まんが国際貢献船ヤマト

呉市は、2002(平成14)年の市制100周年を前に、一般から周年記念事業に関するアイデアを募集しました。そこで、私は「国際貢献船ヤマト」と題したマンガをつくることを提案しました。これまで日本各地の市制100周年記念事業では、ハコモノと言われる施設づくりや、博覧会などの大型イベントの開催が主流でした。しかし、これからは、文化として継承されるソフト指向のプロジェクトが必要であり、国内だけでなく、国際的にも人気が高まっているマンガやアニメに着目しました。

「国際貢献船ヤマト」ストーリーは、国内外からさまざまな分野の専門家やボランティアが集まり、「大和」を生んだ造船技術や、最新鋭の防災・災害救助技術を生かして、大型の船を建造するというものです。完成した「国際貢献船ヤマト」は、災害時に国内や東アジアを中心とする近隣諸国の被災地へいち早く駆けつけ、ヘリコプターを使って救助活動を展開します。その後、移動型メガフロート船団が派遣され、ボランティアが医療・救護や環境保護活動を展開します。また、平常時は、国内各地を回って、参加・体験型の防災教育施設(フローティング・ミュージアム)として活躍します。

プロジェクトの推進方法としては、まず、 「宇宙船艦ヤマト」の作家として有名な松本零士さんや、尾道市出身で「沈黙の艦隊」の作家として有名な、かわぐち・かいじさんに協力を要請します。 雑誌社とタイアップして新人を発掘し、育てていくことも大切だと思います。そして、市民中心に行政や呉市に関わる企業も参加する実行委員会でいろいろなアイデアや、呉市の歴史や造船技術、災害救助活動等、マンガを書く上で裏付けとなる資料を作家に提供します。艦長が呉を発祥とする「セーラー万年筆」で航海日誌をつけたり、イギリス海軍直伝で舞鶴市との間で日本発祥の地論争がある「肉じゃが」で難民救済をしたり、呉のビールである「クレール」で成功を祝ったりするなどのストーリーを盛り込み、呉市を効果的にアピールするさまざまな展開を考えました。

残念ながら不採用となりましたが、市民が中心となってマンガやアニメを作りながら地域のアイデンティティを再認識することは、まちづくりの手法として利用できると思います。最近、アジアだけでなく欧米社会でも日本のマンガやアニメが人気を呼んでいます。アニメのビデオは中近東向けも含め外国版が日本から輸出されています。「クレヨンしんちゃん」に登場する埼玉県の春日部市が国際的に有名になりました。

アメリカでは、日本文化のかっこよさを表現した「ジャパニーズ・クール」という言葉も生れています。また、フランスでは1997年、フランス最大のマンガ祭り「BDエキスポ」で、日本マンガをテーマにしたコスプレ・コンテストが開催されました。mangaがフランス語として認められ、熱狂的なアニメファンの多くが日本語を学んでいるそうです。

東京の三鷹市にある「三鷹の森ジブリ美術館」は、親子連れや若いカップルでにぎわっています。迷路のような不思議な建物の屋上庭園には「天空の城ラピュタ」に登場した守り神のロボットがありました。実際のアニメ製作に使用されたスクラップブックや絵コンテなどを手に取って見ることができ、海外からの旅行者にも人気のスポットになりつつあるようです。