-マッド博士とバッド助手の研究記 人間コピー機-

 

    
「ついに完成したぞ」  
博士はそう言って、出来上がったばかりの人間コピー機を高く掲げた。  
「それは何です博士?」  いつも側で手伝っていたはずの助手はすっとんきょうな質問をした。  
博士はそんな助手を見ながらも得意げに答えた。  
「人間コピー機だ。これでまったく同じ人間を何人でも作れる」  
「ほう。それは……何人も作ってどうするんですか」  
「何を言っている、臓器移植なんか思いのままじゃないか」  
「博士、病気なんですか?」  
相変わらずかみ合わない会話に、博士は僅かに語気を荒げた。  
「馬鹿言え、例えばの話だ。私の場合は、もう一人私のような天才が居れば作業効率が二倍だ。どうだ凄いだろう」  
「それは困ります」  
「どうしてだ?」  
「もう一人増えれば、そのぶん食費が増えるじゃないですか」  
意外な反論に博士は困り、しどろもどろになりながらも反論の言葉を口にする。

「いや、しかし、研究が倍の早さで進むから…」  

「今までの研究でお金になったものがありますか?これは赤字を増やすだけです」  
確かに、今までの研究は貯金を食い潰すばかりで利益に繋がるものはない。
正論だった。  
「どうせなら、ご飯を二倍にする機械を作ってください」  
博士はそれ以上何も言えず、ご飯を増やす機械に改良するためにレンチを握りしめた。
 
 
  

 

 

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