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ミネソタの冬

  ツインシティの秋のすがすがしさは格別である。この気分を日本で味わうには、秋の北海道に行かなければなるまい。緯度の高いところ、ドイツ、オーストリア、北欧などもそうだが、ミネソタでは9月の中旬に、朝の気温がぐっと下がり、そして昼間になると急に温度が上昇する。朝はきりっと気を引きしめて出かけ、そして、だんだんと気持ちが壮快になってくる。こんな経験は素晴らしい。

  ハローウィンを過ぎると秋も終り急速に冬が近づく。雪が降り初める頃と雪解けの春先には、降った雪が解けて、夜間は凍結するので道路が滑り易い。中古車を買って最初の冬に、電話帳で探した古タイヤ業者のところへ行った。中古車についてきたスパイクタイヤはリキャップ出来ないと下取りしてもらえず、別にリキャップされたスノウタイヤを買ってきた。スパイクタイヤが禁止されているから車の運転には気を遣う。

  春先に、車を運転しいて、コモ・アヴェニューの下り坂の交差点で信号待ちをしていた時、ふとミラーを覗いたら、後ろからカブトムシのフォルクス・ワーゲンがブレーキを掛けながら坂道をゆっくり『滑って』来るではないか。もう停まる、もう停まる、と思っている内に、コトンとぶつかる音がした。後ろの車から、黒人の丸々太ったおばさんが降りてきてしきりに謝る。バンパーを覗いてみたら、こちらの車は小さな引っ掻き傷がついているだけ。どうせおんぼろの中古車だ。さかんに謝るおばさんに、「大したことないし、心配しなくとも大丈夫だから」というと、このおばさん、ニコニコして、「サンキュウ、サンキュウ」を連発して車に戻っていった。

  根雪になってしまうと、雪は全く解けない。その上、風が強いから舞い上がって道路には雪が積もらない。ただし、気温はツインシティでも強烈に下がる。華氏で零下40度(摂氏で同じく零下40度くらい)までは私も経験済みだ。数年前ミネソタで、華氏でマイナス60度まで下がったと地元の新聞に報道された。北部地方ではウインドチル(体感温度)が華氏零下100度(摂氏で約-70度)などは珍しくない。零下30度の時など、ゴム製のオーバーシューズを履いて、玄関を飛び出して2〜3メートル進むと、靴が鉄板のようにかちかちになる。コチコチになって、とても歩きにくい。とにかく寒いのである。

  72年の札幌の冬季オリンピックはミネソタでテレビを見ることになった。画面のチラつく白黒テレビで観戦だ。ジャンプでの日本の活躍、特に、70メーター級の純ジャンプでの活躍と、フィギャースケートの話題をさらった笑顔が可愛らしいビールマン。アメリカではジャンプの放送が殆どない。活躍する選手がいないからだ。大回転などの競技が放映される。滑降などは千歳の恵庭岳が使われたのだが、ヨーロッパの女子選手が「雪に水分が多くてグリーシーで、滑りにくい」と歎いていたのが印象的だった。多分、冬季オリンピックの開催地としては最も温かい場所であろう。ミネソタにきてそう感じた。冬季オリンピックの開催地で真冬に昼間の気温がプラス2度とか4度にもなるなどということは考えられない。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探して旅をするブログ手記です。