ゲーム屋裏方稼業

第3回 予約のススメ〜ユーザと販売店の意識の差〜

 今までに2度、他サイトの掲示板で、ゲームの予約についての書き込みをしたことがありました。
 我ながら余計なお世話と思いつつも、表題の意識の差という点で気になってしまって。で、自分のHPを立ち上げたところで気兼ねなく書いてみようかと。
 ただ、ハードの移行期であまりタイムリーな話題でもないんですがね。でも、今後の通常PSのタイトルには有効な話ではないかと。

 私が前の職場にいたとき、一番注文が多かったPOPが、実は予約用のPOPです。
 タイトルと発売日ほか、写真や簡単なコメントを入れて告知も兼ねて使用するもの。
 ただ、セミオーダー方式なので相手のお店によって要望はさまざま。
 とにかく、なにかビッグタイトルが公開されたら即POPが欲しいというお店、発注が終わった直後に注文してくるお店、タイトルのピックアップも何もかもこちらにおまかせというお店、完全にタイトルを指定してくるお店・・・基本的に、こちらで必要と思われるタイトルやそのタイミングを決めて用意していたので、実は4番はとても厄介だったのですが(要らないのはともかく、用意していないタイトルを急に注文される場合があるから)、それぞれお店のスタンスがあってのことだし、こちらも仕事なので対応するしかありません。
 まったく個人的な話として、日付を入れるから発売日が確定するまで出したくなかったんですけど。

 さて、問題はお店のスタンス。これによって、自分の利用しているお店では、どういうタイミングで予約を入れるのが双方にとってベストか変わってきます。

 タイトル発表があったらすぐ派。
 お店が予約を取るのは、当然セールスを確保するためのものですが、予約数から販売本数を類推する目的もあります。一般的なヒット作で、総販売本数と予約数との比率はおよそ10:1、コアユーザー向けや任天堂商品(笑)では3:1から2:1と、商品の傾向によってちがいますが。となると、お店はイニシャル(初回入荷)発注の段階で確実な数を計算したいわけです。ここで、正規の取扱店なら、発売日の2〜3週間ほど前にイニシャルの追加発注も効くようなので、それまでの予約の集まり方を見て増やすこともできますが(需要が圧倒的に多いS級タイトルはまずムリ。そもそも配分)、そうでないお店──まあ、二次流通で仕入れているところ──は、追加ができるとも限りません。それに、発注があまり集まらないと、その時点で生産本数自体を減らすはずなんだけど…? この辺は最近よくわかりません。
 だから、発注案内がまだ来ていなくても、その時に仕入れ数を決めるために予約を取っておきたいお店もある訳です。ただ、これは自店で発注数を決められる場合。こういうお店は、特に店頭で掲示していなくても予約を受け付けてくれます。試しに聞いてみましょう。

 一般的なのは、発注が来た後に主立ったタイトルの予約告知を出しているお店。
 前述の「正規店なら〜」という理由もありますが、発注の時点で予約特典なども決まってきますから、特典をウリにできますし。お店によっては営業さんからポスターなど予約特典以外の物ももらえるでしょう。都心の専門店のように、店独自で特典グッズを制作するところもありますし。ちなみに、これが二次経由だと、同梱でない特典が入ってこないこともあります(そういう点で不利なのは店側も判っていますから、非正規店だと早期からの予約受付や割引チケットなどでフォローしますね)。
予約開始が発売月の約1ヶ月半〜2ヶ月前になるので、独自の特典がないかなど見比べて予約を。

 また、予約は告知してあるタイトルしかできないか。
 大体“予約向き”なタイトル(人気作・注目作・コア向け)だけを掲示することが多いので、まず受け付けてくれると思います。ただ、店員がノーチェックで知らないということもままあるのですが、そこは
そのゲームの情報を一番注意しているのはファンなのですから。気にしないで予約を申し込みましょう。
 私の場合、全面的に発注提案を担当していたので発売タイトルは把握していて、職場で“人間データベース”と言われたものですが、直接お客様と関わる販売店員がタイトルを知らないのは怠慢と思っていたものの、そりゃ月に100本も200本もゲームが出ちゃ、かかりきりの仕事でないと把握していなくても仕方ないかと。

 ところが、掲示のないタイトルは予約できない店もあります。特に複合店や小規模店など、専門店以外。
 POPを完全にタイトル指定してきたお店もそうかもしれませんが、主立ったタイトルだけ入荷して、
マイナータイトルは最初から仕入れない場合があるからです。98年後半頃、ゲーム業界の成長が下降してきたあたりから、多くの販売店が在庫過多が深刻化し、発注の絞り込みに入っています。99年半ばからはゼロ発注のタイトルの割合も高くなってきています。この場合、発注後の時点ではすでに予約が手遅れということに?
 
また、チェーン店などでは本部で全店分の発注を決定し、個々のお店にイニシャル発注の権限がないこともありますから、予約に対応できないタイトルも出てくるようで。
 こう厳しい情勢だと、「なぜもっと仕入れない」と責められるものでもないですよ…。

 ……と、お店側の事情ばかり書いてきましたが、こんな感じでお店というのはできるだけ早い時期で予約を集めたいもの。イニシャルの追加にしたって3週間前なのだし。
 で、
ユーザが予約をする時期はいつ頃が多いかというと1〜2週間前。限定版で1ヶ月前くらい。遅いです。
たぶん、予約してまでというつもりはなかったけど、一応押さえておくか〜というところだったり、あと、ユーザにしてみれば「発売日が決まっていないと予約できない」と思っていたというのもよく聞く話。
 でも、発売日はメディアに出ないだけで、発注の時点で判っていることが多いし、正直、店側にとって発売日はあまり関係ないのです。

 で、冒頭で通常PSのタイトルのために〜と書いたように、新ハードは本体が普及するまでソフト過多になりやすい一方、互換性があるとはいえ現行PSのソフトは急速に絞り込みをかけるはずです。お店の規模によっては、半数以上が0〜2本しか仕入れないことがあり得ます。(3月以降の発注には携わっていないので詳しくはわからないのですが、噂は聞く)。そうなると、
なるべく早いうちに予約をしておいた方が確実。というか、本当に欲しいソフトなら予約しないとまずいかも。

 ついでに、じゃあ予約は確実かということ。そりゃ確実でなかったら予約になりませんが。
 普通は入荷数分まで集まってしまったら予約満了となりますから、予約分で完売というケースはあっても確保されるものですが、問題は、配分や分納、カットなど、流通事情で当初の予定より入荷数が下回る場合。
 あと、前述の発注前から予約を取った場合に、これが早い段階で予約が殺到する&しかも希望数取れる訳のない超S級タイトルだったりすると、予約オーバーという事態もありえますが……
強気の店でなければ、情勢が判るまでは予約受付を見合わせるでしょうけど。
 しかし、
予約を受けた以上は確保するのが販売店の責務。あこぎな掛高商品(通常の掛け率より大幅に高く二次流通に出る。最高98%ってオイ!(怒))に手を出したり、最悪、当日によその店を駆け回って原価で買った物を原価で売ったりする訳です。それでも、台湾の震災のような不測の事態もあるのですが…。そういう場合、納得してあげてください。
 こういう時に、「いちおー複数の店舗で押さえといたんだけど、最初の店で買えたからもういーや」なんて予約キャンセルが出ると、その分が他のお客さんに回せると安心する一方、これが原価買いだったりした日には泣けます。かわいそうなので安易な予約キャンセルはやめようね。

(2000年3月)