに2日間くらい天日干ししたみたいな・・・・・

 いちおう、好みのタイプを見ると、ついつい指輪の確認を怠らないのだが、「ふむ、やっぱ指輪しちょるな」と思ったのだが、よくよく確認してみたら小指と人差し指に指輪っていうのも、ポイント高い。だって、その人、40代半ばだと思うんだけど。あの指輪の位置ってちょっとゲイっぽくてステキ(笑)

 つーか、単なる「妙な人」だったのかもしれない。

 7時になっても、まだなんかやっていたので、また戻ったのだが、7時半ごろにやっと「終わりました」というので、どうなったのか話を聞いていたら、20分くらい語られてしまった。こっちも「もう、いいや」と諦め、自分が納得がいくまで説明してもらった。

 結局、部品交換は必須のようなので、また来てくれるかなあ。

 そういえば、この間から、エレベータの保守会社の営業とも何回か話しをしているのだが、その人もルックスは上等なのだが、なんだか妙なのだ。
 最初に会ったときに「ずいぶん、カワイーのが来たな」と思った。
 そっちは私好みでなかったのだが、定岡(野球)と井原(サッカー)を混ぜて、英国料理のように「形がなくなるまで煮込む」とああなるような・・・・・
 その人が、また、変な天然ボケでさあ。
 なんか、ラリってる人と話してるみたいなんだよ。

 そんで、その会社がラリっているのか、なぜか郵送してもらった書類が届かなかったりとか、なんかやるたびに「トワイライトゾーン」に飛ばされるのだ。そんで、まあ一般常識程度には「イケメン」の彼が、ボーっと弁解するわけ。まるで、こっちの責任みたいなことをボーっと言うのだ。
 こっちも、「もしかして、私がいけないのかな」と思ってしまって、後で調べてみると、私の責任ではないことがわかり、文句言ってやろうと思って電話すると、またボーーっとかわされてしまう。向こうは絶対に謝らないし、こっちが嫌味を言ってもわかってるのかわかってないのか、わからない。

 ジャンキー役をやってるブラピ(ハンサムだとは思うが、好みではない)に道を聞いたら「ああ、あっちだよ」と言われて、2キロも歩いたが目的の建物が見つからず、戻ってみると、まだそこでボンヤリしているので、文句言ったら「あ、そう。じゃあ、あっちだったかな?」って言われたような気分になるのであった。

 あ、でも、今日は外出先で、一流企業のバリバリの若手のプレゼンを拝聴した。(お義理で参加。部長の代理)
 自信満々で、見てて気持ちよかった。
 そんで、パリっとしたスーツ着た彼らに囲まれ、ちやほやと挨拶されたので、ちょっと気分よかった。

 でも、ああいう人たちは、気を抜くとすぐに高級ボトル入れさせようとするから用心しないと(笑)

 会社のメンテナンス関係で来る人たちは、中にはバリバリな人もいるけど、でも、ぼーーーっとしてたり、淡々としているところが逆に信用がおける。機械関係に疎いので、下手すると「いいなり」になってしまうのだが、「これって、いますぐ必要な修理でしょうか」って言うと、「まあ、あと2、3年は大丈夫だと思いますね」って本当のことを言ってくれるからだ。
 不思議なのは、そのエレベータ保守会社は、保守担当の技術者は「地震対応の設備をぜひ」と積極的に売り込んでくるのに、じゃあ営業担当を呼んでみたら、売りたいのかなんなのか、ボーっとしてて、わけわかんないのである。「じゃあ、見積りを用意します」って言ってから、来たのが2週間後だったし、こっちから「先日、大きな地震もありましたし」と持ちかけても、「はあ・・・・」ってかんじ。おいおい、今が売り時なんだろう?

