税理士制度の改革


税理士制度は「税務代理士法」の制定から、約半世紀が経過しました。昨今では、OECD
加盟国で、納税者の権利保護の重要性が認識され、その権利範囲の拡大、実質的保護の
配慮が進められています。しかしながら、我国では、「納税者の権利憲章」の制定もされて
おらず、欧米先進諸国と比較して、かなり遅れていると言わざるをえません。最近では、税
金の使途にも関心がもたれてきていることから、徐々に税金全般への意識を高め、さらに
納税者の権利擁護の明確な法制化が望まれるところです。

納税者が税務行政の処分に不服がある場合には、税務署に異議申立て、さらに国税不服
審判所に審査請求出来ます。この際、不服申立て人は税理士を代理人とすることが出来ま
す。ところが、国税不服審判所の裁決にも不服で、裁判所に訴える段階になると、裁判所の
許可を得て輔左人となる途だけしか残されていません。税理士が、より強固な立場から納
税援助を果たすためには、輔左人申請を届出のみとするか、税理士が訴訟代理人となるか
にする必要があります。

現行の税理士会は強制加入となっています。国税局の管轄地域と同じく、税理士会も構成さ
れています。ただ、東京国税局管内は東京税理士会、東京地方税理士会それと千葉県税理士会に、
名古屋国税局管内は名古屋税理士会と東海税理士会に分かれています。税理士会の下部組織として
各支部があり、これは全く税務署の管轄地域ごとに支部が構成されています。このような組
織構成は国税当局の監督上に都合の良いように組織されており、本来は自主的な組織構成
であるべきです。

各税理士会の上部組織として、日本税理士連合会があります。この団体が、日本の税理士を
まとめている唯一の団体なのですが、この会員というのは、各税理士会の会長、副会長だけ
で構成されているのです。ですから、数十人しかいないわけです。日本税理士連合会として、
税理士にまつわる重大な決定を下す場合にも、個々の税理士個人には参政権がありません。
各税理士会の会長、副会長を通してのみ、参政できる、つまり、間接民主制なのです。税理
士全体に係る重大な決定を下すのに、個々の税理士の意思が直接伝わるように制度改正を
しなければならないのは自明の理です。

税理士の資格を得ているものの、半数以上は税理士試験合格者以外となっています。このこ
とは、税理士として高い資質を保ち、社会的信用を得るための障害となっています。税務官
庁出身者を一律に勤続年数により税理士資格を与えるのを廃止し、専門の税法は一定の勤
続年数により試験免除とするが、その他の簿記論、財務諸表論、専門税法以外の税法等は
本試験に合格しなければならないようにすべきです。大学院の修士課程修了者ですが、税理
士の実務とは無関係な専攻が多く、進学率の向上により修士課程は一般大衆化しています。
又、税理士を無試験でとれることを宣伝文句として、大学院生を募集する商売上手な大学も
増えてきました。この際、この修士課程終了の免除要件は廃止して、せめて博士課程修了者
と改めるべきです。

弁護士や公認会計士も税理士の資格を無条件に取得することが出来ます。このことが、世間
一般に、税理士よりも上位の資格として認識されています。それぞれの資格は専門とする職
域が違うのであり、上位も下位もありません。ですから、税理士となるためには、司法試験や
公認会計士試験の試験科目には無い科目は、その本試験を合格した者だけが税理士となる
ようにしなければなりません。


税務行政の問題点

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