夜神ライトの日記(抜粋) |
20XX年 9月15日
デスノートを拾った時から考えていた事だが、何故このノートは人間以外の生物には効力が無いのだろうか。
人間と他の生物に何の差があるというのか。
猿となんて、DNAレベルでは数パーセント程度の差しかない。
何故、人間だけしか殺せないのか。
リュークに聞いても答えは無い。
20XX年 9月17日
人間を殺す死神やデスノートが誕生したのは人類が誕生した後だと考える。
人類が誕生する何千年も前に死神が存在したとしても、人間から寿命を奪えないのなら死んでしまうからだ。
それに、死神やデスノートの存在自体が人間を前提に存在している。
では何故、人間の存在を前提にしているのか?
これは自然の食物連鎖の一環か?それとも誰かの意志が働いているのか?
わからない……
20XX年 10月2日
地上には時々死神が降りてくる。
今日も新しい死神と出会った。上手く騙してすぐに殺したが。
これでノートは合計八冊になる。
どう使っていくべきか。
20XX年 10月8日
弥ミサが死んだ。
風邪をこじらせてそのまま肺炎で病死した。
多分、これが彼女の寿命だったのだろう。
二度も死神の目の取引をしてこの歳まで生きられたのだからむしろ長生きとも言える。
しかし、目がなくなってしまっては不便だ。
使えそうな人間を探すべきか……
20XX年 10月15日
何の気無しにリュークに尋ねてみた。
死神はどうやって誕生するのか?
最初にデスノートを使った時の記憶は?
しかしどちらも記憶に無いし知らないと言う。
どうやら過去の事はほとんど覚えていないようだ。
死神にとっては今を生きるだけで、過去にも未来にも興味は無いらしい。
しかし、それにしては死神の目やデスノートの力は強大すぎる。
なにか別の使い道があるのではないか?
死神達は長い年月の間にそれを忘れて、ただ、人間を殺すだけの存在に堕ちてしまったのではないか?
以前から考えていた疑問が鎌首をもたげる。
20XX年 10月19日
僕一人では世界中を監視しつづける事は出来ない。
選考の末、5人の人間にデスノートを所持させる事にした。
彼らには全員、死神の目を取引させ、世界中を監視させる役目を負わせた。
これで僕が監視するのはこの5人だけで済むようになった。
大丈夫だ。
彼らは僕の事を神のように崇めている。
首輪をつけ手綱をしっかり握っていれば暴れだす事も無いだろう。
20XX年 10月30日
キリがない。
南米とアフリカ大陸全土で勃発する紛争とテロ。
いくら調べ上げてデスノートで抹殺しようとも連中はひたすらテロを仕掛け続ける。
死すら恐れていないようだ。
一般市民すらもテロに加担しているようで収集がつかない。
人手が足りない。
デスノートと死神の目の所持者を増やすしかない。
20XX年 11月22日
三体の死神を殺し、新しくノートと目の所持者を六人増やした。
これで十一人の目が機能する事になる。
デスノートは遠くから静かに確実に目標を殺す事には長けているが、大勢の人間をいっぺんに始末するのには骨が折れる。
一々、個々の名前を書かなくてはならないからだ。
目の一つが腱鞘炎になったと言ってきたので処分した。
面倒くさい奴だ。
20XX年 11月28日
イギリスに送った目から特異な報告があった。
死神の目をもってしても、寿命も年齢も見る事の出来ない少女を目撃したと言う。。
その少女とやらがデスノートを所持しているのなら、寿命が見えないと言う事に納得もできる。
しかし、名前すら見えないと言うのはどういうことだ?
その少女と目は、街で一瞬すれ違っただけですぐに見失ったらしい。
ただの見間違いではないのか。
それとも死神の目には、リュークや他の死神も知らない特徴があるのだろうか。
念のため、目に監視体制の強化とその少女の捜索を命令しておく事にする。
20XX年 12月11日
新しくデスノートが二冊手に入った。
これでノートは十三冊。神となる僕にはキリの良い数字だ。
新人を二名選抜し、イギリスに直行させる。
例の少女を見つけ出す為だ。
人間を殺す為のノートと、名前と寿命を知るための目。
そして名も寿命も無い少女。
何かが見えそうだ。
霧の向こう側に、おぼろげにその正体が浮かんでいる。
手をのばせば掴めるのだろうか。
それとも食われてしまうのか。
わからない……
20XX年 12月24日
ついに少女を見つけ出した。
目に確保させて僕自身もイギリスへと飛び立つ。
明日には少女を会えるだろう。
何者なのか。
会えば判るはずだ。
その正体が。
20XX年 12月25日
ククククククククククククククククククク。
かつて少年がいた。
彼はデスノートを拾い、悪人を裁きはじめた。
世界を安定させ、自身が新世界の神として君臨する為に。
しかしどうだ?それは成功したのか?
実に馬鹿馬鹿しい。
結局は手の平の上で踊っているだけだったのだ。
神になるなど…
このノートも目も、すべては……
すべては、あの少女の為のモノでしかなかった。
あの少女のためにしか存在していないのだ。
この、人類さえもが。
いや、あれは少女なんかじゃない。
あれは……
……こそが……
20XX年 12月31日
もう終わりだ……
*同日深夜、夜神ライト心臓麻痺により死亡。