 ええ、そういうわけで「本来なら自分の仕事じゃないはず」な仕事にばかり振り回されて、ゼーゼー言っているのでありますが、私の「心の支え」は、「でも、みんな顔はいい人ばかりだった」ってことに気がついたので、落ちがやっと見つかったので、愚痴はここでやめときます。
9月5日(月)

 昨日はまた早朝出勤のお仕事だったのだが、午後は早い時間に解放されたので、家に戻ったらずっと読書していた。また、コニー・ウィリスを読みはじめてしまったのである。「航路」は上下巻でこれまたブ厚い。
 この人の本は、大絶賛したいほど好きでもないのだが、とにかく最初から最後まで全速力で走りぬける構成なので、「ひー、疲れる」と文句言いながら、それでも読むのが止まらないのである。
 まるでパンク系のライブのようだ。最初っから最後までズガガガガガガと爆音だけで、バラードタイムなんて無いのだ。

 そんで、今朝の通勤途中で、やっと下巻の後半にさしかかったら「そこまでやるか!」な展開になり、ある程度、予想していた展開なのだが、それを上回ることをやってくれたので「くっそーーーー」とムキになって読んでいたら、危うく下車駅を通過しそうになってしまった。

 さて、今日はなんだか落ち着かない一日であった。
 なんの仕事したのかよくわからんうちに時間が過ぎていった。
 おかげで、Sさんのことを構っている心の余裕もなかったのだが、4週目に突入した彼女は、今日は初めてテンションが低かった。職場の雰囲気に慣れてきて「がんばっている自分」をアピールするのにくたびれてきたのか、それとも体調が悪かったのかわからなかったが、「う、大丈夫か?見切りつけようと思ってるんじゃないよね?」と、ちょっとビクビクしてしまいました。

 さて、また「航路」のラストまで突っ走らないといけないので、今日は日記を書くのをやめようかとも思ったのだが、帰り道にふと「今朝、私の血圧を上昇させたもの」のことを思い出したので、忘れないうちに書き留めておこうと思ったのだ。
 「とくダネ」でも、まだニューオーリンズのニュースの扱いが大きいが、今日は「被害に遭った日本人旅行者」を引っ張り出してきて、生中継でインタビューだというので、ぼんやり見ていたのだが、五反田さんという26歳の男性が出てきた瞬間、目がバッチリ冴えてしまった。

 だって、いきなりVシネマとか、韓国ドラマに出てくるような「チンピラの兄ちゃん」だったんだもん。今やっている「オールイン」のビョン様の敵役のテスみたいだった。
 バッチリ固めたヘアスタイルに、派手なシャツ、胸元に光るゴツいネックレス、そして、顔立ちはわりと整っているのだが、強面である。
 それで、お名前が「五反田 亮」(漢字これだったかな?)って、「リョウ兄貴!」って感じでキマりすぎだ。いったい何が登場したのかって、しばらく画面を凝視してしまったもの。

 2ちゃんあたりでも話題沸騰だと思われ。

 しかも、リョウ兄貴は、被害にあったPTSDだか(ローマ字の並びに自信無し)、それとも国際生中継でアガっているのか、それとも、元々「ベシャリは苦手」なのかわからんが、日本語がかなり怪しかった。
 そして、画面を睨みつけるようにして、たどたどしく「避難の経緯」を語るのだが、ちゃんと時系列で語れないし、日本のスタジオからの「誰かと一緒に行動していたんですか?」という質問には「一人だった」というような答えをしていたのだが、後になって「一緒にいた友人が怪我をしていたので、歩くのが遅くなって、途中で乗り換えたバスに乗り遅れそうになって、そんときにはもう終わりかと思った」とか言っているが、友人がなんで怪我していたのかの説明もなく、話が散漫だった。

 そもそも、避難所をわけもわからず転々としたらしいのに、なんで今、アメリカのスタジオにいるのか、言わないのである。あの人を生中継で出すなんて、向こうのスタッフもずいぶん慌てていたんだろう。せめて録画で編集してあげればよかったのに。目の前でちゃんとゆっくり質問したら、彼ももう少しちゃんと説明できたであろう。

 でも、インパクトは確かにあったので、あれも番組の狙いだったのかも、と、また深読み心が暴走してしまったのであった。
 無事、日本に帰ってきたら、またスタジオに呼んであげてほしい。
9月3日(土)

 また暑さが戻ってきて、朝ちゃんと目が覚めてしまった。
 朝からテレビを観ながら、ゴロゴロしていました。

 ニューオーリンズの台風被害のニュースはだんだん被害の規模が大きくなってきたようです。
 それにしても「やっと5日目にして、本格的な支援物資が到着」なんてニュースを観ると「ミズーリ州っていうのは、インドネシアあたりにあるのか?」と思ってしまう。
 世界最大の軍事力はいったいどうした?輸送ヘリとかいっぱい持ってるんじゃなかったの?
 全部、海外に行ってしまったのか?

