人件費の調査


給料、賃金、アルバイト、パート等については、取引先と通謀する必要がなく、
会社単独で架空を計上できるので、比較的不正が多く行われています。調査上、
要求して調べる書類としては、給与台帳、扶養控除等申告書、履歴書、出勤簿
(タイムカード)、座席表、組織図、従業員住所録等を出させます。 重点的に
目を付け検討するのは、@源泉徴収をしていない人、A社会保険に加入してい
ない人、B通勤手当、残業手当等の諸手当がついていない人、C履歴書がない
人、D出勤簿(タイムカード)がないか、あっても不自然な人、E住所、電話
番号がわからない人、F毎月定額支給の人、G座席表、組織図に名前が載って
いない人等、以上に該当する人をリストアップします。これらの人について、
どのような仕事で、今何処で勤務しているかを社長に聞きます。ここで、その
答えがあやふやで疑問が残るようであれば、その人をこの場所に呼び出させる
か、他の場所にいるならば電話を架けて確認するようにします。これで確認で
きれば良いのですが、社長がある従業員に架空計上した人物になりすますよう
口裏を合わせている場合もありますので、色々質問して挙動、言動に不自然な
ところがないか注意深く観察します。

それから、その不審な人については、市区町村に住民票及び住民税の照会文書
を出します。これで、何処に住んでいて、勤務先等がわかることにより、架空
人件費を発見する場合もあります。ただ、これがあるからといって、本当に勤
務しているかどうかはわからないのです。実際は会社で働かせているのではな
く、社長の愛人としての手当てを給料としているかもしれないのです。

不正の手口として多いのは、アルバイト、パートを使っているとして、毎月8
万円を架空計上しているケースです。8万円ですと、源泉徴収する必要も無く、
住所氏名を借用しても、夫の方で配偶者控除を受けられるので、実害が無いわ
けです。ある会社では、例のとおり8万円のパートが3〜4人いて、1年間ずっと
定額で支給されていました。これらのパートは、出面帳(何処の現場にいった
か書いてある帳面)に載っていない、通勤手当、旅費がつけていない、何月何
日勤務したかの表も無く定額を支給している(他のアルバイトは1ヶ月毎の勤務
表があり、時給で支給していた)、パート代は会社近くの銀行に振り込まれて
いた(パートの人は会社とはかなり離れた所に住んでいる)等のおかしな点が
いっぱいありました。

税務調査があり、調査官から色々とこのような点を聞かれました。このパート
は今日何処の現場にいっているのか、又これから行くところ何処か聞かれまし
た。社長は、最近は都合が悪くて来ていないと回答しました。そこで、調査官
はそのパートに直接電話で問い合わせました。すると、びっくりする様子や嫌
がるとか、何のために質問するのかと文句を言うどころか、質問にも考える間
もなく、スラスラと答えました。これがますます不審を高めたようで、住民票
及び住民税の照会文署が出され、回答がくると、そのパートには子供が3人で、
4歳、2歳、0歳です。そのパートの両親も同居していなく、近所にも住んでいま
せん。とても、外に働きに出るのは不可能に思えます。決定的なのは、出産前
後にもパート勤務していることでした。そこで、調査官はそのパートの自宅を
予告無しに訪ねました。そこで、奥さんに、そのことを聞くとあっさりと認め
ました。社長の奥さんとは学生時代の友人で、会社が大変だからといって頼ま
れました。税務調査があるので、そちらに電話がいくかもしれないので、事前
にどのように答えるかを打ち合わせしたそうです。その謝礼として、2万円現金
書留で送って来たそうです。この会社は、その後この人件費を否認され、本税
の他、重加算税を課せられたのは言うまでもありません。


税務調査の仕方

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