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アメリカの度量法

  ついでに、アメリカではヤード・ポンド方式が度量の基本である。温度についても華氏を基準にしている。体温計も華氏だから、風邪を引いて、摂氏で38度とか39度などと考えていると体温は100度以上もあってビックリ。メートル法に基準を変えようとする機運もあることはあるが、しかし、いまだに長さについては、インチ、フート、ヤード、マイル。重さについてはオンス、ポンド。温度については華氏にしがみついている。経済大国だから他の国がどうであれ我が路を行くである。

  ブルースによるとメートル法にすると感覚的にしっくりこないと言う。先ず温度。摂氏は水の氷点から沸点の間を100等分しているが、華氏では人の感覚を基準にしている。華氏の零度は人が寒いと感じる温度で、100度は暑いと感じる温度なのだという。インチもフートもヤードも人間の身体の一部を基準にしている。

  現在では世界中でメートル法が使われている。英語圏の国々でもメートル法が殆どで、アメリカとイギリスだけがヤード・ポンド法だ。日本でも『くじら』などの旧尺度法が戦後まで併用されていた。現在はお年寄りには不便だがメートル法1本になった。ただ、メートル法は人工的で屁理屈の理論から出来ている。まるでエスペラント語みたいに人工的だ。だから人間の自然な感覚を基準にしていない。だめな度量法なのだが、世界規模で統一された度量法となればメートル法しかない。

  72年の冬にニューヨークへ飛行機で行った時、途中、シカゴで停まったユナイテットの飛行機が地上サービスの遅れから、なかなか出発が出来ない。待機している間中、ドアが開いているから、風がひゅーひゅー吹き込んできて寒い。小柄なスチュワーディスが寒い寒いと震えている。「いま何度なの」と地上の係員に聞いている。「マイナス20度さ」答えが聞こえる。夕方の6時半頃だ。冬のシカゴは風が強くて有名なところだ。体感温度が風速1メートルで1度下がると言うから、ミシガン湖から吹き付ける風で更に寒くなる。外は真っ暗。機内には乗客もまばら。

「何処の出身なの」
彼女に聞いた。
「ジョージアよ」
ジョージアは南部の州だ。寒いのも理解できる。
「私はミネソタから来たのだけれど、今日のミネアポリスはマイナス30度だよ」
「もう、人間の住む所じゃないわね。白熊が丁度いいくらい。ああ、寒い、寒い」
彼女は寒そうに肩をすぼめた。

  夏の日が長いのと裏腹に、冬の一日は短い。冬の授業に、朝8時からというのがあったが、家を出るのは7時15分頃。外は真っ暗。明ける兆しもない。夜空に星が降るようにきらめき、月の光が足元を照らしてくれる。雪を踏みしめる音が、子供の頃、夜、銭湯からの帰りに靴の下で鳴っていたのと同じだ。零下20度くらいは温度が下がっていたと思う。シーンとしていれば、何か詩的に感じようが、サラリーマンは既に会社に行き着いたか、移動中ということで、もう人々は動き回っているのだ。夕方の4時には真っ暗になる。フィンランドでは昼の2時半頃には日が暮れるそうだ。フィンランドでは小学生に反射する布(反射布)の着用が義務づけられているのだが、そうでもしなければ、朝夕、暗い道を歩いていて交通事故に遭うことになる。反射布は3Mの発明品だが、このミネソタの冬の暗さのせいではないかと思ってしまう。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探して旅をするブログ手記です。