 しかも、治安も相当悪化しているようで、こうして日本のニュースでかいつまんだ報道だけ観ていると「混乱のイラクにスマトラ並の津波が襲った後」ってかんじになっている。
 昔のロサンゼルスの大地震のときには「さすが、先進国アメリカ」っていうような報道だったのにな。

 なんとなく、「どーせ、元奴隷たちが、ジャズと酒にうつつを抜かしている街」っていう扱いを受けているような、そんな勘ぐりまでしてしまう。
 唯一、感心したのは、避難場所となっている屋根つきドームの中は、ちゃんと簡易ベッドが置いてあることだ。あれって、そういうときのためにドーム球場に配備されてたわけですよね?
 日本だと、まるでお花見のときの上野公園みたいに、シートを広げた場所が「我が家のテリトリー」ってかんじになるはずだが、アメリカ人はやはりベッドがないと許せないんだろうなあ。で、ベッド一台が個人のテリトリーとなっていて、日本の「家族単位」とは様子が違うというか、ああいうのが個人主義っていうことなんだろうか?

 その昔、西洋的個人主義に憧れる友人がいたのだが、彼女が何を求めているのか、とうとうわからなかった。
 彼女が日本の「個人主義じゃないところ」のどういうところが不満だったのか、何度聴いてもよくわからなかったのだ。
 彼女がどのくらい「個人主義信奉者」であったかといと、一緒にイギリスを旅行していたときに、たまたま立ち話した港湾労働者なイギリス人に向かって、「私、イギリス大好き。だって、インディビジュアルでしょ?」と、つたない英語で話していたので、相手も「はあ?」という態度だったが、横で聴いてた私も「はあ?」と思った。
 だってさ。最初に向こうが、なんか質問してきたのだが、訛っていたので、何言ってるのかわからず、あれこれ聴きなおしているうちに、やっと向こうが時間を聞いてるのがわかり、私は「おーい、ちゃんと世界に通じる英語で言ってくれよ」と思い、向こうは「このネーちゃんたち、言葉もロクにわからんようだ」と思っていたはずなのだが、そんな人たち相手に「インディビジュアルがどうのこうの」と語っても、しょーがないじゃん?

 渋谷にたむろする若者に「天皇制についてどう思いますか?」って質問しているようなもんだ。しかも、質問する側は日本語が不自由(笑)

 そういう私も「個人主義」ってどういうことなのか、いまいちよくわかってない。
 前に会社のオジサンが酒飲み話で披露していた話が一番わかりやすかった。個人主義の国といえば、おフランスが代表であるが、フランスでは、元大統領が亡くなっても、葬儀に出席するのは親族とごく親しい友人という、せいぜい数十人らしい。日本だったら、数百人では済まないかもって話である。
 私も、ずっと総務畑で仕事しているので、得意先の社員のお母様が亡くなったなんてお知らせが流れてくると、お花の手配とかしてきたが、いつも「なんで、見ず知らずの人の葬儀にしゃしゃり出なければいけないのか」って思っていた。

 日本だと、葬儀っていうのは、亡くなった本人のモノではなく、遺族のためのモノなので、遺族の知人や仕事関係の人が弔問に訪れるのだが、たぶん、おフランスだと「亡くなった本人」中心に物事が進むので、義理チョコみたいな「義理弔問」という習慣が無いのだろう。

 たぶん、友人が嫌がっていたのも、そういう「義理」という習慣で、義理があるから会社の飲み会に嫌々出席しなければいけないようなことを嫌がっていたのだと思う。それで、彼女はそういう「義理」というのがどこまで守らなければいけないのか、自分ではなかなかサバけて判断できなかったので、それで非常に悩んでいたのだ。
 たとえば、会社で仲良くしている人が、新居に移ったので「新居披露パーティー」を開くと、自分が引っ越したときに、そういう会を催さないといけないのか、悩んでしまうようだった。

 たしかに、結婚式なんかでも「あのとき呼んでもらったから、自分のときには招待しなきゃ」なんてことはよくあるが、そういうのが苦手な人も多いと思う。
 友人はそういうときに完ぺき主義だったので、逆に「そういうのが上手くできない自分」を責めてしまい、「そんなの、どーしたって全部うまくできっこないから、しょーがないじゃん」っていう私のアドバイスなんて信用してくれなかったが、「日本だと、そんなことでプレッシャーを感じるけど、イギリスだったら、そんなことないのに」という逃げ道を見つけてしまったようである。

