My Little Lover2
〜クラヴィス編〜
番外・キスのその後は…
  朝、鳥の声で眼が覚めたアンジェリークは、隣りに眠るクラヴィスを見た。
 昨日の朝見た時は、自分が子供の姿から元に戻っていて、代わりにクラヴィスが10歳くらいの子供にな
っていた。子供になってしまうという効果は、まる一日しかないという可能性が高いのだ。

 昨日、久しぶりに走ったクラヴィスは、自分の部屋に戻ると身支度を整えて早々に眠ってしまっていた。
長いおやすみのキスをして…。

「クラヴィス様?」
 元に戻ったか知りたいけど、起こすのはかわいそうで。そっと静かに名前を呼んでみる。
 身じろぎをする彼を、後ろからそっと覗いてみた。
「!」
 クラヴィスがクルッと振り向いて、アンジェリークの唇を奪った。左手を後頭部に回し、右手を頬に当てる。
「……っ」
 クラヴィスが起きていて、しかもいきなりキスするなんて予想もしなかったアンジェリークは、息苦しくて僅
かに唇を開けた。すると、それを待っていたように柔らかく温かいものが少女の唇に触れた。優しく触れ、
隙間から中へゆっくりと侵入する。

 濡れた音をさせて、一度唇を離したクラヴィスは、いつものように意地悪な微笑を見せた。
「…おはよう。私の天使」
 元の姿に戻っていたクラヴィスは、息を呑むほど綺麗だけどやっぱり意地悪だ。いつも自分を困らせて楽
しんでいる。

「お…はようございます」
 アンジェリークは目を合わせ辛くて顔をそむけた。
 クラヴィスは拗ねているアンジェリークの手の甲に、そっと手を乗せる。指先を重ね合わせて優しく撫で、
華奢な手を包み込んだ。

「…心配をかけたようだな」
「クラヴィス様…」
 上体を起こしたクラヴィスは、アンジェリークをそっと抱き寄せた。
「…触れて…確かめてみるか?」
 アンジェリークの手を掴んで、自分のはだけた胸元に触れさせる。
 驚いて見上げる翠の瞳に微笑みかけ、額に口付けた。
「私としては…昨日の朝の続きをしたいのだが…」
 耳許で囁く声は心地よくて、このままこの温もりに身を委ねてしまいたくなる。
「もう朝ですよ?もうすぐお世話係の方が…」
 少女が困ったように言うと、クラヴィスは吐息のような笑いを零した。
「今日は日の曜日だ。昼過ぎまでは…誰も近寄らぬ」
 そう言って、白いナイトローブの腰紐を静かに引いた。シルク地のナイトローブはするりと少女の両肩から
滑り落ち、薄いヴェ−ルに包まれた肌が現れた。淡いピンク色のオ−ガンジ−で作られたキャミソールは、
少女の身体のラインを少しも隠すことなく美しく彩っていた。

「!」
 クラヴィスの視線が胸元に注がれてるのを感じて、アンジェリークは慌てて両手を前で交差させる。半透
明の布から肌が透けて見えていたのだ。上はキャミソールしか着ていないことを知られてしまった。

「美しいな…」
 クラヴィスは、アンジェリークをじっと見つめて頬に触れた。左手をベッドに付き、ゆっくり近付くと、少女は
クラヴィスの瞳に囚われたまま静かに後ろへ倒れた。

 ベッドのスプリングが軋み、クラヴィスの長い髪が胸元を押さえた少女の手にサラサラと零れ落ちる。
 頬に触れていた手を顎まで滑らせて、指先で桜色の唇に触れた。柔らかく濡れた唇は、さっきのキスの
続きを求めるように僅かに開いた。


「アンジェリーク…」
 クラヴィスは誘われるように唇を重ね、更に奥の柔らかいものを探った。最初は一瞬触れるだけだった舌
が、求めに応じて絡めてくるまで長い時間キスを続けた。

「…は…ぁ」
 唇が離れた僅かな隙に少女は甘い吐息を零した。胸元を隠していた手はいつの間にかクラヴィスの背に
回され、彼の肌に胸を押し付けるほど強く抱き付いていた。

