平成11年・9月議会より

3回目

 お答えいただきました。ハッキリと「作る気はございません」というふうにいわれてしまいましたが、ちょっとはぐらかされた感じもしましたので、もう一回質問してしまおうかな、というわけで、よろしくお願いします。

 ここに1冊の本があります。タイトルは「桶川女子大生 ストーカー殺人事件」。筆者はニュースキャスターの鳥越俊太郎さん&取材班となっています。言わずと知れた、猪野詩織さんの事件のことが書いてあります。21歳の若さで、理不尽な暴力の犠牲となり、命を失った詩織さん。亡くなるまでも、嫌がらせに悩まされ続けました。

 警察の動きにも問題はありますが、法律や条例のバックアップがなかったことは、警察の動きを大幅に狭くしたことでしょう。当時一部のメディアでは、詩織さんを「イケイケのブランド大好き女子大生」に作りあげました。しかし、私から言わせてもらえば、イケイケのブランド好きで何が悪いのか。もっと悪いのは非常識な行為に走るストーカーなのです。私だって、皆さんご承知の通りか分かりませんが、ブランドは嫌いじゃないですよ。

 この詩織さんの虚像の発端は、警察の記者会見にあります。記者の「被害者の服装は?」の問いに、警察は「グッチの腕時計に、プラダのリュック」と答えています。マスコミの目を、捜査の初動ミスからそらすための絶好の手段として、ブランド名を利用したのではと、今言われています。私もそう感じざるを得ません。今の時代、ブランドの一つや二つ、普通に持っていますよ。彼女のことを思うと、心底心が痛みます。その苦しみは、とうてい言葉で表現出来るものではありません。一議員として彼女のことを考えると、今後このような被害者を絶対に出してはいけない、と思います。八王子市民には一人たりともこんな苦しみを味わってほしくない、と率直に思います。

 また、何かの度に後手後手に回り、非難される行政の姿勢にも疑問を感じます。それよりも、今のうちに効果が確かな対策を、しっかりと立てることが大事だと思います。事前の努力は、見込み効果が高ければ高いほど望ましいと言えますが、今回のストーカー規制法の補完条例は、まさにそういった見込み効果の高いものではないでしょうか。国は国民の生命財産を守る義務があります。私は、市にも同じように市民生活の安全を守る義務があると考えます。国の施策に取りこぼしがあれば、市がそれを補うのは当然のことです。それが私の考える、市民に対する安全保障です。

 今八王子は大変だと思います。今一番行政がやりたい事は財政再建ですね。週刊朝日の「主要100都市財政火の車度ランキング」。八王子は堂々のワースト43位。先日発行された市の財政白書を見るかぎり、まだ、というのは変ですが、福岡県赤池町のような「財政再建団体」つまり「倒産自治体」にはならないと思います。この猶予期間に財政白書を広報の臨時号を使って、市民にいい意味での危機感をあおる啓蒙啓発のプレゼンテーションは成功だと思います。この財政危機にこそ、何を行政はやらなくてはいけないか。予算はなくとも、アタマを使って、やる気と気持ちで出来る、市民の皆さんへの安全保障。市民のストーカー条例なんです。我が八王子の行政は多くの市民の皆さんからの拍手喝采でしょう。「市民の心のメンテナンス」のストーカー条例を打ち出してアタシたちの八王子が法の補完をする。つまりこれは行政から市民の皆さんへ対する安全保障ですよ。このことがどれだけ多くの市民の皆さんの、八王子市民としての喜び、そしてプライドにつながっていくことでしょう。行政のおかげで、八王子に住んだお陰で、八王子に引っ越して来たから、我々はのびのびと生活出来る。

 時のケネディ大統領の所信表明じゃありませんが、「国民がこの国のためになにが出来るのか」「八王子市民として何をこの街にしてあげられるのか」私は市民の代弁者として選ばれているという立場にありますが。何でもかんでも行政まかせというのは如何なものか、と考えてるリベラルな皆さんの代弁者だと思っています。多くの市民の皆さんにとって八王子の風土、風俗、歴史伝統、未来予測図を考慮したどこよりもしっかりと整備されたストーカー条例を打ち出すということは、どれだけ、八王子市民としての喜びやプライドに結びつくことか。宮城県、長野県、栃木県、顔の見える知事が誕生し、地方それぞれの特色がはっきりとしていく21世紀。あれもこれもの行政から、「オンリーワン」をもつ行政が生き残れる時代となるのではないでしょうか。

 我が八王子も、八王子と言えば例えば日本一整ったストーカー条例が制定されている街。そういった観点からも、ストーカー法の不備を補うような条例は必要だと思うのですが、もう一度お答えいただければと思います。事件があってからでは遅いなと思います。市長と私とでは年齢にやや開きがありますので、モラルなどの考え方なども違うと思いますが、いま大変危機的な状況にあるということをぜひ認識していただいて、ストーカー条例を作っていただければな、ということで一般質問を終わります。ありがとうございました。

市長

 再度のご質問でございますけれども、全国各地で発生しております、ストーカーおよびストーカー行為による卑劣な犯罪ってものは、新聞報道で読むたびにですね、これは心から憤りを感じています。そのことはまさに同感であります。もちろん、市民にはひとりでもこういうふうにあって欲しくない、これは私の心からの願いであります。ただですね、市が独自の補完条例を作るって事については、私はどちらかというと、大向こう受けをねらうよりもね、やはり実質的なものを大事にしていかなきゃいけないんじゃないかなって思ってるんです。例えば八王子市で独自の条例を作っても、当然の事ながらこれの実効性って事を考えたら、警察との連携は欠かす事の出来ないわけで、警視庁との綿密な調整が必要となると思います。これは私はやはり東京都のレベルでやるべき事じゃないかなって思っておりまして、実質的に実効性の乏しいと思われるような条例を八王子市独自で作ったところで、私はあまり意味はないんじゃないか、っていうふうに思っております。警察でも、法に触れない場合でも、状況に応じて防犯指導や相手方への指導警告、関係他機関の紹介など、被害者の立場に立って適切な自衛対応策を具体的に支援していくというふうに明言しておりますので、こういう点では私は、警察の対応というものも期待をして見守っていきたいとこのように思っていますから、ぜひご理解をいただきたいと思います。

 

質問を終えて

 結論からいうと、市長さんにはハッキリと「NO!」と言われてしまいました。しかし、埼玉県をはじめ10の県でストーカー法を補完する条例ができているのは、それだけストーカー行為の規制を求める声が大きく、またそれだけ多くの人が法の不備を指摘しているということのあかしなんですね。ですから、今回の「NO!」は、毎度拍手喝采の石原都知事のものとは違って、かなりヒンシュクですね。

 しかも引き合いに出すことはといえば、「恋愛とストーカーの線引きが難しい」とか、「実質的に実効性の乏しいと思われるような条例を八王子市独自で作ったところで、私はあまり意味はないんじゃないか、っていうふうに思っております」なんてこと。そもそも恋愛とストーカー行為の線引きが難しいから、ストーカー法でストーカーを取り締まれないんですよ、市長さん。論点がズレてしまっているし、問題への危機意識が全く感じられません。「もちろん、市民にはひとりでもこういうふうにあって欲しくない、これは私の心からの願いであります」とは言いますが、願っているだけじゃ何もかわらないんです。実際にアクションを起こさないと。悲惨な事件が起こってからでは遅いんですよ。

 そして、条例に実効性を持たせるのは、作り手である行政の能力の問題です。作る前から実効性に対する疑問を持っているということは、八王子市の行政にその能力がないことを証明しているようなものではありませんか?