-革命的な-

 

    
「やった大成功だ」  
博士は助手に向かって満面の笑みを浮かべた。  
「おめでとうございます」  
助手は反射的にそう言い返した後、  
「で、今度は何の研究ですか」  
いつものように、とぼけた質問をした。  
「そうだな。君にはまだ説明していなかったな」  
博士は背を向けると研究室内をグルグル歩きながら話し始めた。  
「キミは━━━幽霊を信じるかね?」  
「いいえ、信じていませんよ。幽霊は科学で観測できませんからね」  
「そうだ、幽霊はビデオでも超音波でも赤外線でも観測はできない。今まではそうだった」  
「そこで私は考えた。それならば、観測できる幽霊を作ってしまえば良い」  
「━━━なるほど、素晴らしい。博士、素晴らしい逆転の発想です」  
「そうだろう。私は研究に研究を重ね、ついにこの薬品を完成させた」  
博士はそう言って、ひとつのフラスコを掲げて見せた。  
フラスコの底にはわずかな量の透明な液体が揺れている。  
「この薬を使えば、ビデオにもきちんと写り、音波でも、赤外線でも観測できる霊を作り出せるのだ」  
「さすがは博士、で、実験の程は?」  
「もちろん、実験は成功だ」  
「おお、やりましたね。さっそくお祝いをしなくては」  
助手はまるで自分事の様に喜び、さっそく祝いの為に紅茶を用意しようと台所へ向った。  
と、ふと横を見ると机の上にはすでに二組のティーカップが用意されていた。  
奥のカップにはなみなみと、手前のカップには半分ほど紅茶が入ってる。  
「やや、博士、準備が良いですね。もう紅茶を用意しているとは」  
「いや、それはキミが用意したものだよ」  
「そうでしたっけ?」  
腕組みをして記憶をたどる助手。 
 博士はそんな助手に再度、同じ言葉を投げかけた。  
「実験は成功したのだよ」  
「え?」  

「足元を見てみたまえ」  
博士の言葉に助手が視線を落とすと、足元には仰向けに転がった自分の身体があった。  
呆然と立ちすくむ助手に、博士は再度、言葉を投げかけた。  
「実験は成功したのだよ━━━」 

 

 

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