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ミネソタの春と夏

  雪が消える4月から6月の上旬までが春である。短い春だから、5月頃になると一斉に花が咲き始める。ツインシティには公園や庭園が多い。コモ・パーク、レーク・ハリエットのローズ・ガーデン、ミネハハ・パークなど数え切れない。エロイーズ・バトラー・ワイルドフラワー・ガーデン・バード・サンクチュアリーという公園は広い敷地にさまざまな植物や花が植えられていて、リクリエーションの施設も完備している。さまざまな野鳥がやってくるし、訪れるだけでも楽しい。カーディナルは真紅の色をしたきれな鳥で、メージャー・リーグのカーディナルスのマスコットにもなっているが、実際に目にするとこんなに綺麗な鳥がいるのだろうかと驚いてしまう。鮮やかな青や緑の鳥たちもいて楽しい。また、木の実を入れた簡単な餌場を作っておくと、一般家庭の庭先にもこれらの鳥が姿を見せはじめる。

  夏は30度まで気温が上がることもあるが、普通は暑い日でも27度くらい。日本の夏とは比較にならないが、意外と湿度は高い。ミネソタは湖が多いせいではないかと思う。真夏でも突然大粒のひょうが降ってきて、車に穴があきそうになったり、折角実を付けているきゅうりやトマトの木を目茶目茶にしてしまう。一度、ノッコが夏期講座のクラスを終えてミネアポリス・キャンパスから帰ってくる時に、セントポール・キャンパスに来た途端、空が突然真っ暗になった。次に、大粒のひょうが降ってきて、車の屋根やボンネットを叩きつる。まるでドラム缶に閉じ込められたような激しい音がした。慌てて近くの大木の下に車ごと避難したが、全く視界がきかず、おさまるまでじっと待っているしか方法がなかった。一般に、北国の夏は心地よく、70年代の初め頃は赤ん坊がいる家庭でもない限り、家にもアパートにもクーラーは付取り付けられていないし、全く不要であった。

  しかし、恐ろしいいこともある。地震と台風がないのは素晴らしいのだが、トルネード(大竜巻)が襲ってくる。トルネードは遥か数千キロ南のメキシコ湾周辺の州だけのものかと思っていたら、中西部までやってくると聞いて驚いた。テラスに越して来た時に、アパートの入り口を入ったところに小さな地下室があ。小さな白いドアを明けてみると中はガランとしている。共同で使用する収納庫なのかと思った。夏のある日、突然、ボー・ボーと大きな低い霧笛のような音が町中に響きわたった。何ごとかと部屋を飛び出す。すると、近所の人達もドタドタと出て来た。
「何の音ですか」

「トルネードの警報だ。来なさい」
そう言うと、例の小さな地下の小部屋に入っていった。トルネードの避難所だたのだ。20分ほどしてラジオで安全を確認してから皆な出ていった。現在ではトルネードもある程度予測できるようになったが、当時は直前まで予測不可能だったらしい。この時はツインシティの南側の畑の中を走りぬけていった。農産物に多大な被害を及ぼしたらしい。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探してのブログ手記です。