国際人形フェスティバル(仮称)in ひろしま 構想案

 

古来から受け継がれる人形文化

古来、日本には独特の人形文化があります。信仰の対象や祓い、子供の玩具、美術工芸品など、様々な目的で作られてきました。また、子供の教育用ツールとしても大切な役割を担ってきたと思います。そして、今日、男女を問わず、子供から高齢者までの幅広い層に対して、創作人形やフィギュア、キャラクター人形、ぬいぐるみなど、多種多様な広がりを見せています。

  花の季節に 岩切映幹子(広島県出身)

「いのち」が輝く社会の創造

今日、いじめや虐待、殺人、自殺など、「いのち」にかかわる事件は絶えることがありません。私たちは命の大切さについて真剣に考え、やさしい心と生き抜く力を取り戻さなければなりません。「いのち」は、私たち一人ひとりが生涯を通して考えていかなければならないテーマであると思います。人によって「いのち」を与えられた人形は、私たちに「いのち」を少し違った角度から考える機会を与えてくれるのではないでしょうか。

「国際人形フェスティバル(仮称)」を開催し、「いのち」について語り合うために人々が集う場として、「創り出す平和」のために多くの人々が活動している広島がふさわしいと考えました。広島で多くの人々が交流することによって、未来へ向けた力強いメッセージを創造し、国内外へ発信していきたいと思います。

今、私たちは、「いのち」について真剣に考えなければならないと思います。人によって「いのち」を与えられた「人形」は、私たちに「いのち」について客観的に直視する機会を与えてくれます。「人形」を作る人たち、「人形」を愛好する人たちが所属やジャンルを超えて、プロからアマチュアまで一堂に集い、さまざまな交流を通して、「いのち」について語り合うことが、新しい人形文化を創造し、継承していくことにつながると思います。そして、すべての人の「いのち」が輝く社会を築き上げなければならないと思います。

 

体験型総合アートフェスティバル

「国際人形フェスティバル(仮称)」は、「人形」をテーマにした交流によって、「いのち」の大切さを考える。人形作家や愛好家が国内外から集い、交流する国際的なコンベンションです。人形の歴史や世界各国の人形を紹介する展示、創作人形コンテスト、展示・販売(ショー&セール)、そして、子供から大人まで参加できる体験プログラムや、フォーラムやトークショーなど、様々な内容で構成します。

ヴェネチアで2年に一度開催される、ビエンナーレのように世界各国から旅行者が集まる体験型総合アートフェスティバルとして、広島の魅力を十分に堪能してもらえるイベントとして成長させたいと思います。

  

「ヨーロッパドールコレクション」

ビスクドールやマイセンドール等、ヨーロッパのアンティーク・ドールのコレクションを展示し、その製法や歴史と共に、「人形」にまつわる様々な物語を紹介します。

 

日本郷土人形コレクション」

古くから郷土玩具として日本の各地で親しまれてきた「人形」を展示し、その土地の風土の中で、現在も引き継がれている様々な生活文化を紹介します。

 

ひろしまの人形文化」

常石張り子(沼隈町)、上下土人形、宮島張り子、宮島鹿猿手ひねり、宮島焼、三次人形、掛軸押絵雛(備後)など、広島県内各地で継承されている人形文化とその歴史について、展示と実演によって紹介します。

 

「日本の人形文化」

人形文化が花開いた江戸時代の人形を中心に、日本における人形の歴史を紹介します。土偶から始まり、天児(あまがつ)、這子(ほうこ)、郷土人形、御所人形、嵯峨人形、衣装人形、竹田人形、芥子人形、加茂人形、市松人形、雛人形、博多人形、からくり人形、文楽人形、生き人形、創作人形まで、人形の歴史と文化を紹介します。

 

「親善・答礼人形」

人形は、人によって「いのち」を与えられ、歴史の中で常に人と共に存在してきました。しかし、私たちにとって人形とは何でしょうか。この疑問を考える上で、「青い目の人形」の存在は、忘れることはできません。

昭和2(1927)年にアメリカ合衆国の子供たちから、日本の子供たちへ「友情の使者」として12,000体もの「青い目の人形」が贈られました。日本へやって来た人形たちは、日本の各地の幼稚園や小学校へ贈られ、とても大切にされました。ところが、第二次世界大戦が始まると、「敵国の人形」として学校の廊下に吊るされ、先生や子供たちから竹やりで突かれたり、たたかれたり、火をつけて焼かれたりしたそうです。

「青い目の人形」自身は、何も見たり、聞いたり、痛みを感じたりすることはできませんが、人の心を鏡のように映し、人と共に喜んだり、悲しんだりしてきたことでしょう。広島県内で残されていた神辺町湯田小学校(メアリー)、呉市仁方小学校(ルーズ・ナオミ)、尾道市浦崎小学校(ドリス・プリーズ)、鞆幼稚園(ドロシー・フィリップス)を紹介します。

 

現代人形芸術の潮流

人形作家の辻村ジュサブローは、昭和19(1944)年に、満州から引き揚げてきて、20年の春まで広島市の楠木町で1年ほど暮らしました。その後、母の郷里である三次へ移り、終戦を迎えます。戦後になって訪ねた同級生の女の子とその兄の姿が、原爆の焼け跡のようにしっかりと焼き付き、「ヒロシマより心をこめて」という作品として「いのち」を与えられました。

1965年に開催された朝日新聞主催の現代人形美術展での受賞に当たっては、そのメッセージ性の強さから、審査員の間で物議を醸しました。その中で、堀柳女、鹿児島寿造の両氏が「これかれの人形だと思った」と語ったそうです。

辻村ジュサブローの他、招待作家として友永詔三、与 勇輝、四谷シモン、面屋庄甫、吉田良一など、現代人形芸術の潮流において重要な役割を担う作家に出品をお願いします。

 

創作人形コンテスト

「花の妖精」などのテーマを設定して、国内外からの出品を募ります。

  

左:夢の残像 右:蝶の妖精 ともに岩切映幹子

 

展示・販売(ショー&セール)

人形作家による作品の展示・販売と、人形関係のメーカーやバイヤーによる人形および関連グッズを販売します。

 

会議・参加プログラム

基調講演やパネルディスカッション、分科会、夜学などの人形会議や、人形劇&アトラクション、お宝人形コンテスト、腹話術、チャリティ・オークションを開催します。参加体験コーナーでは、折り紙人形、流木や石を使った人形、フェルト人形、編ぐるみ、創作てるてる坊主、にぎり地蔵、人形の病院など、さまざまなコーナーを設けます。

 

アフターコンベンションプログラム

グルメ&ドール夜学、日本郷土玩具博物館見学ツアー、平山郁夫美術館見学ツアー、瀬戸内海クルーズ、尾道骨董とグルメツアー、広島市内エクスカーションなど、広島の魅力を堪能していただきます。