 いや、イギリスだって、そういうしがらみから自由になれるわけじゃないと思うし・・・・
 どこに行っても「お付き合い」っていうのは、あると思うんだけどな。
 ただ、西洋だと「こうすべき」っていうのがある程度、個人に任されているんだと思うし、日本でも最近では「あの人はこういう付き合い方をする人だ」っていう許容が緩くなっていると思うし、どこの国でもそうだけど、田舎と都会ではずいぶん違うし・・・・・

●「いい人」ってなに?

 自分も「日本社会」では、ちょっと浮いているのかもしれないが、でも「そこが変だよ日本人」って嘆いても、けっこう人それぞれだったりするので、できるだけ「みんな、間違ってるよ〜〜〜〜」だけど「みんなって誰?」な自問自答には謙虚な姿勢でのぞんでいるつもりであるが、先月から派遣でやってきたSさんが、私が心に描く「みんなな日本人」というサンプルに近いようなので、この日記でもチマチマと叩いてますが、彼女のことを嫌いなわけではないです。
 ただ「多数派代表」のいいサンプルなので、勉強させていただいております。
 さらに言えば「彼女って、ほんとに普通の人なんだなあ」と思っていても、現実には「普通の人」ってあんましいないので、なんか「自分と相反する思考の人の集合体という幻想」が具現化したような神々しさをかんじているわけであります。

 前に日記にも書いたが、Sさんがハイジのことを「ハイジさんて、優しい人なんですね」と私に言ったので、目を白黒させてしまったのですが、たぶん、「慣れない村に入ったら、とにかく誉めておけば無難」っていう、「日本社会の掟」が私の知らないどこかで、小冊子として配布されているのでしょう。どの省庁が管轄なのか知りませんが。厚生省の天下り受け入れ団体がやってるのかな?

 先日は、Sさんに某部署に経費の現金清算を渡しにやったら、戻ってきた後、「あそこの部署って、みなさん、いい人ばかりですね」と言われて、また目が泳いでしまった私であった。

 「いい人ですね」って言われたら、「ああ、そうですね」としか言いようがないではないか。
 ってゆーか、じゃあ、「いい人」と賞賛しなければ「悪い人」だったり「普通の人」だったりするのだろうか?

 なんて、マジに考えてしまう自分が「変」なだけで、「普通の人」というマインドにおいては、普通、世の中は「いい人」を基準に構成されているはずなんである。
 自分にも経験があるが、新しい職場に行くと、そこで私の世話をしてくれる役目の人が「みんな、いい人だから大丈夫ですよ」なんて、真面目に言う。

 そして、私の経験からすると、わざわざ「みんないい人だから」と言われたときほど、実は「クセモノばっかだった」ってことが多い。

 たとえば、書類を持って言っても、目線も合わせず、礼も言わない社員がいたとして、別に悪気はないので「いい人」なんだろうけど、でも、ちょっとビビる。
 前に派遣で仕事を引き継いだときに、前任の人は、普通に頭が良くて、「あの人は、ちょっと愛想がないけど、でも別に悪気はないから」とか、「あの人は神経質そうだけど、そう見えるだけだから」と、ポイントを教えてくれて、後になったら、全部彼女の言った通りだった。

 必要な情報というのは「みんないい人」よりも「悪い人」の情報である。
 「悪い人」とどう付き合っていけばいいのか、そっちを教えてほしいよ。と思っているので、Sさんが、「いい人」を連発すると「もしかして、私の反応を見て、危険人物を探ろうとしているのでは?」という妄想が出てしまうのは、考えすぎの私の悪い癖である。

 Sさんの場合には、思考が「普通」で、表現力が「普通以下」らしいので、私にはちょっとキツいこともあるが、彼女はその「普通以下」の表現力を「誉め上手」で乗り切ろうとする変な気概があるので、よけいに疲れれる。
 ハイジが9月から経理の学校に通いはじめた。
 マジで税理士資格を目指すらしい。
 それは、彼の個人的なことなので(というか、ほんとに税理士試験に受かったら、うちの会社にいる意味がないの、本人がどう考えてるかわからないが、私としてはちょっと複雑な心境である)学校のある日に、さっさと退社するのは構わんのだが、金曜日にハイジが6時ちょっと前に「お先に失礼します」と言ったら、Sさんが、「応援してます。がんばってくださいね」と声をかけていた。

