担保の必要性


担保は万が一のときに、自分の債権が確実に回収できるように、あらかじめ講じて
おく手段です。債権者は、原則として各債権者の有するそれぞれの債権額に比例し
て、債務者の総財産を換価して弁済を受けることになっています。これは、それぞ
れの債権者は皆平等であることを意味します。しかし、債権者としては、自分の債
権だけは他の債権者に優先して、確実に回収したいと考えます。そこで、登場する
のが担保ですが、物による「物的担保」と保証等による「人的担保」があります。
「物的担保」をとっておけば、その担保物に関する限りは他の債権者に優先して弁
済を受けることができまし、保証等人による「人的担保」をとっておけば、債務者
本人が弁済できなくとも、保証人等が債権者に弁済する義務を負ってくれますので、
回収できる可能性が大きくなります。

「物的担保」というのは、ある特定の物によって債権を担保しようという担保制度
のことです。物の担保をとっている債権者は、債務者がその債務を弁済できないと
きは、その担保に供されている物によって,他の債権者に優先して弁済を受けるこ
とができます。この「物的担保」には、民法に規定がある@質権A抵当権B留置権
C先取特権という四種類の他に、実務上の取引から生み出された@譲渡担保A再売
買の予約B買戻しC所有権留保D代物弁済の予約、仮登記担保等があります。土地
建物は担保物として代表的な物であり、抵当権の設定として使われます。

抵当権は、債権者が抵当権設定者(債務者または物上保証人)の占有を移さずに、
債務の担保に供した物件について、これをこのまま、その抵当権設定者に使用させ
ておき、債務の弁済がなされないときに、その抵当物件から他の債権者に優先して
弁済を受けることができる権利のことです。抵当権を設定したならば、直ちに登記
をしなければなりません。ことができるのが、抵当権等の「物的担保」であります
ので、速やかに登記をしなければなりません。

「人的担保」というのは、債務者以外の第三者が保証人とか連帯保証人として、本
来の債務者がその債務を履行しない場合に、履行の責めを負うものです。客観的な
価値をもっている物自体を担保にとっている「物的担保」に比べ、不安定な要素が
入ります。「人的担保」は、保証人や連帯保証人となる人の信用や一般財産をあて
にしているからです。「保証人」とは、債務者が債務を履行しないときに、債権者
に債権の弁済をする人です。債権者は債務者に対して請求することなく、いきなり
保証人に対して請求してきたときは、保証人は、まず債務者に請求せよと主張して
、 債権者のいきなりの請求を拒絶することができます(催告の抗弁権)。又、債権者
が債務者に催告した後でも、保証人が債務者は弁済できる資力がありかつ、それを
執行することが容易であることを証明して、まず債務者の財産を執行すべき旨を債
権者に主張することができます(検索の抗弁権)。「連帯保証」では、保証人が債
権者に対して債務者と連帯して、債務を履行する義務を負います。連帯保証人には
保証人では認められている、「催告の抗弁権」も「検索の抗弁権」も認められてい
せん。債権者は、債務者に請求することなく、いきなり連帯保証人に請求すること
ができます。逆の立場から考えると、債務者から「迷惑をかけないから、判だけ押
してくれ」と懇願され、つい保証人、連帯保証人の印鑑を押すはめになると、その
ことにより、全財産を無くしてしまう人もいます。保証人、連帯保証人を頼まれて
も、断ることに越したことはありません。引き受けるにしても、債務者の財産、信
用度を見極めなければなりません。

中小企業に対する債権については、債権金額を十分に上回る土地建物等の抵当権の
「物的担保」をとるのが安全ですが、そのような財産が無い会社では、代表者個人
を連帯保証人とすることが有効です。会社が倒産すれば、原則として、株式会社及
び有限会社社は有限責任ですから、会社財産で弁済すれば足り、代表者個人の責任
はとれません。代表者の責任を追求するには、裁判に訴えて、「代表者の重大なる
任務懈怠」あるいは「法人格の否認」を立証しなければなりません。この裁判では
大変な時間と費用を費やします、それよりは、最初から代表者個人を連帯保証人に
しておけば、会社が潰れれば、すぐに代表者個人に弁済を請求することができます。


経営実務

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