クラウン


早すぎた天才「クラウンリボルバーシリーズ」

 はるか昔、ライト兄弟よりちょっと前にエンジン付き飛行機で空を飛んだ人がいました(1890年クレマン・アテールのエオル号)。ただし、そのころはガソリンエンジンが一般的でなかった時代なので、蒸気機関を使った飛行機でした。ガソリンエンジンよりはるかに重い蒸気機関を使った飛行機は一応空に浮きました。が、機関の力で飛んだと言うよりは下り坂の勢いで浮いたと言った方が正しいほどの記録でしたが.....(もちろん空を飛んだ記録とは認められていません)  今回はそういったお話です。

 コッキングガン全盛期の話。そのころはもちろん電動ガンなんてものはなく、技術レベルも現在とはくらべものにならない時代だった。
 さて、コッキングガンに必要不可欠なものは「ポンプをいれる場所」である。 だから当然、当時のハンドガンのラインナップはほとんどが中型、大型のオートマチックで、フレームにポンプがのはいる余地のないリボルバーはほとんど出ていなかった。
 そう!ほとんどだ、つまりそれに果敢にも挑戦したメーカーがあったのだ。その勇気あるメーカーはファルコントーイ、東京マルイ、そしてクラウンである。

 ファルコントーイ、東京マルイはそれぞれカートリッジにポンプを仕込む方式をとった(ファルコントーイはBB弾、東京マルイはつづみ弾)。それに対してクラウンは全く独自の方式をとった。それは、グリップにポンプを仕込み、ハンマーを起こすことによりコッキングするというものである。つまり、現在のほとんどのガスリボルバーと同じ方式である。モデルはパイソンが発売された。
 現在のガスリボルバー機構を予言するようなすばらしいシステム!しかし、出現するにはちょっと早すぎた。そう、早すぎた天才であったのだ。

 「ハンマーのコッキングを利用してグリップにあるポンプをコックする」→ポンプの後退距離は非常に少ない。しかもハンマーは鬼のように堅い!さらに当時の技術ではエアーのシールなどむろん完璧ではない。ちょっと前のガスリボルバーがそうであったように(いや、それ以上に)シリンダーに込めたBB弾に到達するまでに、かなりのエアーは逃げてしまう。ガスガンなら何とかなったかもしれない。しかし、ポンプの小さなコッキングガンでは無謀としかいえなかった。飛行距離は、いや飛距離は数メートルほどであった。

 ちなみにこれにはカスタムスプリングが標準で付属していた。しかし、ノーマルスプリングでさえ、両手を使ってコッキングしなければならないこの銃にカスタムスプリングなどはいるわけがなかった。
 この後、クラウンは汚名挽回のためM29を発売した。アルミ製インナーバレルなどを採用しエアーシールがかなり改善されたため、そこそこの飛距離を誇っていた。さらにダブルアクションとみせかけて「ただシリンダーが回るだけ」という謎のアクションも追加されていたが、残念ながらあまり話題を呼ぶことはなかった。
早すぎた天才はいつも悲しいものである。

余談だが、この文書を書いてしばらくしてプラモデルショーでクラウンリボルバーが展示されていて、十数年ぶりにこの銃を撃つことができた。あのときは子供だったからだろうか?それとも改良がされていたのだろうか?久しぶりに撃つパイソンはなんだかそれなりにコッキングできて片手じゃできないというほどでもなかったということを付加させてもらう。

※この文章はchackeyさんのご協力により文章を改訂しました。また、写真はchackeyさんの所持しているパイソンとM29を撮影し、e-mailで送っていただいたものです。
 ご協力ありがとうございました。