忘れられたシャーマン

1945年の春、米軍がドイツに進撃したときの話。もはやドイツ軍の負けは確定的なところまできており、さしたる反撃もないまま米軍は進撃を続けていた。それでもラインラント=プファルツでドイツ軍は反撃に出て、米軍は一時的な退却をしなければならなくなった。

その時、あわてて退却した米軍はある農家に一台のシャーマン戦車を置き去りにしていってしまった。困ったのはその農家の農夫である。戻ってきたドイツ軍にこの戦車が見つかってしまえば非常に面倒なことになるのは確定的である。

めんどくさいことに巻き込まれたくなかったその農夫は干草でコレを隠した。そしてドイツ軍に見つかることもなく、そのまま第二次世界大戦は終戦を迎えたのであるが、今度は「米軍の兵器を隠してしまいましたぁ」ということを米軍に改めて報告するのがめんどくさくなってしまったこの農夫はそのままシャーマン戦車を隠し続けてしまった。
そして戦後20年。やっと戦車を厄介払いしたくなった農夫は重い腰を上げハイデルベルグの弁護士にそのことを相談した。弁護士に連絡を受けたドイツ連邦軍によって干草を取り除かれたシャーマン戦車は20年ぶりにその姿を現した。

兵士がイグニッションをまわすと難なくエンジンがかかり、戦車は牽引車を必要とすることなくその農家から20年ぶりに出て行ったのだ。

ヨーロッパの都市伝説を集めた本からの収集。出所はヴェルナー・K・タンチュ博士がハイデルベルグの教授の語りを元に1990年に採取したものらしい。
興味深いのは隠された戦車ということよりも米軍のシャーマン戦車であれば20年くらいほっておいても大丈夫だろうというところらしい。世界に誇る稼働率の高さを誇る戦車のシャーマン戦車らしい都市伝説である。

参考文献:白水社 ISBN4-560-04034-6 ヨーロッパの都市伝説「ジャンボジェットのネズミ」