 静かに唇を離すと、少女は名残惜しそうに潤んだ瞳で見上げてくる。
「…一昨日の私の様だな」
「?」
 ぼんやりしたままアンジェリークは、美しい瞳を見つめる。
「キスまでしか出来なかったからな。お預けの気分はどうだ?」
 意地悪な質問をする彼に、なかなか答えられない。
「…熱…い…」
 彼の背中に回していた手をキュッと握って、俯く。
 クラヴィスの白く長い指先が、アンジェリークの内腿をスッと滑り脚の付根で停止した。
 ビクッと反応を返し、更に恥ずかしそうに俯く。クラヴィスは構わずに薄布の上から熱さの源に触れた。
「…ぁん」
「…確かに…な」
 布の上で2、3度指を前後させると、アンジェリークの身体が震えた。声を殺しているのか、俯いたまま顔
を見せようとしない恋人の顔をクラヴィスは覗き込んだ。

 頬を紅潮させて、濡れた瞳でじっと見つめる少女は、全身でクラヴィスを誘っていた。キャミソールから透
けて見える胸の膨らみは触れて欲しそうに揺れ、その先端のピンク色の肌は布を持ち上げるほどツンと張
っている。

「…お預けにされた分、優しく出来ぬやもしれぬ…」
 アンジェリークは答える代わりにキスをした。今声を出すと、甘い声しか出せなさそうで…。

 クラヴィスの唇がアンジェリークの首筋に触れた。
 ふわりとクラヴィスの髪からラベンダーの香りがする。昨日、小さくなったクラヴィスは部屋の中にあるバ
スルームでシャワーを浴びたのだ。部屋のバスルームはアンジェリークが使うことが多い為、ラベンダーの
香りのシャンプー等が置いてある。自分がいつも使っているシャンプーと同じ香りと言うのは何だか嬉しい
気分だ。

「どうした?」
 アンジェリークが微笑んだような気がして、クラヴィスは問い掛けた。
「いえ。同じ香りだなって思って…」
「…そうか」
 クラヴィスは、首筋に顔を埋めたままキャミソールの裾から右手を滑り込ませた。滑らかで白い肌は、クラ
ヴィスの手に吸い付くように柔らかく弾力がある。ゆっくりと肌の感触を確かめながら背中に回し、肩からキ
ャミソールの肩紐を片方ずらす。首筋から滑り降りてきた唇は、まだ半透明の布に包まれた柔らかな胸の
先端をくわえた。舌先で転がすと、アンジェリークの身体がしなる。

「…あ」
 目を閉じて、クラヴィスから与えられる快楽に戸惑い、反応する姿は、征服欲をそそられる程艶めかしい。
 もう片方の肩紐も外し、キャミソールを上から下へとずらしていくと、素肌を外気に晒したせいか肩を僅か
に震わせる。そんな仕種も可愛くて、柔らかな胸にきつく口付ける。ほんのり赤くなった肌は、明らかにキ
スマークと思われるだろう。

 アンジェリークは、そんなことを考える余裕がなくなっていた。彼の手は、キャミソールをずらしたままその
下の下着にまで手をかけていた。

「…や」
 まだ直接触れられてもないのに濡れた下着を脱がされるのが恥ずかしくて、アンジェリークは抵抗をし
た。

「…恥ずかしがることはない」
 低く響く彼の声は、不安を消し去る安らぎの声…。
 アンジェリークは声に導かれるように力を抜いた。
 クラヴィスは、指先を少女の内腿の奥に滑らせた。邪魔をしていた薄布が取り払われ、溢れた液体が肢
体に絡み付いている。

「本当に愛らしいな、お前は」
 クラヴィスは堪らなくなってキスをした。感じているということを認めるのが恥ずかしくて、まだ素直になれ
ない。何度か肌を重ねると普通は慣れるのだが、この少女は毎回恥じらうのだ。

「前言を撤回しよう」
「?」
 アンジェリークは、何のことかと目を開けて不思議な顔をする。
「…出来る限り…優しくする。お前は、全身で私を感じて欲しい」
「はい。でも、ちょっとなら強引でもいいですよ。お預けのイミ判りましたから」
 照れたように笑う少女が可愛くて、頬に口付ける。
「…では、三日分…だな」
「え?キャッ!」
 クラヴィスは、お預けを食らった一昨日の続きから始めたのだった。
                                                
                                                  FIN
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