現況調査


現金商売であれば、売上伝票、領収証の控やレジペーパー等がなければ、売上の
証拠資料としてとして残りません。小口の個人相手等の領収証を発行しない売上
を、少し除いても調査官にはなかなか発見するのは難しくなります。しかし、全
売上の3割以上の売上を除外すると、売上総利益率(荒利、売上−仕入/売上)が、
他の同規模同業種と比較して異常に低い比率になり、目をつけられます。 小売業者
、バー、スナック、レストラン等の現金を扱う業種については、調査着手前に外観
調査といって、店の様子、立地条件、客の入り具合、近所の金融機関や取引先、代
表者の自宅等を住宅地図で調べた後、実際に現地に行って様子を見て来ます。しば
らくしてから、今度は内観調査といって、小売店ならば客を装ってその店で何か買
い物をして来ます。この時、1万円札を事前にコピーしておき、必ず1万円札で支払
います。もちろん、買い物の最中も、店の様子を店員に気づかれないように探ります。

ポイントは客が何人ぐらい入っているか、レジはあるか、あれば打っているか店員は
何人いるか、主な商品の値段を控えておく等、さり気なく見ておきます。スナック等
の飲み屋についても、この内観調査はやります。この場合は4〜5人ぐらいで、調査担
当者は顔を知られるとまずいので行かないようにして、普通の客を装って飲みに行きます。
これは調査費用ということで税務署からお金がでます。ただ、予算の限度があり、調査
官が自腹を切ることも結構あります。飲んでいても、仕事を頭から切り離すわけにはい
きません。調べることは、座席数がいくつあるか又客が何人来ているか、ボトルキープ
してある数は、ビール1本、主なつまみは等はいくらか、レジはあるか、あれば打って
いるか、店員は何人いるか等を横目で見ておきます。又、支払いも小売調査のときの
ように、事前にコピーした1万円札で支払います。

こういった外観調査及び内観調査をして、さらに申告状況を検討して、いよいよ調査に
着手することになります。現金商売の場合には、無予告といって、調査にいつ来るか事
前に連絡無く、突然やって来ます。それも、店ばかりではなく社長の自宅にくる場合も
あります。税理士法では、調査に着手する場合には顧問税理士に事前に通知することに
なっていますが、国税庁の見解では、調査上必要な場合にはこれを省略出来るとしてい
ます。ただ、これは査察のように裁判所の令状を持った強制調査では無く、あくまでも
納税者の同意を得て行う任意調査です。従って、予告無しに突然来ても仕事の都合上あ
るいは私的にでも大事な用があれば、延期をしてもらうことはできるので、はっきりと
調査官にその旨を言うべきです。

突然やって来て何を調べるかというと、先ず昨日の売上が正しく帳簿に記帳されている
かを調べます。現金商売ですと、古い売上については除いた売上分の証拠資料となる売
上伝票、レジペーパーや領収証の控等を破棄してしまうことが多いので、昨日の売上な
らまだ保管しているので調べることが出来ます。このとき、内観調査に使った1万円札が、
昨日の売上分の現金の中にあるかも調べます。コピーしてあるので番号で有るか無いかが
分ります。もし、無ければ脱税の疑いがあり、代表者に厳しく追及します。何故1万円札
を使うかというと、一番高額の紙幣であり、おつりとして出て行かないで店に必ず残る
ことになるからです。現金出納帳の残高と実際にある現金残についても突合しますが、
もし合わない場合にはその理由について説明を求めます。

その他、金庫があれば開けてもらい、そこに入っているもの全てを見て行きます。預金
通帳についても会社名義だけではなく社長や社長の家族名義のもの全て提出を求めます。
印鑑についても、全て印影を取って行きます。「資料せん」があれば、売上帳と突合し
ます。こういった調査をしても、はっきりとした証拠がつかめない場合には、外観調査
や内観調査で把握した客の入店状況、利益率、会社や社長の生活状況資産の保有動向な
どの状況証拠から、社長を説得するかたちで脱税の事実を認めさせます。売上を除外した
現金を銀行や証券会社等で運用していれば、その銀行、証券会社に反面調査に行きその
取引を調べて来ます。もし、売上を除外している事実を認めさせれば売上の証拠書類は
無い場合が多く、1日いくらでそれを1年営業した日数を掛けそれを5年又は7年掛けると
いった概算になります。


税務調査の仕方

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