任意整理


任意整理

任意整理とは,裁判所などの司法機関を利用せず,私的な話し合い等により,個人の
債務を整理したり,倒産した会社を清算することです。

個人のサラ金業者等からの借金については,弁護士に依頼して整理することができます。
弁護士は,@債務の調査,A債務の確定,B整理案の作成,C貸金業者との交渉,D整
理案に対する各業者の同意,E返済の開始という手順になります。こういった方法で,
債務額の2〜3割を分割返済する和解をとることも可能です。

会社の清算

倒産した会社については,法律によらず任意に整理する方法があります。私的な話し合
いにもとづく整理で,特に法律に手続きが定められているわけではありませんが,おお
むね次のような手順で行われます。

T.債務者あるいは債権者から,各債権者によびかけて債権者集会が召集されます。
会社 の将来について(破産,私的整理,債権か)話し合い,債権者委員を選任します。

U.委員長を選任します。委員会は,各債権者からの委任を受けて整理を進めます。

V.委員会は会社財産の状況を調査し,保全の必要があれば保全手続をとります。
又,債 権者,債権金額を確定させます。

W.委員会が作成した整理案につき債権者集会の承認を得ます。整理案が承認されれば,
財産を処分し配当をして,引き換えに,各債権者から残債権の放棄書を受領します。

以上の整理が完了するまで,短くて3ヶ月,長いと何年もかかる場合もあります。この
私的整理はあくまでも倒産関係者の私的な話し合いにもとづくものですから,債権者委
員会が設置され,整理案が多数決で承認されたとしても,それが法律上当然に全債権者
を拘束するわけではありません。

各債権者が,私的整理に参加するかしないかは自由です。債権者集会に出席しなくとも,
議決に参加しなくとも,債権者としての権利を失うわけではなく,独自に債権回収を進め
ることができます。

もちろん,債権者集会に参加して,整理案に合意すれば,その決議に拘束されます。

私的整理で注意したいのが,途中でプロの整理屋が介入してくることです。債権者に配当
せず,自分だけ甘い汁を吸う悪質な業者が多く,厳重な警戒が必要です。

破産の手続

破産とは,裁判所の監督のもとに債務者の総財産を強制的に換価したうえ,全債権者に
公平に配分する手続きです。破産は次のような手順ですすめられます。

@破産の申立...債権者あるいは債務者から破産の申立てがなされます。

A破産宣告...裁判所は,破産の原因があると認めると破産宣告をします。同時に,
破産管財人を選任し,以後,破産者の財産は,破産財団となってその管理処分権は,一切
破産管財人の手に委ねられます。

B破産債権の届出...破産財団から配当を受けるためには,破産者に対して有していた
債権を,一定期間内に裁判所に届出なければなりません。

C債権者集会...裁判所により招集され,債権者に対して報告説明が行われ,債権者の
決議が行われます。

D配当手続...破産管財人は届出債権を調査確定し,その後,破産財団の財産を換価し
ます。

E裁判所の破産終結決定...最後の配当が終了した後,破産終結決定がなされます。
相殺権と否認権

取引先が破産宣告を受けた場合,もし債権者が破産会社に対して債務を有していれば,
何時でも相殺することができます。

自分の債務が未だ履行期にきていなくとも,法律上破産宣告があれば,破産者は期限の
利益を失うとされているので,すぐに相殺することができます。なお,相殺の通知は破産
会社ではなく,破産管財人宛です。

破産管財人は,全債権者を害する行為を否認して,財産を破産財団に取り戻すことがで
きます(否認権)。

債権者による商品引き揚げ,破産者の行った贈与,一部債権者への担保設定等があります。

別除権

破産手続は,原則として全債権者に平等ですが,その例外として,破産者の特定の財産
に対して,抵当権や質権などの担保権をもっていた債権者は,この破産手続とは関係なく
担保権を実行して個別的.優先的に弁済を受けられます(別除権)。

又,担保物件だけでは,被担保債権全額が弁済されないときには,その不足額についてあ
らかじめその不足予定額を届出ておけば,一般の破産債権者とともに,破産財団から配当
を受けることができます。


経営実務

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