税務署からは色々な書類が届けられますが、納税者としてはこれらについて全て提出義務が
あると思い違いをしている方が多いのではないでしょうか?法律上提出義務がある「法定文書」と、
任意に提出をお願いする「法定外照会文書」の2種類があるのです。
平成18年度の税制改正で「法人の事業概況説明書」は法律上も正式の添付書類として義務化され
ましたが、それ以前は法定外の任意の照会文書でありました。任意の照会文書時代には、下記の
ようなことが行われていました。
法人の決算期には、確定申告書等が郵送されて来ますが、郵送物の表紙に書いてある文面によると、
「確定申告書や附属書類は、次の部数を提出して下さい。」として、1.確定申告書1部、2.勘定
科目内訳書1部、3.法人の事業概況説明書1部となっています。この文章からは全ての書類が提出義
務があるような書き方をしています。ところが、上記3の法人の事業概況説明書の左上に、読み取れ
ないような小さな字で、(お願い)とあり、「この事業概況説明署は、貴社(貴法人)の事業内容.
..中略...提出される法人税申告書に一部を添付して提出してください...後略。」となって
います。(お願い)と小さく書いてあっても、法律上はどうなのかは触れていません。法人税法施行
規則第35条で、財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする。1.当該事業年度の損益の処分
表、2.当該事業年度の貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目内訳明細書、3.当該事業年度に
おける資本積立金額の増減に関する明細書」となっています。そうすると、法人の事業概況説明書は
何ら法的根拠のなく提出義務のない法定外文書のわけです。法律上提出義務のある文書と同列に並べて、
提出を促すのはおかしなことです。それに、この事業概況説明署を提出しないでいると、督促の葉書
まで出していました。以上のような問題点があり、平成18年度の税制改正で、正式に法人法施行規則
第35条に、「法人の事業等の概況に関する書類」として記載されました。
新しく土地や建物を購入すれば、資産税部門から「土地建物購入についてのお尋ね」が来ますし、土地
建物を売却して確定申告のときも、「譲渡内容についてのお尋ね」を分離課税の申告書に添付して提
出するように書いてあります。法治国家である我国で、法律上提出義務があるかないかを明確にする
ことは常識ではないかと思います。国税庁は常に税金を徴収する立場から、あまり提出義務が無いこと
を明確にすると、誰も提出しなくなり、税務行政に支障が出るとでも考えているのでしょうか。現場の
税務職員にも、このような「お尋ね文書」が法律上は提出義務が無いことを知らない職員も見受けられ
ます。半ば、強制的に提出を迫り、提出しないものは脱税しているから提出できないんだとばかり脅か
すものもいます。何も、照会文書を出すことに反対はしませんが、法律行為なのか任意なのか、誰でも
判るように大きな文字で「ことわりがき」をいれてもらいたいのです。
現在の曖昧な状況では、正直者、知らない者を「騙し討ち」でもして、税金をもぎ取ろうという魂胆が
見えます。正直な納税者が「お尋ね文書」を提出義務があると思い、細かく回答したばかりに、些細な
ミスをつかれ追徴課税されるのに対し、全く非協力な納税者はそんな「お尋ね文書」など回答しないから、
追徴を免れるようなことが煩雑に発生しています。我国の税務行政は、常に税金を徴収する立場から行
われており、徴収するのに都合がよくなることばかりです。納税者が主権者であるのですから、国税庁
は納税者を丁重に扱い、常に説明責任があるはずです。そのような曖昧な文書を放置することはできま
せん。本当に税務行政上において必要な文書であれば、法律上明記すべきです。それができないなら、
法律上提出義務の無いことを明確に納税者に判りやすく開示しなければなりません。