北歸行

 (昭和十六年〜十八年)

 作詩作曲 宇田 博



窓は夜露に濡れて   都既に遠のく
北へ歸る旅人一人   涙流れて止まず
建大一高旅高     追われ闇を旅行く
汲めど酔わぬ恨の苦杯 差嘆乾すに由なし
富も名譽も戀も    遠き憧れの日の
淡き希望儚き心    恩愛我を去りぬ
我が身容るるに狭き  國を去らむとすれば
せめて名残りの花の小枝 盡きぬ未練の色か
今は黙して行かむ   何を又語るべき
さらば祖國わが故郷よ 明日は異郷の旅路