仕入、外注費の調査


仕入、外注費を架空あるいは水増し計上するには、相手方との通謀が不可欠です。
仕入、外注先に対して、請求書を架空分を上乗せさせて送ってもらい、一旦その
金額で支払うが後で裏金としてバックしてもらうのが一般的です。その際、仕入、
外注先には通謀の謝礼があるので、バックしてもらうのは全額ではありません。
この方法は、一時世間を騒がせたゼネコンが政治家等へのヤミ献金を捻出するた
めの常套手段です。新聞等で大手ゼネコンの使途不明金が年間何十億、何百億円
と書かれていますが、この方法での裏金は税務調査で見つからない限り、全く使
途不明金等にもならなく損金に計上されているわけですので、本当の裏金は公表
されている使途不明金の何倍もあります。下請け等の中小企業は、大手の得意先
からの誘いに断ることができなく、又、通謀に協力することで、売上金が水増し
で入ります。ただ、売上先にバックする支出については、当然損金として計上で
きないので、頭を痛めます。社長の報酬を高く取り、その中から支払ったり、会
社の仮払金としたりするのはまだ良い方ですが、その分を架空仕入、架空外注費、
架空人件費等につけているところがかなりあります。

この方法は、会社ぐるみで裏金をつくる場合もありますが、会社の購買部長等の
ような発注に権限のある人が自分の金をつくる(つまり会社の金を横領すること)
場合も当然あります。下請け先とその得意先の購買部長等とは、お互いの利害が
一致しますから、どちらとはなく、「売上を水増しするから、その半分は裏で返す」
と話がついてしまうことになります。某電機メーカーの部長は、輸出手続の代行す
る下請け先を使って私腹を肥やしていました。下請け先に支払う手数料を水増し
請求させて、その半額を裏金で自分の懐に入れていました。この下請け先は部長に、
この不正経理に協力しないなら他にいくらでも替わりはいると脅かされ、渋々従っ
ていました。この会社は売上が急激に伸びたのですが、裏金の返却は領収証がない
ので困っていまい、親戚の商売をやっているところから領収証をもらい、支払手数
料として損金で落としていました。その後、税務調査があり、この支払手数料が異
常に多いので問題となり、架空に計上しているのがバレてしまいました。この手数
料は親戚に払ったのではなく、本当は某部長に払ったのですが、領収証がもらえな
いので親戚の領収証を貼っていたのでした。本来なら、この部長が確定申告すべき
収入なのですが、確定申告すれば会社にわかってしまう虞があり、業務上横領で懲
戒免職となってしまうかもしれません。下請け先も、税務署にその部長の氏名、住所
を出すともう仕事を回してもらえず潰れてしまうので、使途不明金として自腹を切
って税金を納めることになりました。架空の領収証をつけていたので、重加算税もと
られてしまいました。しかし、こんなことで良いのか疑問が残ります。本来、会社を
食い物にして私腹を肥やして所得があり申告すべきなのは部長なのですが、下請け先
が税金をかぶっているのです。日本中で、このようなことが政治家、官僚を頂点と
して大会社から中小会社までピラミッド上に、下のものから裏金を吸い上げる構造に
なっています。中小会社からの裏金はゼネコン等の大会社を通って、最後は政治家、
官僚に流れているわけです。

税務調査で、このような不正経理を発見するのは容易なことではありません。納品書、
請求書等のとおり決済されているので、表面上は問題がありません。反面調査をしても
相手方は売上が計上されています。納品書、請求書等に記載されている単価が、通常の
取引と比較して高すぎないか?数量が水増しされていないか?やってもいない仕事を請求
していないか?等に注意を払うわけです。単価の場合は同じ商品等について、他の仕入業
者から仕入れれば通常いくらぐらいか検討して、異常に高ければ問題となります。数量
については仕入数量、売上数量そして棚卸数量を計算してみれば、すぐわかります。架空
外注費等については、外注先に反面調査に行き、出面帳で従業員等が仕事に出向いている
かを調べれば判明します。

使途不明金ばかりがマスコミで問題となっていますが、使途不明金は課税されているの
ですが、課税されずに損金となり裏で回収している金がその何倍もあり、その金は政治家
へのヤミ献金や私腹を肥やす部課長の懐に入るというドロドロとした裏金があることが問
題視されるべきでしょう。


税務調査の仕方

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