税務調査は国税局又は税務署の所掌の部門で、税歴表及び申告書を検討して、
統括官(統括国税調査官)が調査担当者(上席国税調査官、国税調査官、事務官。
国税局では主査)に指令します。調査の1〜2週間前には、顧問税理士及び調査する
会社の社長に電話連絡をしています。何年に一回ぐらい調査に入るかは決まっては
いませんが、会社の規模、業績及び過去の調査事績等により異なってきます。税務
署の特別調査官が所掌する会社では2年おきぐらいですが、売上が数千万円以下の零
細な会社等はほとんど調査は行ってはいません。国税局所掌の大規模法人は連年調査
をしています。それ以外の特別調査官と零細な会社の中間クラスは3〜5年おきにはい
ります。
調査に入る前に、調査担当者は「準備調査」といって、申告書の損益計算書及び貸
借対照表の科目について前年対比をします。前年に比較して異常に増加又は減少した
科目はないか調べます。又、売上総利益率(荒利)が変動していないかを見て、調べる
項目を絞り込みます。「資料せん」にも目を通しておきます。「資料せん」とは、
調査する会社と取引がある会社又は個人から、取引内容及び金額を書いた資料で、
調査や法定資料として収集したものです。 調査担当者は、会社に2〜3日間に渡り、
午前10時頃から午後4時過ぎまでくるのが一般的です。初日の午前中は会社の概況
を聞き、会社案内、組織図、役員及び株主名簿等を求めて来ます。又、世間話をしな
がら、社長さんの家族構成、出身地、趣味等を聞きます。この世間話等が重要なキー
ポイントで、ここの社長は何にお金をつぎ込んでいるのかを探るわけです。税務署の
調査マニュアルにも、初日の概況に重点を置くように書いてあります。一見親しみや
すいように帳簿等を見ずに、社長さんの家族、田舎、趣味等を話していると、安心し
てしまい、ついいらないことまで話して墓穴を掘るようになります。ベテランの調査
官ほど、ここの概況を聞くのがうまく、新米ほど帳簿等を見ます。
そして、初日の午後からいよいよ帳簿等を要求して来て、調査を始めます。調査官
は午後4時頃には調査を終わり税務署に戻り、統括官に復命をします。これは、今日
調査した事項を説明し、指示を仰ぐものです。明日はここを調べろとか、何処何処に
あれを確認しろとかの指示をします。 それで、次の日は統括官に言われたことを確認
をする調査をします。午後には、今回の調査の総括として、問題点を指摘して、宿題を
出したり、あるいは調査官が自ら反面調査(取引相手に行って調べること)をします。
順調にいって、調査の日から1〜2週間後に、今回の調査のまとめで話し合いたいので、
税務署に来て欲しいとの連絡があります。税務署に、社長と税理士が出向き、担当統括
官と調査官とで問題点について話し合います。税務署の指摘事項について、社長及び税
理士が納得すれば、それについて修正申告をして納税すれば調査は終わります。もし、
納得できなければ、税務署が「更正決定」をして来ますが、税務署に「異議申立て」、
それでもだめなら国税不服審判所に「審査請求」ができます。その後は裁判所で争うこ
とになります。