 昼食を一緒に食べに出たときに、そんな話をしたんだろうな。
 私も、Sさんの「普通の人光線」に慣れないのだが、ハイジも同じなので「応援してます」と言われて、戸惑っていたけど「あ、ああ、ありがとう」と言っていたので、ヤツはあれで嬉しいのかな?

 クララだったら、絶対に言わないセリフだし、私も言わない。
 ただ、私のほうが、気は回るので、もし彼が学校に行く日に、なんか残業しそうな様子だったら「私で替われることなら、やってあげる」と申し出るくらい。あとは「休んだら学費がもったいないじゃない」と言うくらい。

 個人的には、資格取得のために夜間学校に行くことに対して、同僚から「応援してます」なんていわれると「うざい」のであるが、ハイジにとってはどうなのか、私には全然わからないのであった。

9月2日(金)

●続・臨終間近の蝉

 蝉は天井に張り付いたままだった。
 たぶん、そのうちまたブンブンと暴れるだろうから、そのまま寝るわけにもいかないし、しょうがないから、椅子に登って手で捕獲した。もう、元気がないからすぐに捕まる。そもそも、ベランダで仰向けに転がっていたくらい弱っているのである。

 この時期、あちこちで蝉の死骸は転がっているけど「死にかけ」は珍しいので、臨終に付き合ってあげようと思ったのだが、いったいどのくらいで死ぬのかわからんし、だいたいどうやって臨終を確認すればいいのか?脈とるわけにもいかんし。そっか、この前の救急救命講習でやった「意識の確認」ってやつで、「大丈夫ですか〜」とツツけばいいわけだな。

 さて、天井にとまった蝉を手づかみしたら、またブブブブブと激しく羽を震わせた。
 ためしにベランダに出て、放してみたら、ブブブと飛んでいったが、ベランダの灯りに誘われるのか、すぐにUターンしてきて、私の胸に激突して、ベランダに落ちて、また仰向けになりながらも、ブブブブブと羽を鳴らす。
 また拾い上げて、飛ばしてみたが、やはり戻ってくる。
 どうしても、うちのベランダで死にたいらしい。

 しゃーねーな。
 と、諦めて、遺影の撮影をしてあげることにした。


 なかなか美しく撮影することができた。
 綿ボコリの繊維のような触覚を触ってみると、ピクピクと弱々しく反応するのでかわゆい。
 でも、こうしておとなしく写真を撮られているというとは、ほんとにもう飛ぶ気力もないのだろう。

 と思っていたら、またブブブブブと羽を震わせたので、鬱陶しくなり、ベランダから外に投げたが、また舞い戻ってきたので「こりゃ、ほんとに臨終まで付き合わなきゃいけないのだろうか?」と嘆いたが、もう一度、コケむして、いいかんじの古い瓦の隣家の屋根に向かって投げたら、「ぼそっ」と音がして、隣家の屋根でブブブブブと鳴っていたので、「あ、ここのほうが感じがいいかも」とわかってくれたかもしれない。

 というわけで、夏の終わりに、死にそうな蝉の遺影を撮影し、それをここにデータとして埋葬しておいてあげました。ああ、いいことをした。

●デパート恐怖症のあたくしが

 いつも日記に書いているが、年々買い物恐怖症が悪化してきて、ましてや高級なデパートなんかに足を踏み入れると、三途の川を越えたような気分になるのである。なーんか、あの嘘くさく美しいかんじが、そんな感じじゃない?

