ゲーム屋裏方稼業

第1回 店頭のゲーム紹介文、信じる? 

 この表題、このHPを見ているくらいのちょっとゲーム好きな人なら「信じない」と即答しそう(苦笑)。

 まずは前置きとして、私の居た職場のことをお話ししておきます。タイトルからしてなんだか怪しげですが、肩書きとしてはゲームショップ対象のコンサルティング&POP制作会社。と言っても例がないためかよく聞かれたのですが、ショップの店員でもライターでもないです。中古ソフトの価格相場表も作るし、店内レイアウトや、ソフトの発注数の提案もします。セミナーもやったり。この辺はコンサルティング。で、Macを使ってオーダーメイドでPOPをデザイン・製作したり(しかも家内制手工業だ!)、チラシの原稿も作ります。この辺はゲームショップ対象のデザイン会社っぽいかな。そのPOPの一環として、主要機種の全ソフトの紹介コメントも書きます。フランチャイズ本部がやるようなことを個々のお店に向けてやっているようなものなんですかね。私が担当していたのは、発注のアドバイスとPOPデザイン全般、それとコメント書き。

 4年半そういう仕事をやってきたのですが、ゲームが好きでやるには因果な商売だな〜と。いや、お店にしてもメーカーにしても、ビジネスである以上、因果なものですけど。

 私の仕事で最大のウェイトを占めていたのがコメント書き。
 “目的買い”のコアユーザーは、すでに様々なメディアから自分で情報を得ているものとして、店頭でソフトに付けるコメントは、あくまでゲーム誌を読まないライトユーザーが対象です。
 ただし、ユーザー(とメーカー)のためのゲーム誌の記事と違って、店頭のコメントカードの位置づけは“販促物”なのです。
 これがメーカー側が用意した販促物なら、勝手な謳い文句にしてもまず内容に間違いはない訳で。……主観的な評価は別としてね。
 では、お店で用意した場合。それなりに律儀な、といおうか熱心に経営努力をしているお店さんですね。正規取扱店なら(特約店かな? お店の現場経験がないのと、流通系が専門ではないのでどうも把握していないです)マンスリーミーティングで受注するソフトを試遊できたり、最低限デモは見ているはずだし、営業の人も来るだろうから、一応、多少なりとも実物をもとに紹介ができるというものでしょう。しかし、それはお店の人がゲームを見る目とある程度の文章力を持っていての話。また、ユーザーの立場に立ってソフトを勧められるお店は素晴らしいですが、世の常として良心の前にビジネスありきですし。大体、お店の人が全部のソフトをしっかりプレイできるはずもないし、コメントにそう時間を割くわけにもいきませんよね。また商売でやっているだけでユーザーのことを解っていない責任者もいる訳で、とにかく売り込まなければいけないのが正直なところ。
 もっとも、売り込み本意のアオリ文句なんて真に受ける人はいないと思いますが、お店でコメントを付けるにしても、メーカーの受け売りとそう変わりません。

 では、自分の仕事は。ゲームショップがお客さんという会社ですから、ショップに対して売るからには、まずお店のための物。しかし、それでもお店に来るお客さんがソフトを選ぶ役に立たなければ意味がないし、無責任な売り込みをしないことは、ひいては店の信頼度を高めるはず。と、プレスリリースの丸写しでいいとの社長の指示に耳をかさずに、時間を食うことになっても(どうせ残業代もらってないんだから)自分自身がユーザーとしてのこだわりを持ってコメントを書いてきたつもりです。そうは言っても、結局は実際にプレイして書く訳でもなく、出来る限りの情報を集めて書くようにはしましたが、果たしてこの書き方で合っていたのだろうか、ソフトの魅力を伝え切れるものになっていただろうか、でないとそのゲームを作ったメーカーの人にも、出会いを逃したユーザーの人にも申し訳ない…と常に悩んでいたり。
 私が同人で自分の好きなゲームを伝えることにこだわるのは、そのためかもしれない。

 もっとも、メディア自体が歪んでいるのがゲーム業界。ゲーム誌の記事自体プレスリリースまんまだったりするんですけどね。たまに巻頭記事でも、リリースのままの文で文体を変えただけのものも見受けられますけど、あれはめっちゃ格好悪い(ちなみに巻末の小さい記事だとザラ)。〆切厳しいのは解るけど…。

 ともかく、当たり前の話なんですが、店頭のコメントは“売る立場”からのものだということ。
 その中で、あてにできる情報を読みとってくださいね。
 でも、ジャケット買いだとしても、どこかしら自分の感性に合っていると思って選んだゲームなら、買って損はないと思いますけどね。(ジャケットだましな場合は…ご愁傷様。)

(2000年2月)