藝文の花

    (第二十回記念祭寄贈歌・明治四十三年)

    箕作秋吉・原曲



藝文の花咲き乱れ    思想の潮湧きめぐる
京に出でて向陵に    學ぶも嬉し武蔵野の
秋の入日は歌ふべく   萬卷の書は庫に在り
   
降りつむ雪に埋もれて  春を營む若草の
若き心を誰か知る    なべての眠醒めぬとき
眞闇の中に人知れず   鳴く鷄を誰か知る
   
いそしむ窓に植ゑおきし 櫻も今は丈伸びて
 若き二十となりにけり  その紅の花蔭に
 燈かかげうち集ひ    今宵は語り明かさんか