 しかし、総務部のお仕事の一つとして、副社長のお誕生日プレゼントの買出しを任命されてしまったので、しょうがないから、今日は午前中、「ニコタマ高島屋」に直行。
 10時5分前に到着してしまい、「一階の入り口から入るのだけは避けたい」と思って、連絡通路から(あそこをご存知の方には「ドックヤードからのあの歩道橋」と詳細を付け足しておく)3階のテラス通路の入り口を狙い、そこのベンチでしばらく待っていた。
 伊東屋の入り口から男性店員が出てきて、恭しくドアを開けると、その脇にピタリと立っていたので「あそこで、お辞儀されたくない」と思って、ドアの脇に店員が立っていないもう一つの入り口から入ったのだが、どの店の前でも店員たちが店先に並んでおり、「おはようございます。いらっしゃいませ」と丁寧にお辞儀されてしまい、「ひーーーーー、いやーーーーー」と早足で駆け抜けた。

 開店直後のデパートほど、恐ろしいところはない。

 しかし、久々の「平日の朝一番のデパート」であったが、けっこう人がわらわら入ってくるのね。さすが、高島屋ニコタマ店。私が目的の売り場に到着するころには、「朝一番」という異様な気配は消えていた。

 和食器の売り場で、ぐい呑みを探したのだが、すごくいいやつ(作家の一点もの。ガラスケースに入っていた)は、予算オーバーなものが多く、それに、ぐい呑みやお猪口だと、小さすぎて華がない。お銚子もつけると、さらに予算オーバーだし・・・・
 と悩んでいたら、店員に「お出ししましょうか?」と声をかけられたので、「年配の男性へのプレゼントで、酒器がいいんですが・・・・こういのだとちょっと予算が・・・・」と相談してみた。結局、切子のぐい呑みにしました。見た目が派手だし、これなら奥様も「まあ、かわいい」と思ってくださるだろう。1個、2万5千円くらいのを赤青で二つ。

 昼前に会社に戻ると、部長が「ごくろーさん」と声をかけてくれたので、さっそく「結局、薩摩切子にしました。店員さんに、割れにくいのって言ったら、それを勧められて(笑)、たしかにブ厚いガラスで、あれだったらちょっとやそっとじゃ欠けないでしょ」

 前日に、部長に「どんなのがいいんでしょうねえ?」って相談していたのである。「お酒好きな人だから、グラス系がいいと思うけど」と部長が言ったが「でも、クリスタル・グラスって雰囲気でもないですよね。なんか、副社長って、そういう気取ったやつよりも、端が欠けた茶碗なんかで冷酒飲むほうがしっくりくるし・・・」

 実際、彼は、場末の飲み屋が大好きな人である。焼酎をヤカンから注ぐような店。

 私が「欠けた茶碗で酒を飲むのが似合う」という失礼な表現をしたのを笑いながら、部長は「ははは、でも、その欠けた茶碗が魯山人だったりして」と受けてくれたので「魯山人じゃ、予算オーバーどころではないです〜」と言っていたのであった。
 結局、部長から「ミヤノのセンスに任せるよ」と言われてしまったので、渋々買出しに行ったのだが、「切子だとちょっとカワイすぎるかなとも思ったんですけど、備前のぐい呑みだと、小さすぎでちょっと地味だったし・・・」「ああ、でも備前は使いこんでいるうちに味が出てくるっていうよね」「そうらしいですね。私の趣味だと、萩なんかが品がよくてよかったんだけど、でも、ちょっと副社長のイメージではないっていうか・・・・」「たしかに、伊万里とかでもないよね」「そうそう、絵付け系のほうが、お猪口だといいのがあったんですが、なんか違うなって思って、でも備前だと、もっと茶碗くらい大きくないとなんだかピンと来ないというか・・・・私も観る目ないから、どれがいいのかよくわからんし」

 なーんて、中途半端な「焼き物談義」を繰り広げていたのである。
 他の社員はそんな会話に無関心なのだが、Sさんだけは、目を大きく見開きながら、会話に参入するタイミングを見計らっていた。
 Sさんが、私にとって、「ちょっと疲れる人」なのは、そんなところである。
 口を挟みたいなら、勝手に入ってくればいいのだが、キラキラとした目線を送りながら、「あんたも入ってOKよ」っていうキューをじっと待っているのである。
 気がついていたのだが、無視していたら、私と部長の会話が一段落して、私が席に置いてあった書類を確認しはじめたら、Sさんが部長に向かって「すごく、お詳しいんですね」

 部長が「まあ、けっこう、好きなもんで」と言うと、「なんか聞いていても、よくわからなくて。使ってるうちに色が変わるってどういうことですか?」
 わかんないなら、口を挟むな〜〜〜〜
 と言いたいが、部長は「ああ、上薬の量が、焼き物によって違うから・・・・云々かんぬん」と、親切に説明していた。

