-林檎- |
僕はとある研究所に勤めていた。 そこで研究していたのは虫も動物も寄り付かない林檎の研究だった。 動物、昆虫がこの林檎を食べると発狂してしまうが、人間だけは普通に食べられるという林檎の研究。 研究の成果はいま一歩といった所で、発狂するにはするが人間にまで影響を及ぼしてしまうのが難題だった。 しかし、その研究の必要もなくなってしまった。 篭っていた研究所から久しぶりに外に出たある日、僕以外の人類が消えてしまったのだ。 突然だった。 いくら探しても誰も見当たらない。 僕にだけ見えなくなったのかと、赤外線、熱感知、超音波、あらゆる探知機で探し回った。 しかし、結局子供一人見つからなかった。 が、元来一人が好きだった僕としてはさほど苦痛ではなく、その日から悠々自適な生活を送る事にした。 もう、研究に追われる事もない。 ある日、研究所の床に二本の髪の毛が落ちているのを発見した。 長いブロンドの髪と短い茶色の髪だった。 僕はその髪を元に研究所の機械を使ってクローン人間を作ってみることにした。 気まぐれだった。 やがて、一人の男と一人の女が誕生した。 見知った顔だった。 僕は親のように振る舞い、二人は成長していった。 ある日、口を酸っぱくして、何度も言っていた約束を二人は破ってしまった。 研究所内の林檎を、二人は食べてしまったのだ。 すぐに二人は発狂し、自殺してしまった。 もう僕はクローンを作ることはなく、一人で暮らすことにした。