資金繰りの方法


会社を経営するものにとって、常に頭を悩ませるのが資金繰りです。特に、現在はバブル
時代の借金が重くのしかかっている会社も多くあります。毎月、試算表の他に資金繰表を
つけていれば、今月はお金が足りないか、余裕があるかは検討がつきます。損益と資金繰
りは一致しませんので、損益計算書では利益がたくさんでていても、お金は全然ないこと
も有り得ます。というのは、現在の会計基準は費用及び収益を現金主義ではなく発生主義
で捉えるからです。売上を計上するのは現金を回収したときではなく、品物やサ−ビスを
提供したときに計上します。建物、機械等の減価償却資産は購入したときに全額費用とな
るのではなく、耐用年数期間に応じて費用を配分していきます。もう一つ、利益と資金繰
りが違う理由は、損益計算書では売上と売上原価となるものは常に対応関係がありますが、
資金繰りでは材料、賃金、諸経費等は先にお金が出ていき、売上金として回収するのはか
なり後にずれて来ます。

従って、業績が非常に上向きになっているときは損益計算書ではもちろん利益が出ますが、
売上金以上に材料、賃金、諸経費等の支払いがあり資金繰りは非常に苦しくなります。そ
して、おまけに税金を納めなくてはならなくなり、ますますお金が足りなくなって来ます。
銀行等からの借入金はどこの会社でもあると思いますが、借入金を返すことは実は大変な
ことであることを再認識した方が良いと思います。借入金を返すこと自体は損金(経費)
とならないことは常識ですが、これが以外と判っていない経営者の方が多いのです。

例えば、単純化して利息を考えないで、土地とかゴルフ会員権等の非減価償却資産の購入
を想定します。5千万円の借金をして10年で返済で、1年で500万円を返すとします。1年で
500万円を返済するには、利益が年間500万円あれば返していけると考えがちですが、これ
がとんでもない間違いで、倍の1千万円の利益を出さなければ返していけないのです。1千
万の利益とは、つまり1千万円相当の資金的余剰(これは先程の話のように期間的に利益と
資金はズレますが長期的には一致します)が生まれますが、これから、法人税、事業税、
住民税等の支払いをすれば,残りは半分程になってしまいます。このように考えると、借入
金をするときには、年返済金額(利息も含んで)は年間利益金額の半分以下でなくては資金
繰りが苦しくなります。

資金繰りの見直しにはまず費用を変動費と固定費に分類することが必要です。変動費とは
売上を増やせば必然的に増加する費用で、逆に固定費とは売上を増やしても増加しない費
用です。変動費は売上を増加させるためには、必須的な費用であり、数量を減らすには限
界があり、単価等を減少させるのもなかなか難しいのが実情です。それに対して、固定費
はこれを減少させても、売上の減少にはつながりません。

したがって、資金繰りの改善には真っ先に固定費を削減することが先決です。多額な固定費
を使っていれば、より多くの売上を上げなければ利益を出すことができません。例えば、年
間5千万円の固定費を使っている会社の限界利益率「(売上−変動費)/売上」」が10%と
するとこの会社は5億円の売上で「損益分岐点」、つまり利益が0となります。今、リストラ
で年間固定費を3千万円に削減したとすると、3億円の売上が損益分岐点となります。このよ
うに,固定費を2千万円だけ削減できれば、売上では2億円の減少でもやっていけるのですか
ら、効果は絶大です。

では、固定費にはどのような費目があるかですが,会社により多少異なりますが,一般的
には販売費及び一般管理費の中に多くあります。代表的なのは、役員報酬、事務職員の給料、
地代家賃、広告宣伝費、交際費等がありますが、会社によっては広告宣伝費や交際費がない
と売上が増加しないところあるでしょうから、個々の会社ごとに分析しなければなりません。


経営実務

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