 ま、いいんですけど、私にしろ、部長にしろ、それほど焼き物に詳しいわけではないです。
 「備前とか萩は、使っているうちに色が変わったりするそうだ」っていう一般常識の範囲で井戸端会議していただけです。で「切子」と言えば、だいたいどんなもんだかわかり「でも、切子だったら、そんなに高くないだろう。ぐい呑みだったら、2万5千円くらい?」という部長の言うことがドンピシャだったので「よくご存知ですね。ほんとにその金額」とマジに驚いたのだが、部長が「でも、自分で買う金額じゃないよな」と言うので「たしかに、だからプレゼント用なんですよっ」なんて喋っていただけである。

 そういや、買い物が終ったあと、洋食器系のブランド店を眺めていたら、バカラの店に入ってしまったのだが、そこの陳列してあった150万円の花瓶が美術品クラスだったので、しばし見とれていたのだ。
 ああいう店は、照明も工夫してあるので、高級クリスタルガラスの美しさを堪能できる。

 そしたら店員に声をかけられてしまった。
 私なんて、ユニクロのシャツに無印のスカートを履いて、1900円のサンダルを履いているというのに・・・・・一番高価なのが1万円弱のサザビーのリュックである。どう考えたって、150万円の花瓶には縁がない。
 でも、ニコタマのバカラの店員さんは、そんな私にも手を抜かなかった。
 押し付けがましくなく、適度に声をかけて、私がテキトーにあしらってその場を去るときにも「ありがとうございました」と言った。

 高級店は怖いけど、前にも思ったんだけどニコタマの店員は、「客を値踏みしている」ということを決して表には出さない接客をするので、やはり格が違う。いじわるく考えると、「つっかけサンダルにTシャツ」な客でも、100万円の花瓶を平然と買うような客はいるのだろう。
 1.5流のデパートに行くと、店員がこっちの身なりを観察しているのを感じるのだが、一流店ほど、身なりで判断しないように思う。一応、まんべんなく声をかけておいて、そのやりとりから判断するようである。

 もしも、私が、うっかり100万円の食器を買いにいくことになったら、やはりニコタマに行くと思う。
 そういう安定感があそこにはある。「やっぱり、すげーな」と思う。

 で、だんだん、あの雰囲気に慣れてくると、不思議と「これが標準」というか、なんだかあそこが演出している架空の世界に引き込まれそうになってくるのである。
 それは多分、ヤク中が、ヤクに溺れるのと近い感覚なんだと思う。

 なので、すごく警戒しているのだが、ときどき、ふっと引き寄せられるので、今の自分はそれを「ぜったいダメ」と過剰に拒否反応してしまうのだが、ちょっと気を許すと、あの幻想の世界から戻ってこれなくなるかもしれないので、だから「怖い」のである。


9月1日(木)

 アメリカのハリケーンは、やっぱし被害が想像した通りにデカいようだ。
 「死者数百人?」から「死者数千人?」に桁が上がっていた。

 しかし、ニューオリンズって街は想像以上に小さかった・・・・・って言い回し、なんか間違っているような気がするが、「想像以下に」にっていう言い回しもないので、なんか真夏に「暑がりのオジサンがエアコンを上げやがって、寒いじゃないかよー」と言ってしまうジレンマにも似ている。

 ニューオリンズって、人口数十万らしい。
 あんまし、あの辺に興味が無いのだが、けっこうあそこを「憧れの地」とする人も多くて(うちの妹もそう)、そーいや、写真なんかで観ても、「いかにもアメリカの地方都市」というか、「日本人が心に描くアメリカの田舎町」というのか、「ビルが中心」の光景ではなかったような。

 その昔、きょうみちゃんが住んでいたところが、千葉からモノレールで行った終点駅から、さらに車で10分くらいのステキなところだったが、あそこのモノレール駅周辺が、二階建ての建物が長屋風に並んだショボい商店街が50mくらい続き、銀行も地方銀行しかなくて、もちろん単独の建物がポツネンだったりして、「なーんか、ここって、アメリカっぽくねえ?」と言っていたのであった。
 そんな光景のアメリカなんて実際に観たことないくせに。(行ったことあるのは、NYとフィラデルフィアだけ)

