税務職員の異動


毎年、7月10日は税務署の定期異動日です。役所関係は民間の4月と違って、6〜7月に
異動する場合が多いようです。これは、会計年度(4月〜3月)の後始末が終わるのがこの
時期だからです。

税務職員も一介のサラリーマンで、やはり、この人事異動は最大の関心事です。異動の2
〜3ヶ月も前から、にわか人事課長が出現し、もっぱら酒のさかなになります。川を何本
超えるとか、「あ」のつく税務署だとか、ニセ情報、ガサネタも飛び交います。
内示は辞令の4日前に言い渡されますが、遠方で引っ越す必要があれば、1ヶ月前ぐらい
に言われます。だいたい、事務官、調査官、上席クラスで3〜4年、統括官、副署長クラ
スで2年で異動し、署長は1年程で勇退することが多いようです。

戦後の混乱期に外地からの引揚者等を大量に税務職員として採用しましたが、その殆どの方
が退職しました。その穴埋めに、新卒者を大量に採用することになり又、中堅クラスは国税局
に吸い上げられて、税務署は若手ばかりになってしまった時期がありました。ところが、現在は
その若手だった人たちが、上席、統括官になり、新卒採用が減り、事務官よりも中年の上席、統
括官の方が多くなっています。年代間での人員数が歪つとなっています。

法人の一般調査部門は統括官以下5人編成ですが、上席と調査官が1名で、他は事務官が
2名となる場合が多いようです。この事務官は調査1〜2年目の初心者です。

今や、税務職員の平均年齢は大幅に下がり、半数は30歳以下の独身者となっています。
統括官もこの調査の初心者ばかりで、同行指導の負担が増してきて、大規模署では研修担当特
別調査官が新設され、新人に実地訓練するようです。

もっと深刻な問題として、大量退職者が続いた後の最近は、少ない採用者の退職時期のため、
人事がかなり停滞していることです。退職者が少なく、上が詰まっているために、なかなか上位
のポストが空かないため、昇進する人事ができなくなっています。統括官に昇進する年齢も、
2〜3年は遅れるようです。

国税専門官や国家公務員V種の普通科採用は、各国税局で採用ですので、原則としてその採用
された国税局内の税務署の異動となります。異動については、本人の希望を申告することになっ
ていますが、そのとおりにはなかなかなりません。

昇進するためには、税務大学校での成績ばかりではなく日頃の勤務評価の他、やはり上司の推薦が
大きいようです。役職に着くためには、東京都などで行われている試験は一切なく、全て選考によ
っています。財務省や国税庁採用者のように約束されたポストはなく、出世するものとしないもの
とは大きな差となります。出世頭は東京国税局でいえば、五大署(麹町、神田、日本橋、京橋、芝署)
の署長になるか、調査三部長四部長になるかです。逆に、全く出世しないとなると、税務署の上席
調査官のまま定年を迎えることになります。

署長まで出世するためのコースは殆ど決まっています。税務署ばかりを異動していてはかなり難しい
でしょう。税務大学校を優等で卒業するか、上司推薦を受け財務省や国税庁に出向して連日深夜勤
務に耐え、課長補佐にまでなり、そして税務署にでてくるのです。その二は、国税局の総務課、主
主務課(所得税課、法人税課、資産税課、消費税課)等に入り、課長補佐にまでなり、副署長で出
てくるのです。その他は、調査部、査察部ですが、職員が多いので、大変な競争となります。

税務職員は、自分の専門とする税目が決められていますので、原則としては、同じ税目に一生従事
することになります。しかし、交流といって、3年間違う税目に従事する機会もありますし、転課
といって、違う税目に変わる場合もあります。

国税専門官も普通科採用者も最初は大蔵事務官です。国税専門官採用者は、3年後の専科研修終了
時に全員一律に国税調査官に昇進します。普通科採用者は、採用8年後から国税調査官に昇進して
いきますが、これは全員一律ではありません。

その後、国税局の実査官、調査官や税務署の会計係長、総務係長になる人もいて、その後、上席国
税調査官に昇進となりますが、これは国税専門官採用者も普通科採用者も3〜5年は差が生じてき
ます。出世しない人はこのまま上席で60歳の定年を迎える方もいます。

その後は、国税局の係長や税務署の総括上席、総務課長補佐になる人もでて、その後国税局の主査
や税務署の統括国税調査官となります。

その後は、国税局の実務指導官、課長補佐、税務署では、第一統括官や総務課長となるもいて、そ
の後は特別調査官、副署長等になります。

副署長が終われば、税務大学校教授、国税局の調査部の特別調査官、統括国税調査官、そして、国
税審判所の審判官、国税局の課長等を歴任して、最後に56〜57歳で、出世双六の上がりの税務
署長となります。署長となり、1〜2年で58歳となり、定年の60歳まで2年を残し勇退します。


税務署に詳しくなる話

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