「クラヴィス様ったらもうっ…! ふざけてないで…」
尖らせた唇で言い募ろうとして、アンジェリークは思わず息を呑んだ。
 静かに…しかし、底知れない力を秘めた瞳が、真っ直ぐにアンジェリークを見上げている。
 その右耳を美しく飾る紫水晶のような神秘的な輝き…その澄んだ輝きを間近に見ることができる者は、一体
この聖地でも何人存在するというのだろう? それはまさに閉ざされた闇の中に隠された至宝そのものだった。
 魔力としか呼べない視線に捕われ、アンジェリークの体は固まったまま…ただ心臓だけがうるさいほどに早鐘を
打っていた。
 そんな彼女の心を知ってか知らずか、クラヴィスは艶然と微笑みゆっくりと手を差し伸べた。
「アンジェリーク…。おいで」
 魅惑的な声で名前を呼ばれ、アンジェリークは意味もなく体を翻そうとした。
「!」
 手首を掴まれたと思った次の瞬間に、ぐらりと体が傾ぐのを感じる。何か暖かいものに抱きとめられたのを感じて
思わず顔を上げると、そこにはクラヴィスの白く端正な顔があった。
「逃げるな…アンジェリーク」
「クラヴィス…さ、ま…」
 アンジェリークの華奢な体は大きな腕の中にすっぽりと覆われ、強い力で抱かれているわけでもないのに、身動
きすることも、息をすることさえ困難なほどだった。
「もう、私から逃げるな…。お前がどう思っていようと、私の気持ちは一つしかない。…お前を、愛している…」
 酔ったように潤んだ艶やかな瞳は、けれど酔いが醒めてないと一蹴するにはあまりに強い意志をもってアンジェリ
ークの心に甘い想いを注ぎ込む。
 その時彼女の胸に、自身が知らずに抱いていたクラヴィスに対する感情が、初めて言葉をもって天啓のように
輝きを放った。
「わたし…も…」
 まるで他人の声を聞くように自らの唇からこぼれる言葉を聞く。
 ―そう…わたしも。ずっと…きっと出逢ったその瞬間から―
「クラヴィス様を、愛して…います」
 最後の言葉はクラヴィスの唇に甘く吸い取られた。短いくちづけ…しかし、アンジェリークには永遠のように長く
長く思われた。
「愛している、アンジェリーク。今宵は私のそばにいてくれ…。もう、一時もお前を離したくはない」
こんなにも近く愛する人がいて、耳元で狂おしいほどの恋情を訴えられる…アンジェリークの体はただ至福に震え
るばかりだった…。

 クラヴィスは最初はゆっくりと、アンジェリークの肌が羞恥と歓喜で薔薇色に染まる頃には自身の欲情と闘うかの
ように性急に彼女に触れていった。
 クラヴィスの、男性にしては細い指先が、器用にドレスを脱がしていく。彼の誕生パーティーのためドレスアップし
ていたアンジェリークは体を頑丈にプロテクトしていた。しかし、それすらも彼を扇情する小道具のように思われ
た。
 ぱさりと、ソファの足元にドレスが波を打って落ちる。ひんやりとした空気に晒されてなお、彼女の体は熱く火照
っていた。
 クラヴィスは驚く様子もなく次に現れたアンジェリークの下着…ビスチェの胸元のリボンを解きにかかった。慣れた
手つきで手早く解いている間にも、片手で彼女の金の髪をまさぐり喉元に唇を押し付ける。
「…っあ…」
 ぴくん、とアンジェリークの体がクラヴィスの腕の中で跳ねた。露わになった彼女の胸の谷間…丁度心臓のある
辺りにクラヴィスが強く口付けたのである。
「お前の心は、未来永劫、私がもらう…」
 深く艶やかな声で囁いて、リボンを全て解き、ビスチェの間から指を滑らせ…彼女に優しく触れた。
「あんっ…」
 羽が触れるかのようなその指先の動きにアンジェリークは次第に甘く吐息をこぼしていく。その自分の声にまた
羞恥心をかきたてられ、肌はますます色づいて、クラヴィスを強く誘った。
「アンジェリーク…私はお前を大切にしたい。だが、今宵ばかりはそれも叶わぬかもしれぬ…許せよ」
 真摯な声に深い愛を感じて、アンジェリークは返事をする代わりにクラヴィスの背を強く抱きしめた。
 アンジェリークをソファに横たえ、彼はシャツを脱ぎ捨てた。決して病弱ではない厚みのあるしなやかな白い胸を
彼女の上に覆い被せると、さらさらと絹糸のような美しい濃紺の髪が彼女の小さな胸に落ちていく。その感触が
くすぐったくて、アンジェリークは身をよじった。自らの腕の中で白魚のような裸身を晒し、微かに震えている愛しい
少女…。彼はたまらなくなって、熱く彼女に口付けた…。


「…もうお前を…離したくない…」
はい、どうもー。お疲れ様でした。
え?ここで終り〜? と思われた方…あんたも好きねぇ(笑)。なんーて、ちゃかすつもりはありませんが、ほんとに
時間切れでしたっていうのと、最初に自分が意図していたものと方向性が違ってきてしまったから、という二つの理
由による中断ということで御了承ください。
だってこれだけでもうプチ小説?っていうくらいな濃さ(当社比)じゃないですか? 私、もっとあっさりとクールな、
詩のような短文を載せるつもりだったんですよ〜。だって、あくまでイラストが主なんだもん。私は所詮絵描きなん
で難しい表現とか長々とは書けないし…(とりあえず短いのならなんとか誤魔化せるかな〜と思って。これでボキ
ャブラリー精一杯です/笑)。今回のは完全におまけですの…。
 イラストはもうちょっと上品にしたかったですねー。背景とか頑張りたかったなあ。アンジェの表情も必要以上にH
っぽいような(笑)。でもこれくらいのほうが裏には相応しかったりして(爆)。一応、いきなり初Hイラストでアレ
(笑)描き込むのはどうかなあと思ったんですが、綾瀬さんに許可もらいましてお披露目になりました。Hイラは肌
の質感とか大事だと思うので特に気を使いましたが、基本的に肌色を塗るのは大スキなのでその辺りは大変楽
しかったです。一応クラ様と肌色微妙に変えてるんですけど…あんま判りませんね。。
 これがクラ様バースデープレゼントになるかは不明ですが(笑)、少なくとも大人なクラリモファンの方にお楽しみ
いただけたら幸いですv いつも以上に感想が気になるので(かなりドキドキです〜)一言BBSにでも書き込ん
でやってくださいね〜vv
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