 でも、不思議なもんで、映画やドラマでよく見るので、なんとなく、ああいう風景を見ると「郷愁」を感じてしまうのである。
 弟の結婚式で、長野のとある街を式場だった教会から披露宴をするホテルにミニバスで移動したときも、そこそこの街のはずなので、街道沿いに店はけっこうあるのだが、「歩いている人が全然いない。まるで、ゴーストタウンみたいだけど、駐車場にはそれなりに車が停まっている」という光景を見て、「なーんか、アメリカみたい」と感心していたのであった。
 日本でも、少し田舎に行くと「車社会」なので、歩行者がいない光景が見慣れなくて、なんでもかんでも「アメリカみたい」で処理してしまうのである。

 さて、昨日の話の続き。
 夕方、少しマッタリしてきた時間に、クララに「もしかしたら、少し席を移動するかもしれないし、その席に、ハイジが座るか、Sさんが座るか、まだわかんないけど、できるだけ引き出しの中は整理しておくように」と言ってみた。彼女は来週までなので、そろそろ書類ファイルなどの引継ぎもしなくちゃいけないし。

 ふと、そのついでに、Sさんのことを試してみたくなり、「もしかしたら、そっちの机はもう少し移動するかも」と言ってみた。
 Sさんの顔色が変わった。
 それで確信できたのだが、彼女は今の狭いし、背後を人が通過する席を「仮の席」と思って我慢しているだけで、いずれはクララの席に移れることを期待というか、確信していたのである。
 それを部長寄りに移されることになると、今とほとんど同じ条件になってしまう。

 たぶん、「まだ新人だから、めいっぱいカワイコぶりっこ」していただけの彼女は、精一杯「えー、席を移動するんですか?え?そっち向き?えー、それって、なんかイヤです〜」と反抗してきた。

 よーし。
 いいぞ。
 そうやって、ちゃんと意思表示する人は大好きだから、私もできるだけのことをしようじゃないの。

 もし、そこで「どうでもいいです」な態度だったら、部長の望み通りにしちゃったほうが、私はラクかも、と考えていたのである。
 「自分はこうしたい」という意志が無い人のために、私があれこれ思い悩むのも虚しいから。

 ついでに「部長にあんまし媚ないほうが今後のためにはいいよ」と進言しようかとも思ったが、私が言いたいことを理解してくれそうな「読解力」のありそうな人でもないので、それはやめておいた。けっこう、素直な子なので(いい意味でも、悪い意味でも)、私の話を鵜呑みにしそうな気配がしたのである。
 つーか、もともと「部長の愚痴に付き合ってあげてね」と言ってしまったのは私だし、「普通の理解力」のある彼女はすでに「部長がキーパーソン」という常識は学んでしまっており、必要以上に気を使っているので、それを「たしかに部長に気に入られるのは必須だが、でも、ほどほどに」と言っても、混乱させるだけであろう。

 こっちから彼女を切ることは無いということをそのうちきちんと伝えてあげないとな。
 ま、でも「そんなの絶対にヤダ」な意思表示をしてくれたということは、彼女にはけっこう見込みがあるのかもしれないけど、それが行き過ぎちゃうとダメなわけだし、自分の意志を根回しで通すっていう根性があるかどうかが今後のポイントである。
 どこの組織もそうなんだろうけど、結局「村社会」なので、見えない力学をなんとか読むか(私は深読しすぎ)、それとも、ハナからそんなもんは知らんとマイペースで驀進するけど、風の流れに逆らわないという高度な処世術(私には絶対無理)のどっちかしかないんだよね。

 もっと上のレベルの人は、もっと上等なことしてるのかもしれないが、あんましそういうのを間近で観たことがないので・・・

●臨終間近の蝉

 ベランダでずっと「バタバタバタバタ」という音がするので「蝉だろうな」と思ってベランダに出てみたら、やっぱし蝉がひっくり返っていた。
 たわむれに指を差し出したら、か弱い力で指にとまって、フルフルと振るえていた。
 「せっかくだから臨終を看取ってやろうか」
 と思って、部屋の中にいれて、布団の上に置いたら、ブーンと飛びだして、天井にとまってしまったんだが、どーしやしょう?
 ・・・・・部屋の中で、急に鳴き出したりしないよね?

 つづく・・・かもしれない。
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