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シカゴ

  シカゴへは5時半頃着いた。途中でマクタビッシュ家に電話を入れる。もう六時を過ぎていたから、これから家を探していては遅くなるので、今日はそのままホテルに行き、明日出直したらということになった。ジョン・F・ケネディ・エクスプレスウエイに入り、シカゴのダウンタウンの西側の出口を出て、ホリデーインに行った。一流ホテルは市街地の中心部のミシガン通り沿いにある。ここのホリデーインは少々不弁で環境が悪い。学生でお金がないし、見栄を張らなければ、車もあることだから不便はない。屋上が駐車場になっており、車を留めてフロントに行き、キーを貰って部屋に行ったら、どうも、様子がおかしい。ベッドはぐちゃぐちゃで、椅子やテーブルも乱雑に置かれている。トイレはタオル類が使いぱなしだから、掃除していない部屋のキーを渡してくれたとしか思えない。フロントへ戻って事情を話すと、手違いがあって申し訳ないと、別のキーを渡してくれる。ミシガン通りやステート通りのホテルとは違って、いたって庶民的で、何か落着くホテルだった。今ではホテル名が変わってクオリティ・インとなっている。

  次の日は日曜日だ。女性にははなはだ残念な巡り合わせである。シカゴにはニューヨークと同様、有名店がひしめいている。ミシガン通りにはティファニーの店もある。

  車を街の駐車場に停め、シカゴのメーンストリート、ミシガン通りを歩いた。右側にグラントパークが見える。広大な緑地地帯だ。先ず、公園の中の水族館に入った。チャオが水族館に興味があるだろうと思ったからだ。窓口に学割の表示がある。アメリカでは珍しい。私も歳をとっているが、学生には違いない。学生証を提示したら学割料金にしてくれた。なにせ、ミネソタ大学で女子学生からマサヒロは19才だと言われたのだから。水族館には殆ど行ったことがないので判断が難しいが、40年前としてはこの水族館の設備も立派だし、魚の種類も豊かであった。ミシガン湖に接して建っているので、海洋水族館とは違うが、あらゆる種類の魚がいる。チャオは水槽を覗く度に、驚嘆の声を上げる。特に、日本と違って、中西部では魚を食べないから、魚を見る機会がない。魚だけでなく、タコやイカやクラゲなどの、日本ではお馴染みのものも、生きて動けば、「ワー...!」とチャオは声を上げてしまう。鯵ほどのサイズで、全く透明で、骨と内臓だけが見える、まさに『スケルトン』とでもいうような魚が水槽のなかでゆっくり動いている。奇妙だが不思議な光景である。

   外に出て、ミシガン湖畔の岸壁に座って、シカゴの街を眺めた。この近くにはプラネタリュムと博物館がある。今日はマクタビッシュの家に行かなければならないから、いろいろな所に行っている時間がない。ミシガン通りに戻り、広い歩道を歩く。残念ながら、ティファニーの店は閉まっている。例え、開いていても見るだけだけのウインドー・ショッピングしか出来ないけれど。『ティファニーで朝食を』はトルーマン・カポーテの同名の小説を映画化したもので、オードリー・ヘップバーンが女主人公を演じる。ニューヨークにあるティファニーの店のウインドーを覗きながらサントイッチの朝食をとるという有名な場面がある。シカゴの店も洒落ていた。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探してのブログ手記です。