大量の情報収集


税務署で効果的に脱税を摘発するためには、有効な「資料せん」を収集することが必要となり
ます。このため税務署では資料の収集には力を入れており、個人課税部門の中に「資料担当」
があり、又、大規模署には「資料情報特官」が置かれています。「資料担当」は署内で各調査
官が収集した資料せんの集計、管理を行っています。「資料情報特官」は官公庁、公共法人、
公益法人その他有効な資料が大量に収集できる法人に臨場しています。

法人課税部門にも「機動担当」がいて、法人税調査や反面調査に同行して有効資料を収集し
ています。特に、銀行に反面調査のときは必ず同行して、「横目資料」といって反面先以外
のところもついでに見て資料を収集しています。何故「横目」かは、漢字そのままで横目を
使って見ないふりをして他の資料を収集するからです。その他、一般部門の調査官も税務調
査した納税者からは、調査中に有効と思われる資料を10枚以上はノルマとして収集します。

特に、確実に脱税を摘発する資料せんを「重要資料せん」といっています。資料の活用先の申
告書等を調査して、脱税の裏付けをとって切るので、かなりの効果をあげます。資料せんが赤
い色をしているので、「赤紙」とも税務職員もいっています。資料担当や機動官はこの「赤紙」
何枚収集できたかが、勤務評定となるため必死にかき集めています。納税者にとっては、調
査官が「赤紙」を持って来たら、身に覚えのある方は覚悟を決めたほうがよさそうです。いつ
の時代も「赤紙」は恐いものなんですね。

税務署では納税義務者の資料や情報は驚くほど色々なところから集積し、税務調査に活用
しています。20年ほど前に、預貯金の非課税限度額(マル優)をグリーンカードによっ
て管理するため、朝霞に大型電算センターを建設しました。しかし、自民党の大物代議士(脱
税容疑で逮捕された方)が実地直前に廃案としてしまい無用の長物になってしまいました。
この大型電算センターの有効な使い道として、納税者のあらゆる情報を入力し、税務調査に
役立てています。

国税局や税務署の調査官が税務調査によって収集した「実地調査資料せん」、登記所から
土地建物の「不動産登記」や法人の「商号登記」、官公庁から収集した「特別資料せん」、
毎年1月末に提出しなければならない「給与の源泉徴収表」や「法定調書」、市中銀行が日
本銀行に提出する「外国との入出金報告書」、新聞週刊誌等の「探聞資料せん」等その他さま
ざまなところからの情報をインプットします。そして、これを納税者、年度ごとに分類してアウ
トプットし、所轄の国税局や税務署に送り税務調査に活用しています。各国税局や税務署にも
端末が置かれており、調べたい納税者や取引先等について、概況や申告状況は瞬時のうち
に調べることができます。

上記の「法定調書」には数多くの種類があり、これが提出される収入についてはごまかしても、
すぐに税務署でわかってしまう仕組みになっています。「報酬、料金、契約金及び賞金の支払
調書」では原稿料、印税、講演料、弁護士、税理士、外交員、芸能人、ホステス等の支払いに
ついてです。「不動産の使用料等の支払調書」、「不動産等の譲受けの対価の支払調書」、「不
動産の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」等で不動産関係の取引です。

国税庁では更に高度化したシステムを導入中で、「KSKシステム」と呼んでいます。これは
国税総合管理システムの頭文字を取ったものです。納税者の申告内容をOCRで自動的にコン
ピューターに入力して、あらゆるところからの情報と突き合わせて、脱税の疑いがあるものを
選定するものです。例えば、申告書の内訳にある公表取引銀行を、あるいは銀行から提出させ
た取引リストを入力したものと,色々なところから入手した資料せんの取引銀行が異なっている
場合などは、売上を簿外の銀行でで取り立てている可能性があるとして、自動的に税務調査に
選定するものです。


税務署に詳しくなる話

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